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92.行商人ヤク

まいど!って誰やねん!


いえ、しがない行商人です。名をヤクって言います。

気軽にヤクさんでええですよ。


名前覚えても意味ないだろうって。そんな殺生な。

確かに合ってますが。







バーナ領の領民行商人。それがワイの立場や。店舗持たずでイマイチぱっとしない職業?合ってるで。その認識で間違いない。

一応こんなんでもな。領内に個人宅持っとるんやで!領民証明書持っとるやで!借金返済済みや!


そのへんの行商人に聞いてみ!流浪人。家持たず。それが当たり前なんや!


え?バーナではどうなんだって?







それはともかく。今回は大仕事なんや。サバート様よりの密命。教会、冒険者ギルド、商業ギルドが協力して密命に挑むんや!


「ヤクさん。どうするよ。俺達に何が出来るよ。」


あかん!メッチャカッコイイ!流石ロイ様!慈悲深い!こんなとてつもない気狂いとしか思えない作戦の裏にこんな真意が有るなんて。


ああん?疑うわけ無いやろ!ロイ様は結果を常にもたらしてくれている。

例え。ロイ様の目論見がはずれようと。それはワイらがミスっただけなんや。


「だめだ。ヤクさんトリップしてる。」


「聞いとるわいボケ!ガタガタぬかさんとワイらはワイらに出来ることをやるんや!メインは大手に任せる。ワイらはもぐるで。」



ワイがこうして意見聞かれる理由?それなりに領民行商人の歴が長いからでっせ。


「もぐるですか?」


「せや。徒党を組んで他国に乗り込むで。乗り込み次第数人でバラける。そっからはいつも通り普通に領民のお土産の買付や。その間にちょろっと話聞いたり話したりは誰でもする事やろ?」


せやなあ。連れてくるわけにはいかん。ならどうするか。噂は事実としてバラ撒く。クソマズイ粥食わせて縋り付いてくる連中狙う。


うまいもんがもらえんなら付いてこない連中なぞ信じれるかい。試練を超えた先に慈悲はあるんや!


誰でも彼でも救ってもらえるなんてこの世に有るわけがない。試練を乗り越えこの地に辿り着く。それが大事なんや。


折角大手さんが表立って動いてくれるんや。ワイらは信徒として裏にまわり。弱者救済の手掛かりなるんや。あくまでも手掛かりやで?ワイらが手をだしたら試練が試練で無くなる。


おそらくしばらく帰って来れん。マズイ飯の毎日や。一番の貧乏クジかもしれん。


「大恩あるロイ様の真意を理解し、いっちゃんキッツイ仕事を成し遂げる、、、それがワイらなりの恩返しちゃうんか!大恩だけを受け続け。ぬるま湯浸って良い気になってたらあかん!ロイ様が望まれた!これは我等への恩返しのチャンスを与えてくださったんや!」



商業ギルドに上がる歓声。気持ちえええ。


「流石ヤクさん。君の土産話にはいつも領民皆が楽しみにしている。」


肩を叩かれ振り向くとサバート様。ニコニコしている。







えっと。商隊リーダーですか。他国までの先導で良いと。へえ。え?支度金。支度金?土産話にですか?200万円?商隊員1人辺り土産話に100万円。


領民行商人希望者200人、、、

ワイの演説に感動したと。はい。


あれ?あれ~?達成報酬ってなんですか?

土産話持ち帰るだけですよね?1000万とか金額おかしいような。商隊員は500万。

ただの土産話ですよ?なんちゅう金額を。


他国の情報には価値がある。どんな動きをしているか。どんな生活をしているか。気になるじゃないかと。


そりゃあ。この領じゃ他領の田舎の話で喜んで聞いてくれるし、くだらない土産でも喜んで買ってくれますからね。


派閥の情報だと政治観点やら戦争関連ばかりでつまらないと。庶民の生活話が聞きたいと。ロイ様が仰っていた、、、と。



はあああああああああ!?



ちょいとお待ち下さい。サバート様!

ロイ様が仰られたのですね?


あかん。これはあかん。絶対奥深くまで突っ込まな。それこそ隣国の隣国超える位じゃないと。全財産換金して隠し持って行った方が良いか?


もしかしたら直接お会いできるかもしれない。それこそお話できるかもしれない好機や!



リーダーは早急に報告するべきだから奥地はこっちに任せろ?はあ?ふざけたこと言ってんじゃねえぞ!



いきなりの商隊崩壊の危機?知るかボケ!







