82.公爵として
私は。その公爵だ。ああ。
娘を婚約者にと。
ええ。今、派閥当主の集団によくぞそこまでとか。
流石公爵!先見の明があるとか!
うん。ヤクザの集団に取り囲まれて褒められてる。そんな気持ち。
私の護衛?うちの派閥より安心な護衛いますかいのう?って叩き出された。
息子!息子を連れてこればよかった!
ええっと。ココが。例の鬼畜領主様の領地。
明日面会と。派閥の一員になる儀式があると。
無心。無心。無心。無心。無心。無人。無心。無心。無心。無心。無人。無心。平常心。平常心。平常心。平常運転問題なし。平常心。平常心。平常心。平常心。平常心。私は公爵。相手は格下。ただし相手はヤクザの若頭。私は公爵。相手は格下。ただし相手はヤクザの若頭。私は公爵。相手は格上。ただし相手はヤクザの若頭。私は公爵。相手は格下。ただし相手はヤクザの若頭。私は公爵。相手は格下。ただし相手はヤクザの起爆剤。
大丈夫!バカ娘の躾の為!たぶん気が合う。問題ない!私は娘の為に。
普通の貴族じゃないか。血と名前を使った儀式がなんかヤクザっぽかったが。
都市機構、、、法整備、、、全てにおいてなんか国より格上っぽい。
あとは娘を取っ捕まえて。
ほうほうほう!ほっほ~!僥倖!僥倖じゃないか!既に愛人!勝った!完璧だ!負ける道筋など既に存在せん!それで娘はダンジョン町と。ふむ迎えに行く。
いつ出てくるかわからない?
待つ!領主殿には娘と話をし次第見合いをさせていただくと。
ああ、当主命令で、うむ!任せ給え!
馬車と牛車。値段と時間。はあ。領内定期便。牛車便すごい安い。経路途中に休憩所と宿泊施設と。野営用の広場まであるんだな。案内図詳しいわ。
新型馬車だそうだ。家臣の人達の手配が既にされていた。付いてくると。なんか異様に圧が凄いな。両脇の席を派閥の当主。前面に家臣の人達。囲まれてる。逃さない感が凄い。
宿泊所、休憩所。警護と称した監視体制。そこまでしなくても逃げないんだけど。なんせ決まりきった婚約話を娘にしに行くだけだし。
驚いた。娘に与えられた屋敷。普通に貴族並みの規模。施設。使用人。何この最新のトイレって。王城で最近見られるようになったやつだよね。
風呂。言葉が出ない。なんなの?どんだけ貢がせてんだよ!
これ余裕でしかないじゃん。負け要素が本当に無いわ。
そうだった。こういう子だった。
「やだ。」
一言で切り捨てられた。お前貴族だろう!令嬢だぞ!私父親!当主!言うこと聞け!
「やだ。」
おかしいだろう!既にそういう関係なんだろう?なんで愛人が良くて婚約が嫌なんだよ!正妻だぞ!ここの実質2番目の権力もてるんだぞ!
「貴族しきたり面倒。遠回しな会話面倒。貴族慣習知らん。礼儀作法クソ。」
どうしてこうなった。そりゃあ可愛かったから甘やかしたかもしれん。だが貴族家に生まれたからには従ってもらわねばならん。
背筋に感じる私への圧力。
このどうしてくれようって圧力がひしひしと高まる感覚。ヤバイヤバイヤバイ。
「貴族なら拳で語れ。」
逆!言葉で語るのが貴族なの!何なのこの子。しかも家臣や派閥の人の圧力もどこ吹く風って感じだし。
5日間ずっと付け回し。説得を試みるが駄目だった。ダンジョンに逃げそうなのを阻止し続け。ひたすら追いかけ回す。家臣の人達も彼女の冒険者仲間という者達も協力してくれた。
何故だ!なぜ駄目なんだ!理解不能。領主殿が到着するのは今日だ。もう後がない。どうすれば良い!
