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95.麦戦争

面倒くさい。本当に面倒くさい。


国王め。なんて面倒くさい事をしてくれたんだよ。


ああ、引き続きロイ様だ。


紙幣経済、為替操作。あの仕組みと絡繰を理解した国王の派閥後押し。派閥の準備完了したって事だろう。道理でプスプス仲間じゃなくてピューピュー仲間が先だった訳だ。


面白くない。







そもそもさ。そんな急いでやることじゃないやん。

確かに国が税法変えてくる以上こっちも課税の仕組み変更は優先対策事項だけどさ。



しっかし、どこからバレたんだ。麦の事すっぱり忘れてたなんて。


そういや税率の話が。いや。そもそも金で献金になった時点で。それを言うなら塩の時点か。実は麦が莫大に余って面倒だから売ってた。なんて言ったら領民怒るかな?


メグたん、この子メッチャ感よくないか?じゃなきゃ夜中に海に行きたいで俺についてくるか?おっさんが考えたあのセリフで喜ぶか?小麦の話を振るタイミングを狙ってただけだろうけど。


もしかしてバレてたんかな?紙幣経済取り入れる目的の一つが麦も普通に普及させる段取りだったの忘れてたってこと。


そもそも俺はバーナから王国全土の麦を一変してやるなんて言った記憶ないんだが。技術は見せてきたから何かするのは気付いていたがそれを忘れてないかって確認か?


それとも言ったっけ?俺洩らしてた?忘れてたこと責められてる?


もしかしたらヴィル達が俺が麦を忘れてないか牽制してきてるんじゃ。あいつら麦育ちだからな。俺もだけど。



そう考えるとヴィル達と結託、タイミング説が濃厚になってくるな。







国王達が王国法改定に乗り出しているらしい。貴族法にも手を出していると。


岩塩を駆逐とか歌いながら。海水塩でボロ儲けしたわな。んでもってウチの経済状況。王国貨幣の備蓄量。


そういや以前に国王が戦争するなら早めに教えてとか。すぐ引退してこっちに逃げてくるとか言ってたな。貴族法まで手を出すなんて王宮内の貴族に喧嘩売ってるじゃん。


、、、やべえじゃん。マジ戦争間近じゃん。いつの間にか経済戦争仕掛けてた?

ん?というか国王こっち側でしょ?王子達もいつの間にかこっち側。え?どこに戦争仕掛けてんのうち?

国っちゃあ国だけど。王族と険悪ちゃうし。


政治屋が王宮牛耳っていて地方の力がだいぶ落ちていたという俺の指摘?んな事言ったっけ?

バーナ開発に集中しすぎてというよりプスプスで計画を忘れてたんだろうって。で?


領地持ち貴族が次々と派閥傘下に入ってきている。王の後ろ盾という大義名分がそれを加速させた。


法位貴族の政治屋と麦利権にしがみついてた貴族が過激派閥にビビってる状況。


おっさん。俺記憶無いんだけど。

代わりに記憶しといてやってるから感謝しろじゃねえよ!


なんでヤバそうな状況なってんの、もう革命寸前。って国王からしてこっち陣営じゃん。これ何ていうん?体制改革。へえ。政変っていうんだ。







、、、俺政治家じゃねえからほっといて良いよね。


政治家でないってのは違うと思うがロイに関係あったら言ってるって?そういうのは派閥連中がやってるから気にすんなと?


どうせバーナじゃ王宮に人送れんだろうって。家族いないボッチ貴族って露骨に言いなや!

こっちが気にしていることを。


それより麦問題どうすんだって?



麦なあ。現状の体制。派閥状況。器具の開発状況。普及率。

もうイケるっちゃあいけるけど。コレやったらトドメにならない?


なるよなあ。王宮内大混乱やろうね。地方の生産力。地力の増強。関税。納税方法の変更。地方軍の増強と国軍の減少。難しすぎてアホ消えるで?


王宮務めとは本来そういうもの。だから頭の良い本物の貴族だけが残ると。おっさん、俺達の派閥はどうなるかな?


準備体制は問題ないけど。今回のコレたぶん爆発的に広がるよ?粉の等級分け。関税。そんなんでいけるかな?


王宮は王族が抑えると。派閥が王宮内の掃除に加担すると。


はあ、そこまで話進んでんだあ。やるのかあ。俺の決断待ちだったんだ。内乱お断りなんだけど。







小麦粉。


真っ白い小麦粉。この国の主流は全粒粉だったんだ。真っ白い小麦粉で焼いたパンを食べるのが高位貴族のステータス。白い小麦粉までの製粉は簡単なもんじゃない。想像以上に大変な作業だったんだ。


そうだった、過去形なんだ。

ロイがおっさん待望の米を食べるためにおっさん知識から開発した。千歯扱き、唐箕とうみ籾篩もみふるい、淘りゆすりいた、木摺りきずりうす。構造はどれも簡単だ。


木を加工し組み合わせ、彫るだけ編むだけでだいたい作れたのだ。

そして水車。水力から動力を得るという方法。トルクチェンジ。歯車機構。


それら全てを組み合わせおっさんは待望の米を手に入れた。が、精米出来るということは麦の精製も可能という事。さらに篩が有るということは限界まで選別可能。不純物を取り除き真っ白な小麦粉を簡単に作れるということだ。


水力と人力の併用。バーナに米の精米用水車が大量に有る。労働力も沢山いる。大量に真っ白な小麦粉を量産出来る。


ただしコレをやると派閥内でも大量生産が可能だから追従した派閥も量産する。当然白い小麦粉が一斉に広まる。王宮の麦やパン利権関係にしがみついていた領地持ち貴族や法衣貴族とも本格的な戦争になるだろう。


だが俺たちの相手になるだろうか。バーナの麦は献金用に大半を換金してきたが生産力は現在王国一と聞いている。そこに派閥の生産力も上乗せされる。


さらにこっちは麦本体じゃない。製粉という付加価値をつけた白い小麦粉なのだ。付加価値の値段なんか作り手の自由自在。関税かけて高級化して良いし。


現状の原料生産力加工力から考えれば王国内の派閥外が産出する全粒粉など相手になるだろうか。


だから国王は税金を基本税と収益の2割に変えた。麦の収穫高程度の金額じゃこれから当てに出来ないと考えたのだろう。貨幣と紙幣の為替操作。対外貨の備蓄。色々やったけど。完全に王宮内勢力じゃ後ろ盾の派閥に勝てないことを早々に理解したわけだ。


国王がうちの技術の確認した後に速攻引退をほのめかした訳だ。王宮が荒れて戦争が起こる前に逃げ出そうとでも思ったのだろうか。



派閥の連中もヴィル達も新型製粉機の試作品の確認は終わっている。部品の輸出も終わり転用の準備期間の計算も終えていたのだろう。


フェイが報告の最中にぼそりとバーナの食糧生産量で王国全体の半分近くを賄える位あるのではないかと言っていた。


コメとパンの主食産業。塩の生産量。ダンジョン。牧畜。そして加工速度。技術力の差と普及率。追従する派閥の生産量と技術普及率。



経済戦争準備完了。いつ仕掛けますか?







仕掛けますかじゃねえ!


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