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50.紛糾

始まりました。派閥会議!


おまたせしました!


とっても待ちました。


なんで派閥会議始めるのに一ヶ月半待たにゃならんのよ。


資料は手元にあり技術確認も済んだだろうに。


ああ、全部回られた。無駄に一ヶ月半全て費やして。








「塩はこのままですなあ。」


「あの規模あるんだ。下手に動かなくても良いだろう。」


そうだろうな。生産量で勝てる訳がない。その代わり派閥にはかなりの安値で卸して濡れ手に粟状態にしているんだから。


問題は米をどうするかだ。


「生産量。加工。技術秘匿。貴族としての建前。」


そうなるよねえ。


「田んぼ制作にはやはり治水事業が必須。収穫量が桁違いだ。だが派閥全領土に豊富な水源があるわけでもない。」


そうなんだよな。基本農業は出来るのだから水源はある。それはそうだ。だが豊富であるとは限らない。故に貯水池を作ってもらったが。


「米をどうするか。なんとかして持ち出したいところだが。クソ、領法には逆らえない。しかし田んぼ制作にはあと2年はかかると思える。」


いやいや、それをなんとかする会議だろ?つうか必死だな米に。


「あの一つよろしいですか?」


おや、ヴィル君なんかいい手はあるかね。



「精米の輸出緩和を推奨します。原料の特定の危惧は残りますが加工方法や調理方法がバレなければいけるかと。ロイ様は既に課税の可能性は覚悟しておられますよね」


そうね。それは肯くしか無い。だけどなあ。課税ってことはそれが食えるとバレるといういみだ。そうなると他の貴族も手を付けるだろう。そうなるといずれ派閥の力に追いつかれる。


「変わらず家畜の餌として輸出すれば良い。」


は?王様何言ってんの?


「しかし名目が。」


「あるじゃないか。我等のバーナ領は畜産大国だ。家畜の輸出。その餌の輸出。それで名目が立つではないか。問題は家畜の売買が税の対象になる。米は家畜の餌だからさほど税金は掛からん。」


やべえ。王様マジ切れもんだわ。


「精米後の米は日が持たない。」




一応言っとこう。ほれ慌て始めた。


「ならば未加工のまま輸送し、現地で精米すれば良いではないか。有るのだろう?既に転用可能な水車が。」


その為に先に技術売りつけたんだもんね。気付くの早えな王様。


「しかし、それでは我々が力を付ける前に技術が漏洩し他派閥が力を付けてしまうことになってしまう可能性が。引き抜きの可能性も」


金で情報を売る。しかし水車はどうだろう。開発に時間がかかるか?


いや、そこまで難しい原理でもない。ならその間に増産。いやそれも限度がある。


「平民は貴族を恐れる気質が多い。それこそ脅されたら。」


「身内の者の制御は自身でやるしか無いの。建前はそうじゃなあ。家畜用の粉を作ろうとしたが失敗した。で精米をまず行う。当然製粉の失敗だから自分達で始末をつけろと食わせる。」


意味不明なことを言い出した。何考えてんだこの王様は。


「これで先ず領内で精米が行われる。民衆には精米した物を始末する義務として食べる建前が出来る。他領の者には失敗製粉は仕方なく自分達で食べているという情報になるの。問題は我々が食べる建前だが。」


意地でも米食う気だ。だが家畜の餌。貴族の矜持、建前。


あ、いけるか。いやこれだと王様がなあ。


「皆さんは貴族であり。領主でしょう?民の失敗を民だけに背負わせるのですか?罰するのも領主の仕事ですがその責任を取るのも領主の仕事だと思うのですが?」


なんだよ、なんかおかしいこと言ったかよ。


「「「「それだ!」」」」


おお、派閥のおっさん達が嬉しそうに喜んでいる。


「それでは儂が食えんではないか!」


王様だって似たような方法は取れなくはない。しかし近場に派閥の領のものがいない。一番近い派閥の伯爵の所で一週間。


「一週間位なら持つけど、、、調理法がなあ。」


おお、って顔して自分が王宮では調理できないということに気付く。すごい必死に建前、方法を考えている。派閥のおっさん達も一応考えてくれてるみたいだ。王宮にも味方がいればねえ。


「王宮にも味方がいればねえ。」


あ、口に出てもうた。そしたら王様なんかぶつぶつ言い出した。ああ、宮廷料理人か?


「連れてくるか、料理長と副料理長を、、、いや、誇りに傷、しかしゴミを食う毎日は、いや、いけるか?戻りたくないと言われたら。」


決心した顔だ。というか王様より料理下手な宮廷料理人ってどうよ。


方針は決定した。田んぼ増産の間の3年は畜産飼料を支援。輸出。同時に畜産に力を入れる建前で家畜の輸出。これで米はなんとかなる。



「醤油!味噌!」


となるわなあ。これなあ。発酵食品だからなあ。貴族的に厳しいんじゃ。


「いや、料理人をこの領地の修行に出し、秘伝のタレでいけるじゃろ。」


おっと、そういやその手が有った。それならいける。料理人には秘密の技術みたいな話か。もう何でもコレでいけないか?


「領民への浸透。情報操作。印象操作。全てがその手でいけるとは限りませんからな。」


「他にも問題はある。治水事業の終わった後の労働力。仕事を失った者が溢れますぞ?」

「それこそここの様に排水事業の穴掘り公共事業で良いではないか。」

「森林がいつまでも有るわけではない有限なのだ!植林事業も同時で進めねば!」

「家畜の代金を少しまけてもらえないかな」

「塩事業をなんとかこちらでもやりたい。しかしバレては」

「米酒!米酒を手に入れる方法は!」

「王都に向う家族がどう出るかの問題が」



うん混迷してきた。元々俺にどうにもならないから任せるための会議だったんだけど。情報漏えいは自分達の首を締める。だが欲しいと。うわ~欲と自制心の戦いだ。


めんどくさい。もう黙っとこう。








こうして派閥会議は迷走したままでもある程度事業を推し進めることになった。


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