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55.団結

おのれ!ふざけるな!


くそ!どうしてくれようか!


届けられた文を読み進める。


何をふざけたことを。どうして気付いた!


ああ?なんの事だって?二ヶ月延長だとよ!


そうだよバカ息子が!滞在、留学期間を二ヶ月延長すると言いだしたのだ!


バーナだよ!バーナの留学!


しかも滞在場所は儂の隠居先の別荘だと!


お前は勉強しに行ったんだろうが!迎賓館が有るではないか!









まったく、ドスドス音を響かせながら厨房へ向う。


うむ、なかなかいい精米具合じゃないか。


どれ。うん糠臭さも消えている。


さっさと米研ぎするか。水をいれてっと、何度か繰り返し。


購入してきた釜に、、、と。水は爪を目安にっと。


お、いい具合にグツグツいいだしたな。


ふっふっふ。艶々ではないか。真っ白で美しいのう。


ああ、いい匂いだ。これが米だ!


おかずは、いや、まずは一杯。


塩をパラリと。うん、うん、うん。これだけでも美味い。


口に含んでにっこりしているのを妻が見ていた。


ふむ、なんて言い訳しようか。


「あなたが、領民が失敗した物の責任は。領主である自分の。責任でもあると。共に背負うのだと。申されましたので。その、妻である。私も覚悟を決めてここに。来たのですが。」


交互に白い家畜の餌と私を見ている。


、、、し、仕方がない。ほれ、食ってみろ。まずは塩のみだ。


食えなくはない?まあな。慣れなければな。でな、そうだな。あまり料理ができる所をみせるわけにもいかんし。そうだ。肉なら狩猟とかで焼くって理由付けられるだろう。


ああ、だからロイ殿は最初に肉にしたんだな。


「お、おいしい!」


シーーーーーーーーーー!!!!

口元に指を立てて妻を静かにさせると回りを確認する。


妻の耳元で話しをする。秘匿技術だからな。


「ええ!はあ、まあ、え?それで?今後は。なるほど。え?領民への普及はもう開始しているのですか?」


でなければここにコレがあるわけなかろう?



ただなあ。派閥技術漏洩はマズイ。だが貴族としての建前もある。家族をなんと説明したものか。いまは領内の団結、領内の力の付け時なのだ。


「あら、それなら良い手がありますわ。いきなり食べさせて食事後直ぐに中身の説明をすれば話を聞く筈です。」


しかし建前がなあ。


「貴族とは領民が失敗した物を罰として領民だけに与えるだけでなく。矜持として共にその責を負う!これでいかがでしょうか?」


領主以外にも通じるか?つうじるのか?


「これの量産理由は。新技術の開発がうまくいかない!もっと試せ!という指示の下日々研鑽した結果大量に出来てしまった。などというのはいかがでしょう。」



お、おお?おおおお!それならいけそうだな。


領民も旨そうに食ってたが。領外には秘匿と言明しているし。バレたらこれも重税の対象の可能性を示したら。ニヤニヤしてたからな。








ああ。結果的にうまくいった。妻の立てた作戦すごいな。もっと慎重を要して時間がかかると思ったんだが。領内一致団結してるわ。家族内も良好だ。


「すまねえです。なんとか色々試してるんでさあ。ですが失敗ばかりで申し訳ないです!」


ニヤニヤしながら大声でいうな。


「まったく。しかし実験の試作に失敗はつきものだ。気にせずもっと大量に試すのだ!数打てば当たる!」


次男お前よう、物凄い笑顔で袋を受け取りながらルンルン鼻歌混じりに厨房へいくなよ。



『くそお!またダメだ!もう一回!』


領内の水車小屋、製粉所から悲鳴があがる。


「ああ、今日も失敗飼料かよ!くそ、もう少し頑張れよ!」


領民達が嬉々として文句を言いながら受け取って帰っていく。


交換には戸籍証明書が必要だ。我が家の家紋付き。偽造は死刑だ。


「ああ、すまんな冒険者さん。あの失敗した家畜の餌は領民が責任を取ってかたづける決まりでな。ええ?酷い領主だと?馬鹿言っちゃ行けねえ。ここの領主様は一家揃って領民の失敗は我々の失敗でもあると同様に片付けてくれるのだぞ!慈悲深いったらありゃしねえ。」


「そりゃあ良い貴族様だ!俺もこういうところの領民に生まれたかったな。」


、、、いいのかこれ。


「なんでこの店腐った物売ってんの?え?これ領民しか買わないから?領民以外は買えない?そうじゃなくてなんで売ってるのかなと。新しく何か出来ないかと開発はしてみたものの失敗したと。だが食料を失敗したとはいえ粗末にすることは許さないと領主様が?だから領民が頑張って失敗費用を負担しようと。酷い領主だな。はあ?領主一家も領民の失敗の責任は共に取るって買いにくる?ここの領民ってどうやってなんの?」








、、、妻よ。ここまでお前計算してたのか?



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