96.小麦粉とは
バーナ領で小麦粉の大量生産が開始された。
同時にバーナ領内で小麦粉の販売も開始される。
販売される小麦粉には等級がつけられた。
5等級。全粒粉。一応庶民で普通に流通する小麦粉。値段は1kg大銅貨5枚
4等級。全粒粉脱却を頑張ったような小麦粉。値段は1kg中銀貨1枚
3等級。それなりに不純物も混じっているが一応小麦粉。値段は1kg大銀貨1枚
2等級。1等級には若干劣るが白い小麦粉。値段は1kg大銀貨5枚
1等級。真白な小麦粉。値段は1kg小金貨1枚
ぼったくり?知らないね。値段はなんとなく俺が決めた。あん?領民価格を教えろって?
なぜ、おまえらオーディエンスはいつもいきなり湧き出てくるんだ。
全てkg単価で5等級が300円、4等級400円、3等級500円、2等級1000円、1等級2000円だ。
どうだ、たかが小麦粉に2000円だぞ。素晴らしいだろう。
な、なんだ。はあ?5等級は大銅貨5枚は相場かって?、、、相場だな。
なんだよツンデレ乙って!
中世の技術力で考察したら不可能金額だと?そんな馬鹿な!
普及率の高そうな3等級が日本で言う2等級でしかもそこまでは値段を上げていない。
1等級ですら庶民が買おうとしたら買える額というのがまた。
よってツンデレ乙だと!
も、もう少し値上げしてみようかな。生暖かい目で見るんじゃねえ!
はあ、なんでお前らはロイをからかうんだ。またロイが不貞腐れたじゃねえか。
おっさんキターーーーーじゃねえ。
まあいい。とりあえず。オーディエンス諸君の中で文化レベルが低い所に飛ばされた奴に言っておく。
いわゆるナーロッパで特に中世レベルだった場合同情する。俺もせめて近世、近代であればとどれだけ思ったことか。
知っているやつが大半だと思うが、技術力や文化レベルが中世ヨーロッパレベルだった場合。日本の小麦粉が普通に手に入るなんて夢は見ない方がいい。
ただ、元日本人なら自作は出来る。小学校さえ出てれば前述の農耕器具は授業で習う。水車も同様。中身と原理さえ分かっていれば試行錯誤で辿りつける。日本人の中学卒業レベルの知識持ってれば十分内政チートは可能じゃねえかな。
小麦粉が粉ひきだけで出来ると勘違いしてると絶望する。基本脱穀、粉ひきだけで出来上がるのは全粒紛といわれるものだ。そこから職人が篩にかけて選別。また粉ひき。これを繰り返す。だから白いパンは物凄く高いんだ。
白い小麦粉を作る職人が専門にいて貴族が保護している。小麦粉専門で販売店が存在するのはそういった理由だ。
決して全粒粉がまずい訳じゃねえ。柔らかいパンだって焼ける。
ただなあ。全粒粉だと、クッキー作ってみたり天ぷら作ってみると味の違いがわかりやすいんじゃねえかな。
果物と水、時間をかければ酵母なんてすぐに出来た。全粒粉に混ぜてこねて二次発酵までさせればいけると思ったんだ。
うまいっちゃうまいんだが。違和感があったんだ。
俺の感じた違和感にロイが気付いた。小麦の違いなんて俺でさえ忘れていたのにな。ロイは俺の記憶から探し出しやがったんだ。白い小麦に美味くするために必要な副材料の存在。
そして絶望した。勘違いしないでほしい。気付いた当時の技術的には既に可能だったんだ。だが必要になるあまりにも莫大な労働力と金。
そしてパン焼き用かまど、オーブンの問題も在った。レンガを組んだオーブンは金持ちじゃないと作れない。白い小麦もオーブンもパンも貴族利権に絡んでいた。
燃料問題。森林が近い所ならさほど問題にはならないが薪代が意外に高いんだ。調理に使う薪。地域によっては暖を取るための薪も必要になる。そうなると貴族が薪代を調整し平民が困らないように流通の制限なり価格の補助をしたりしているわけだ。
レンガを組んでオーブンを作り上げる。作成費がかかりすぎる。なので王国ではオーブンを貴族が補助して作成し、使用料を取る。もしくはパン屋を補助、保護してオーブンを使い大量に作らせる。
そんなわけで貴族がガッチリ保護という名のもとに利権を獲得している。
正確には制限をかけたり補助を行ったり保護をしたりというのは間違った行為じゃない。そうしてコントロールしなければ計算出来ずに倒産、パンで暴利をむさぼる、そんな行為が当たり前だったんだ。だから貴族という特権階級が権力で無理やり抑えつけていた。それが当たり前だったんだ。