はあ、、、遠いなあ。隣国の隣国。故郷バーナへの帰り道。本当にいっちゃん遠くまで来てもうた。


ああ。なんか知らんが大儲けしてもうたし。バーナで売ってるティーシャツとズボン。


大量生産品だから買い叩かれてもさほど痛手はないやろうし、報奨金貰えるだろうしと有り金突っ込んだだけなんだが。


派閥内ルートと呼ばれる道を通ったせいか領民カード見せたら関税ゼロ。国境の辺境伯の領地抜ける時には何故かがんばれよと。


辿り着いた地では衣服類を通常相場の値段。バーナで買えばボッタクリ価格間違いなしの値段で売ったんだが。


普通に売れてもうた。今後の旅のためにと少しずつ売ったのが良かったのかもしれんなあ。







しっかし。どこもかしこもヒドイもんやなあ。腹一杯食うことってそんなに難しい事なんやろか。平民は腹一杯食うことが許されないのやろうか。


領民プレートを見つめる。ワイらはやっぱりバーナに慣れすぎたんやろうか。一歩出てみりゃ地獄やないか。


一方的に貴族が国が悪いなんて思わん。貴族だって国に反抗して領民守ろうと頑張っている方はおった。


国の一番偉い人自身がなんとかしようと喘いどる場合もあった。


でもどうにもならん。仕組み、習慣、しきたりが邪魔してどうにもならなくなっている。

しわ寄せは民に来ると。



もうあかんやん。そりゃロイ様が気にするわけや。なんで家畜の餌で涙流すねん。あんなクソマズイもんで涙流してんねん!


ワイだって我慢して食ってるんやで。たかがクソマズイ粥やぞ!




ちらりと荷馬車の方を見る。座り込んだ欠損者4人。業者席の隣に座って眠りコケている片腕の少女。


やったらアカンことは理解しとった。でも切り捨てられなかった。彼らは片腕が無くても片足が無くても懸命に自分を手伝おうとしてくれる。クソマズイ粥を一緒に嬉しそうに食べている。


自分の事を助けてくれた恩人だとでも思っているようだ。



建前は使用人。商人見習いの丁稚。行き場を失った者達。試練に挑むことすら許されない者達。


自分は切り捨てなければならなかった。仲間に試練に挑んで突破した者だけを救う。そう宣言した。偉そうに言ったのに。


この者達は試練に辿り着くこと無く消えていく者達と分かっていた。なのに。


「今日はこのへんで野営や。」


雇った者達が荷台から降りて準備を始める。少女も降りて準備を手伝う。自分は荷馬車を野営地の横に止めて馬車の様子の確認をしながら横目で彼らを観察する。



たどたどしい動き。ちょっとした事で手間取る苦労。


手伝いたい。代わりにやってやりたい。自分ならすぐ終わる事も時間がかかる。

でも手を出したらあかん。これは彼らの仕事なんや。ロイ様は関係ない働かせろと言うとった。やれる事をやれ。やらせろと。


これが彼らの試練なんや。雇って連れてくることしか出来なかった自分に腹が立つ。




司祭様がロイ様の説法を説いていた時を思い出す。欠損者に関する一節。


彼らは不幸になったのではない。周りが不幸にしているのだ。働き口を作らず与えず。哀れだと蔑み自分の環境に満足する。自分にはまだ下がいると。


ロイ様は仰られた。ならば理由を無くせ。働き口を与えよ。人間だという誇りを取り戻させよ。


人は自分が人間だという誇りを誰しもが持つもの。その誇りを尊厳を傷つけられし者達に再び誇りを。


我等バーナの民は全てが仲間。どんな者でも仲間であり。共に支え合うのだ。


欠損如きが何するものぞ。人は腕一本、足一本。いや命さえあれば働ける。誰かの役に立つ。仕事が出来るのだ。




説法。ロイ様の行動の真意を翻訳した経典。これ程身近に感じる事になるとは。

だが。まだ彼らはバーナに着いていない。まだ試練の途中だ。


ロイ様はいつもこんな気持でおられたんやろうか。救いたい民がいっぱいいる。手を出せない歯がゆさ。守る、育てる、いや取り戻させるべき彼らの誇り。


バーナにはトレントの義手義足技術がある。欠損者が普通に健常者と何の遜色なく自分の仕事に誇りをもって普通に生活してる。


飯だって美味いんや。皆でたらふく食って飲んで騒いどる。彼らにだってそうなる権利があるんや!



クソ!さっさと辺境伯様の領まで行って白米わけてもらうんやと思っていたのに。これじゃあバーナまで試練に付き合うしかないじゃないか。


そういや土産話で一攫千金。領主様との謁見とか浮かれとったが。


従業員雇ったからには給金払わな。えっと今日まで稼いだ額。報酬。足りるやろうか。せや。義手義足製作も依頼せにゃ。


ワイ一介の行商人やで?丁稚5人とかありえんわ。どないしょ。







ああ。本当に遠いなあ。

こんなつもりは無かったんです。

なんかおかしな方へ。

終始ギャグにいこうとしたんですが。

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