57.お料理教室
領内にいくつかある食堂。
その内の一つが私の勤め先だ。
ふっふっふ、聞いて驚け!今の私を見よ!
はい、ドーン!
メグミ・ヒイラギ
HP364/400 職業:料理人 階級:料理長
状態:(ちょっとおつかれ)
力:良いよ!がんばってるよ!
体力:う~ん、もう少しがんばろう
魔力:47
精神:高揚
スキル:鑑定Lv:3.1
ユニークスキル:言語理解
:言語翻訳
ドヤあ
ハッハッハ。私が本気を出せばこの位当然よ!
「え?狩りに行くの?みんな?」
「ええ!メグさん狩りされないんですか?」
厨房仲間の子達が驚愕の表情で私を見る。
話を聞いてみると。この町の前進は魔の森という魔物や魔獣がウヨウヨいる森に囲まれていた村だったそうだ。そして今でも遭遇したり危険性はある。
町の人は怖くて立ち向かう事が出来なかった。
領主様が仰られた。装備はナイフの大人1人と長い棒を持った5人の子供が戦ったらどっちが勝つと思う?と。
、、、子供ね。木だろうが先の尖ったもので長距離から同時に襲われたら確実に刺されるし次々に襲われたらいずれ体力を奪われ負けてしまう。
集団で取り囲んでフルボッコ。うわあ。ファンタジーがんシカトじゃん。
でもまだまだ森の危険が残っている以上必要な訓練だと。食糧にもなると。
あれ、そういえば昔のRPGって数人でボス囲んでフルボッコだったような。
へえ、木槍ってそんなに安いんだ。え?領民価格?ボーガンも有るの?
これ、私もいけるわ。
冒険者登録!異世界に来たら一度は誰でもなってみたいもの!
意気揚々と!
、、、すみません見栄はりました。
本当は彼女達に混ぜてもらおうと思ったんだけど武器買って来たらいなくなってた。先に声をかけておけば良かった!
ふっふっふ。でも私は直ぐに気がついた。この世界には冒険者ギルドというものが存在する!
たーのーもーう!、、、扉はイメージ通りウェスタン風だったのに。何ココ?喫茶店?あの盾と剣の看板は喫茶店のマークだったの?
あ、違う。受付のおじさんがニコニコ手招きしてる。
横のキレイな獣人のお耳のお姉さんに受付してもらいたかった。お友達になりたかった。
「お嬢ちゃん冒険者登録で良いんだよな?」
私が肯くと胸元を指差す、そして水晶。ああ、領民証明か。
とりあえずのせる。するとおじさんがサラサラと書類を書いて私に札を渡してくる。
「ちょっと時間かかるから、その辺りの席で待っててくれ。ああ、領民カードを見せれば香草茶ならただで飲めるぞ?」
そう言って笑いながら奥へ向かっていった。
とても丁寧でなんかイメージと違う。ん?なんか胸にぶら下げているプレートが一枚の人と二枚の人が。ああ、領民冒険者と余所者冒険者がいるんだ。
とりあえず依頼掲示板へ。おお、コレも二つに別れている。領民専用とその他。ああ、領民冒険者でなくても領民の仕事ここでも探せるんじゃん。
お、料理指導員募集。あ!結構いい値段!短時間だし。
っとと、違う違う。この町で暮らすのに必須な狩りを体験しないと。
そういえばテンプレだとこの辺りで。
「よう!嬢ちゃん!一人かい!」
キターーーーーーーーーー!
振り返る。マッチョのおっさん盗賊風。あ、これアカンやつや。
どうしよう。だれか助けてくれないかな。っと周りに視線をやろうとしたらおっさんが胸元のカードを指差す。おっさんの胸元のカード。あ、領民冒険者だ。
なら、
「そうです!一人なんですよ~。私まだここに来たばっかりで狩り一度もしたこと無くて。」
と困った風を装ってみる。領民ならたぶん大丈夫。
「なにい!そいつぁ大変だ。おい!お前等仲間が困ってんぞ!」
ワラワラと集まってくる。怖いおっさん達。槍やらデカイ剣、斧なんかも持ってる。全部布かぶせてるけど形でわかる。
そう、この町の良い所は領民カードを持っていれば仲間として受け入れてくれる。
正直警備兵のあの恐怖の強面も領民カードさえあれば怖くなかった。
ちょっとした帰り道だろうが直ぐに声をかけて大丈夫かとか、こっちの道の方が明るい。近いとか。町の人の反応も似たようなものだ。
「36の札のメグさ~ん。出来ましたよ~。」
呼ばれて行くと。出来上がったプレートを受け取り首にかける。これで私も冒険者!さらになんかの冊子も貰う。
「説明は多分仲間がしてくれると思うけど、一応後で軽く見ると良いよ。わからない事があったらいつでも聞きにきてね。」
親切!めっちゃ親切!そして後ろに控えてくれている領民冒険者が私を祝ってくれた。飲もうか、、、じゃなくて狩り!
