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84.派閥とは

ああ、いきなりですまない。


ランナートだ。


え?久しぶりだと。もう出ないのかと思った?


ああ、そのつもりだったのだが。


特段話す内容も無いと思っていたのだが現状でも報告しようかとね。







私達の所属する派閥は過激派と言われる。国王派の一派でね。

王族派とはまた別なのだ。王族派は国王含めた王族全ての意向を重視し、国王派は正統に国王になった者のみを支持する。


のちの国王の可能性が捨てきれない第三王子だろうが叩き潰すわって態度が我等の派閥の態度。第三王子がね実際派閥に押し入ってきたんだ。だから叩き出したわけ。どうも親の実家絡みだったようだ。

王子を唆した側妃の実家?ああ、ちょっとした手違いでね。血祭りにあげちゃったんだ。ウチの派閥が。


当然やり過ぎたかもと側妃殿に皆で謝りに行ったのだが。相当ストレスがあったらしく良くやった。自分で何も出来なくて諦めかけていたと。

そもそも親が私に毒殺させようとしたり暗殺者の手引しろとか。王妃健在、第一第二王子共に健在なのに何故そんな事言い出すのかと、子である私を利用しようとしたり。孫をその気にさせようとしたり。うるさいったらありゃしない。私の平穏を潰そうとするお前を毒殺してやろうかと思っていたらしい。


ロイと後日話したら。笑い転げてそりゃそうだと。自分達を駒としか見ていないってなったら親だろうが縁切れるわ。だそうだ。







さてイバーナの状況を話そうか。イバーナは現在貿易都市というか中継で儲けている。

具体的には街道を整備し、倉庫、宿泊施設の建設。そして検問だ。


例のロイの牧場に縄を張り木の板を重ねてぶら下げた物があったんだ。聞いたら何かがぶつかると鳴るという。試しに揺らしてみればなんとなく音が聞こえる。そして笛を持った住人、子供達。時折走り去る馬に乗った警備兵。


ちょうど良かったんだ。公共事業で施設建設や街道整備に人が取られる。領への出入り密入領対策。早速取り入れたよ。バーナのおかげで関税が好調な収入となっているイバーナには無視できない問題だからね。

杭、縄、木の重ね板、笛、馬による定時巡回。これにより完全とはいかないが、かなり領内への無断侵入を阻止できたはず。


そういえばバーナへの街道が遅々として進まない。と父が私に苦言を言ってきてたな。なんせそのルートの工事責任者は私だからな。






はっはっは。ようやくロイのところの家臣筆頭がしびれを切らしてやってきたな。

おお、人員が足りないならこちらで格安で承ると。

ありがたい。お願いする。


なんの疑いもなく帰っていった。そして当然圧倒的物量であっという間に工事を終わらせた。家臣筆頭が書類をもってきて私は完了のサインをした。彼が得意げな表情をしていたが。大丈夫だろうか。


「ロイ悪いんだけどさ~。色々公共事業に投資しまくったら。金たんなくなっちゃってさ~。申し訳ないけど。投資の回収名目でこの工事の費用ロイが負担してくれないかな。」

「良いですよ。」

じつにアッサリとした会話だった。


そして苦虫を噛み潰したような表情の家臣筆頭殿。君達の親が君達を支援する為に用意した金に対して。私は私個人が弟の為に出資した。本物の出資者なのを忘れていたようだね。


ついでにロイからすればイバーナ領都までの街道整備費用なぞ爪の先も痛くない費用だろう。

護衛の者が当然みたいな顔をしているのが気になるが。ああ、彼は常にロイの側にいるのだものな。なんとなく分かるのだろう。


「ヴィル。兄上が投資者というのもあるんだけど。領の玄関、門番をやってくれているのだぞ?そこは無料でとか。もっと率先して、やらせていただけますかとか。こんなのは自分が握りつぶしますからご心配なくとか言えるようにならなきゃ。家臣筆頭なんだから。」

だよな。そうなるよな。家臣筆頭殿もしまったって顔に出さない。

まったく心配になるよ。


そうだよなあ。そういう事を当たり前に理解しているから。あんなにアッサリ答えが返ってくるんだ。もうちょっと。こう交渉してみたりとか、会話を楽しみたかったんだが、瞬時に理解した弟は流石だ。そして大量輸出を通したイバーナへの牽制。

我が領はこれだけの生産力を持っている。それだけじゃない。関税を最初の中継地である我等任せ。うちよりおいしく稼がせてくれるとこあんの?