そしていつの間にかその制限により得られる利益。それが貴族の利権になり果てたのが正確な経緯だ。
ロイは当時ただの次男坊で権力に興味もなかった。簡単に旨いパンが食えれば権力なんて欲さずに冒険者にでもなって世界放浪の旅にでも出ていただろう。
なら開発してしまえば?そんなこと利権持ちの貴族が許すわけがない。下手に動けば叩き潰される。技術だけ取り上げられて食べられるのは一部だけ。もしかしたら次男の自分は一生気軽に食べられないままかもしれない。
それじゃあ旅に出れないじゃないか。気軽に他領を回れないじゃないか。回ったところでそんな世界楽しくない。
だからロイは権力を求めた。金を力を求めたんだ。本当にロイは運が良かった。近くに未開地なんて特殊な領地が在ったんだから。近くに未開地。開発の許される立場を得ることが簡単にできる地位。
それこそがロイにとっての本当のチートだったんだ。
影に隠れひたすら準備をする。一気に広めるために派閥を形成し技術を与える。
藁と土で練った土壁を利用した簡易かまどの普及。レンガの増産。水車技術と歯車機構による水力の応用と力の変換。効率の向上。
海水塩による岩塩への対抗策。米による麦への対抗策。開墾に次ぐ開墾。主食農産物の大量生産。畜産物の拡充。
一人では到底無理だっただろう。
バーナが行ってきた富国強兵策。領民一人一人が戦力となりえる集団。
派閥という巨大権力と仲間。
国王という大義名分。
全てが揃って圧倒的な力により現状を塗り替える。押しつぶす。内乱すら許さない。抵抗する気すら失わせる。その準備をずっと一人で扇動し導いてきた。
たかが俺が前世で食ったパンを王国内で気軽に食べる為だけに。国民が気軽に食べる為だけに。
俺が伝えたくだらない理想話。それを叶える為の行動こそが狂気なんじゃねえかな。
皆が腹いっぱいにうまいもんが食えりゃあ存外幸せだろう?隣にいるヤツが泣いたり悲しんだりしている顔見るより笑っている方が良いだろう?
ロイはそれはそうかと日本人の感情を理解してくれた。そういう世界にしようぜと動く決意をしてくれた。
日本人だった俺のエゴを押し付けちまった気がする。俺もロイの一部だってのになあ。
今までそれで良しとしてきた世界を駆逐する。
その結果が狂気だろう?鬼畜、気狂い、残虐領主。そう評価されなければならない。進められない計画だったんだ。常識を駆逐する。貴族の特権。評判。全てを活用して計画を進める。
俺も王宮で振舞われる飯に期待していただけにロイには悪いことをしたと思っている。王宮の飯が原因って、どんだけロイは覚悟したんだろうな。王宮に王国に喧嘩を売る。
気が狂ってるとしか思えないだろう?
おっさんやり過ぎ。こじつけはそれっぽいけど多分オーディエンスにはバレたぞ。
すまんな。おっさんがオーディエンスをどれだけ扇動できるか試したんだ。
そもそも俺イコールおっさんだぜ?性格わかるだろうに。
たまにはオーディエンスからかってみるかって話になったんだ。
おおっと。暴力反対!
ん、話は全部嘘だったのかって、中世レベルなら普通にパンは食えるんだなって?
食えるよ。全粒粉が主流だけど。金貨払えば白いパンだって普通に作れるんじゃね?
真実をある程度混ぜなきゃお前ら引っかからないじゃん。
どこまでが本当でどこからが嘘だって?あれ、オーディエンス諸君はヒントだけであとは自分の世界で試すんじゃなかったのかい?
そもそも俺の、俺達の生き方はな。
面白い人生を歩む。面白可笑しく自分勝手に我がままに好き勝手に生きてやる。
それが俺達の俺の生き様って宣言してきただろう。俺はおっさん。おっさんは俺。
第二の人生という幸運に気付いた俺じゃねえか。
他人の事なんか知ったものか。自分が望んだ世界に作り替えてやる。
この世界を俺達流に遊んで暮らしてやるんだよ!
話のきりが良い気がしたのでここで終わっても良いかと思いました。
終わりませんが。
ギャグ話を作りたい。もっとふざけたい。
つまらない物語もどきや説明じみたこじつけ話で逃げています。
そのうち修正しようとは思います。