森歩きなめてました。いや本当厨房で鍛えといて良かった!
不安定な足元、草、木の根。本当に疲れる。
そして冒険者のみんな。めっちゃやさしい。
ゴブリン現れる。全員木槍で小突く。私止め。拍手。
獣、デッカイ魔物以下同文。
え?血は大丈夫だったのかって?料理人なめんな!毎日肉解体してさばいてるわ!クリーンも使えるようになったし。
ただ、、、えっと。これがモンスター討伐で良いのかな。
冒険者さん達と色んな話をする。領内の生活から始まり私の本職、今度食べに来てくれるそうだ。絶対サービスするから声かけてもらうようにl約束する!
他の領の話や他の国の話。貴族の話に王都の様子。
うん、基本貴族クソ!他領の領主もクソ!他の国もクソ!
余所者への対応は笑った。意地悪ではなく勧誘なんだって。
そっかパン固いんだ。作っても良いけど小麦がアホみたいにこの領は高い。
一番貧乏くじは護衛依頼で領外に出る事?外は麦が安いからパンは食える。
なるほど。精米は持ち出し不可だからしばらくガチガチ固パン生活。
そして領法。うん、ここの領主様?貴族?メッチャ慈悲深いやん。
ガッチガチで領民守ってる。
派閥関連も有るらしい。なんとこの派閥。王様の後ろ盾になっている。王様が後ろ盾になっているのではなく。王様の後ろ盾なんだって。王子様見てみたいな。
え?王子様の後ろ盾ではない?王子様の言う事は聞かないんだ。うわあ。それで?取り囲んだんだ。こわ。ヤクザじゃん。詳しいね。え?俺達は領外に出る仕事を受ける時があるから注意される?領民なら結構知ってる?
私ももっと皆と話さないと。これでも色々教わったのになあ。
怖いおっさんに囲まれて怖くないかって?領民なら全然!
あー、暗い話になるけど。一度余所者が領民の三人を複数人で囲んで強姦したらしい。
領民の袋叩きによる処刑は許可されなかった。領法で公開死刑。
実験死刑が領法だ。
傷が繋がるか、腹を割いても生きているか。
腹の中を引きずり出しても生きているか。縫い合わせたら戻るのか。
人はどこまで水を飲んだら死ぬのか。痛いのはどこまで我慢できるか。
息を止めたらどの位生きていられるのか。痛覚はどうか。
血はどれ位流れたら死ぬのか。
もう狂気の沙汰としか思えないような実験を二月かけて領民の前で行われた。
そして処刑が終わると嬉々とした表情でこれだけじゃ足りないよね。
実験は回数だ。もっと他にもやりたいことが。
あん?俺は貴族様だぞ!平民のそれも犯罪者の命など価値もない!
言い切ったそうだ。怖いよね。
領主様は人体実験を欲している。罪人を求めている。
それも重罪で死刑確定レベルの。
公開なので皆がその光景を目の当たりにした。
千切れた腕、引きずり出されるはらわた。
縫い合わされる腹。引きずり出された眼球。
領主様は嬉々として領民の前で実験し公務員に記録をとらせる。
私はまだ見ていないけど、
ココの町にある学校にはそういった資料が一般公開されている。
という訳でこの町ではそういった犯罪が怖くないのだ。
むしろ仲間の信頼としての一体感が私は好き。
そういえば転生者かと思ったんだけど。町の人の話を聞いて解った。
ここの領主は普通に現実主義の天才だ。探求者。研究者気質って言うのかな。
興味の沸いたことは金と立場に物を言わせて研究する。
失敗記録も沢山あるそうだ。そしてその技術の恩恵を受けるのが私達領民。
うん、この領の外に出たら私生きていけないわ。
森からの帰り道、ふと道端を見ていると。見慣れたものっぽいのが。
およ?これネギじゃないかな。つもう。あ、あっちはたぶんノビルだ。
ああ!この木って楓じゃないかな!
冒険者さん達が付き合ってくれた。
料理指導依頼受けて帰らなきゃ。そうだ!お料理教室なんてどうだろう!