そんな領や貴族家など他にはいない。派閥連中でさえロイに頭が上がらないのだ。


なら私は何をしようか。弟の為に派閥の構成員らしく働くとするか。







王都までの街道が酷い。ロイがポソっと言った言葉だ。街道整備は金がかかる。そして整備をするのに金もかかる技術もいる。そしてその領の領主の許可がいる。ならどうするか。


答え。


「やあ、男爵殿。答えを決めてくれたかな。宣言通り一日待ったよ。」

相手は頭を地につけたまま顔をあげない。せっかく笑顔で聞いてあげたのに。


「当家は財上厳しく!」

「そんな事は聞いてないなあ。バーナの領主がこの道が悪くて腰を痛めたと言っていたんだ。良いの?うちに発注しなくて。」

「いえ、そのような事は決して。バーナの領主様にも心よりお詫びを!」

「だからんな事聞いてねえって言ってんだろ?耳ついてんのか?君が生き残る道は唯一つ。派閥への忠誠。街道整備をうちへ発注。それしか無いの。」


これだから愚鈍は嫌だ。派閥傘下の下部組織に入ると言えば街道整備費用を割引してやるって言ってるのに。それに当家が派遣するのは技術者で人足はこの地で雇うって言ってるのに。何故その意味を理解しない。はあ。


「そうかあ。そんなに嫌なら別に良いよ。そのままバーナの領主に伝えるから。もしかしたら許してくれるかもね。ああ、でも派閥の連中ちょっとやんちゃだからなあ。ロイが許しても。」

「お、お言葉の通りに!」



笑顔で彼を立ち上がらせ書類を作成する。いつもの血判だ。まったく領地持ちの貴族は保身が強くていかん。結局2日掛かってしまったではないか。

次にロイが王都へ行くまでに王都への街道を通る道全ての領地持ち貴族を派閥傘下におさめなければならんというのに。







最近私が派閥の交渉窓口らしい。何故かお金あげるから交渉してくれと派閥に頼まれる。基本標的は派閥周辺の領地持ち貴族。別に金なぞいらんのだが。

父が爵位があがって伯爵になったせいかイバーナで領地運営を張り切っている以上。暇なのだ。統治に口出しして水を差すのも悪いしな。


それにしても意志が弱い。地力が無い。力の無い領地持ち貴族が多すぎる。これはロイの危惧した通りだ。中央集権。一箇所に力を集中して国を保つ。それが島国など外敵が少ない国であればそれも良いだろう。しかし普通に外敵が周辺に存在する国が。中央集権。呆れてものも言えん。


いくら人間同士の戦争がここ最近無くまた魔獣魔物が脅威として存在しているから協力しあおうなんて言ってたとして。いつ手のひらをひっくり返すのかわからないのが人間だと言うのに。



面白い。じつに人の心は不思議だ。何処から出てくるのかわからない常識。信頼、安心、怯え。ちょっと武力を見せただけで折れる心。勧誘に誘われる心。


そういえば交渉する時。怒った態度を示す時。私は常に笑うように心がけている。何故なら。ロイが幼い時に私に言ったのだ。


怒っている表情で怒る人と笑った表情で怒る人ってどちらが怖いと思います?

答えは笑っている人。怒っている顔なら直情的でわかりやすいので対処しやすいのですが。

兄上の様に笑われるとこれからされるのか、後なのか、それとも怒っていないのか、からかっているのか。もう疑心暗鬼、恐怖ですよ!


そんなものかと思ったのだが。存外色々なところで使えるな。






次期様、本当にヤクザみたいですってどういう意味だ?

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