領主到着の知らせ。
ああ、私終わった。凄まじく重くなった空気の中。領主登場。うん。これ指詰めで済むかなあ。
「ねえロイ様。正妻嫌なんだけど。私自由な愛人のままが良い。」
空気が固まるってこういう事なんだろうな。
「婚約者にされたら私嫌いになっちゃうかも。」
オワター。ワタシココデケサレル。
崩れ落ちる領主。膝を付き。しばし沈黙。そして立ち上がる。私を物凄い笑顔で見てくる。うん。これ。やられる。
「わかった。ミーがそう言うんなら仕方ないな。諦めるよ。」
はああああああああ?
え?これ。私だけやられるって事。
「公爵殿。わざわざ出向いてもらって申し訳ない。そういう事で。いえ別に責めたりしませんって。だから詰めたりしませんって。彼女がそう言うんですから。恋人のお願いは聞いてあげないと。」
大丈夫らしい。部下の人や派閥の人達が苦虫を噛み潰した様な表情しているがそれで良いと領主が言っている。大丈夫なはず!本当に大丈夫ですよね?
良かった。首の皮一枚繋がった。そうだよな。一応娘だし。その親だし。
襲って来ないよね?
親の前で娘が領主にベッタリし始めた。ご機嫌取りか?領主も喜んでいるみたいだし。
うちの娘妻に似て顔も良いしスタイルも良い方だがこんな脳筋ゴリラ娘の何処が良いのかわからん。
この娘大概難しい話になるとわからん。理解りやすく拳で語ろうと相手に殴りかかる生物なんだが。
やってくれたわ。うちのポンコツ当主。ほら父上や派閥の人達がやっちまったなあって表情してるし。
本当にどうするんだコレ。せっかく公爵追い詰めて婚約者獲得寸前まで持っていったのに。
僕の努力はいったい。
などとヴィル殿は考えているのでござろうなあ。うむ、皆その様な雰囲気でござるな。良かったではないか。あのじゃじゃ馬。身分問わずに気に入らなければ喧嘩ふっかけて拳で語ろうとする脳筋でござる。
公爵もずっと尻拭いばかりでござった。そのケツ持ちを我等がするなどお断りでござる。
ロイ様が公爵様を歓待し始めた。戸惑っているご様子ですなあ。派閥の人や他の部下達も困惑気味だ。ロイ様が御機嫌なのだ。婚約者を得られなかったというのに。
公爵は最初は戸惑っていた様子だが、次第に派閥の動向。これからの展望を聞いて感心している。うむ、派閥に入ったからには早急で対応を始めると。
「ところで公爵殿。ミネーヴァは貴方の娘で間違いないのですよね?」
ロイ様のあの様子。何か仕掛ける気でござるな。公爵は何を感じ取ったのかビビって頷いているだけでござるな。
「当然彼女の籍は貴方の娘のまま、という事でよろしいですよね?この領では彼女は冒険者として偽名で登録していると。」
「ああ、ミネーヴァは間違いなく私の娘、、、です。」
威圧負けしたでござる!ロイ様に公爵様が威圧負け。面白い展開になろそうでござる。
「それはよろしかった。ええ、本当に。」
満足気に頷いて他の話題に移ってしまわれた。およ?何もせずに終わりで。
「ロイ様。何をお考えでござる?」
解散後。ロイ様に付き従いながら尋ねてみる。
「え?後継者問題はこれでいずれ解決するだろう?それに彼女が他領で揉め事起こしても対処するのは公爵が約束してくれたも同然じゃん。」
確かに彼女が起こしそうな余計な仕事は受けるものではない。
ただ、後継者問題解決?
彼女の立ち位置。領内ではロイ様の愛人で冒険者。偽名登録。公爵の娘。
ああ、なるほど。偽名とも本名ともどちらとも解釈して良い領民プレート。貴族紋が無いだけ。そして彼女が国に登録されている籍。
「彼女が子を産めばそうなりますな。」
いつの間にか結婚しておりその子供はれっきとした跡取りと。素知らぬ顔で提出すれば終わりでござる。
「彼女怒りませんかな?」
「結婚して離婚すれば終わりだろう?そんな事で彼女怒るかな?怒る?マズイかな?」
そこまでは考えていなかったんでござるな。奥の手が出来ただけ良かったのでは?
ただ、婚活続行でござるな。




