40.結婚
兄上の結婚式に参列した。
おめでとうございます兄上!
あとリリアン義姉上、メッシーア義姉上。
参列者、全派閥当主とその従者数名のみ?
あれ?次期当主も来る予定だった気がするんだけど。
それがどうしてこうなった?
「ヴィガー・シュバルト個人の名において、バーナ領に尽くし!バーナ領の為に働き!仲間と共に歩むことをここに誓う!」
「ロイナート・バーナはヴィガー・シュバルト個人を領の仲間として認める!よく来てくれた仲間よ!」
プスっとしてペカっとして渡して笑顔で握手。
、、、うん。本当にどうしてこうなった?
あれ?今日は会議の予定だよね?え?3日後?
ん?んん?え?ヴィル君お父さんと隠居先の家探し?
は、はい?あ、あれ?
訳がわからない!
「すみません。もう一名。」
なんか知らないおっさんがコソコソと入ってきた。
もう何でも良いや。サラサラと署名をして、立ち上がり
「アルフレッド・アルト個人の名において、バーナ領に尽くし!バーナ領の為に働き!仲間と共に歩むことをここに誓う!」
「ロイナート・バーナはアルフレッド・アルト個人を領の仲間として認める!よく来てくれた仲間よ!」
プスっとしてペカっとして渡して笑顔で握手。
嬉々としてカードを持って外に出ていった。
ん?んんん?え?名前を確認する。
目をこする。もう一度確認。えっとまさかな。
いや、名前、法律だと確か。
う、うーんもう考えたくないなあ。
領主館の隣に新設された施設。迎賓館。
対貴族用施設。贅を凝らしたと一見出来るが。中身の技術は既存製。
正直寄りたくない。臭い気がするのだ。
「しかし、飯が美味い!酒が美味い!風呂がでかい!最高だな!」
ええ、ええ、そうでしょうとも。わざわざ派閥揃って来てくれたのですから歓迎しますよ?そりゃあね。トイレも風呂も貸しますよ?同じ派閥内なのですから。ところで、王様ってこの派閥内だとどの位置になるの?
「ああ、ロイ殿。そうかしこまらず。この領ではロイ殿がトップ。」
ヴィル父。そうじゃなくてさ。いや、なんか腰低くないか?え?
迎賓館の大食堂での会食。その中央にはデデーンとシーサーペントのお頭の丸焼き。味見したけどかなり美味しかった!特に頬肉!脳天!
脳天てのは、地球人なら、、、マグロで調べてくれ。
うん、兄上お約束通りシーサーペント御用意しましたよ。
兄上も義姉上様方も美味しそうに頬張られている。
そうじゃない。現実逃避良くない。さて本題に入ってみようかな。
「あの、それで、なぜ国王陛下がココにいるのですか?」
「いやいや、ロイ殿。我等は仲間ではないか。アルで構わんよ」
いや流石にそれはないだろう!ん?でも血と名前賭けたよね?
あれ?あれれ?俺って今どんな立ち位置?
「あの、それでアルさんはどうして来られたのでしょうか。」
うんうん肯くな!王様ならどんな態度でも良いが。
「話は少し長くなるがね。君が叙爵してね。例の計画が開始された。」
ああ、ウチのオジキナメてんの作戦か。年に1、2家ってやつ。
「初年度で15家取り囲んだ。」
ヴィル父さんぶっちゃけたなあ!
「アレね、すっごく助かったわ。思った以上の効果発揮して儂の発言力王宮内で怖いもの無しになったね。それで王子が増長するかと思って心配してたら。」
ああ、王子の言うこと聞けってやつか。聞かないけどな。
「逆に大人しく公務に勉強に励むようになった。王にさえなればあの後ろ盾が使えるぞと言ったら。もう王になる為だけの集中ぶりよ。」
うわ、効いたなコレ
「だけじゃなくてな。一応後ろ盾の事も心配だったから直属の間者をそれぞれ送ったわけよ。でもこの領に送ると帰ってはくる。報告は異常なし。しばらくするとアレコレ理由を言って辞めると言い出す。もう不思議でたまらん。3人目で怖くなって辞めた。」
まさかの間者領民にしてた。うわあ、ヴィル達が複雑そう。身に覚えあんの?
え、あの顔はあるんだな。よく間者だってわかったな。
「侯爵に聞けば。バーナは我らの研究地で技術流出が怖いので勘弁してくれないかと。我らは王の後ろ盾いわば身内も同然。お疑いかと。」
うん。ならなんで?
「今回の年末パーティーでな珍しく儂の後ろ盾派閥のトップが顔を出すことを知ってな。これは御礼を言わねばならんと思ったら。既にいない。調べればイバーナで派閥の娘の結婚式に参列すると。これは儂もぜひ参列せねばと視察名目で王子達に仕事任せて。追いかけてきた訳だ。」
って事は参列してたんだ。すげえな。王様に祝われるなんて。
「で、侯爵達に御礼を言っていたらその後の予定が研究の地。バーナへの視察とわかってな。付いて来ちゃった。」
付いて来ちゃったじゃねえよ!侯爵も断れよ!
「派閥の身内なのだから良いよな?派閥は儂の仲間なんだから良いよなと言われてなあ。長い付き合いだったしまあいいかと。」
よかねえよ!いいのか?
アレ?そうだよな後ろ盾の力が弱まるような事したら自分の首締めるだけだし。
「正直驚いた。広大な放牧地。なるほど噂の領主たると騙されかけたが。派閥内だから言わせてくれ。コレはやってくれたな。」
ですよね~。ご飯を匙で持ち上げながら笑っておられる。加工法が理解らなくてもザザの実という検討はつけたのだろう。
広大な放牧地という対官司用の隠れ蓑にも気付いたようだ。
おそらく昨日の宿泊で気付いたのだろう。
「文句は言わんよ。むしろ国法の抜け道を良く見つけたと言いたい。おそらく他にも色々あるのだろう?昨日米酒を飲みながら侯爵にも話したが。儂の方でもこの派閥を守るために王宮内で対策を始めようかと思ってな。」
だよな。普通そうなるんだよ。
「ただな、君の権力増強も必要になった訳だ。という訳で今年中にもう一回儂ここに来るから。その時子爵な。」
んん?
「目標侯爵!できれば公爵までいきたいが。公爵は王族関係者でな。すまんな。」
んんんんんんん?王宮行かずに陞爵出来るのはありがたいけど。良いの?
「王宮来たくなかろう?ココに来る名目は後ろ盾派閥の視察兼御機嫌伺い兼保養地あたりかな。王だって貴族には気配りするわ。」
せやな。胃が痛くなるよなあ。
だから家買いに行ったのか。でもあれ?不味くね?
いや、使用人は雇って貰えば良いのか。じゃあ護衛は?個人名義だし警備兵いるし、冒険者って手もあるな、なんとかなるか。大丈夫かな。
「いやあ、面白かった!カードをかざすと皆が仲間として接してくれてな。ただの金持ちのおっさんと思われたみたいだわ。」
お、おう。ちらりと護衛達を見る。うん驚愕表情だ。これはまかれたな。
困るんだけど。
「領民冒険者達とな酒を飲みながら余所者への対応を教わってな。試してみたわ。胸に領民カードではなくてギルドカードをぶら下げる奴の前でわざと買い物をする。煮炊き場に行って粥を煮る。旨そうに食べる!吹き出す奴ら!最高に面白かったわ!」
、、、粥煮たんかい。ってか出来る、ああ、煮炊き場には公務員が補助員でいたな。ってか本当に嬉しそうだな。
え?エマが一応影から護衛してくれてたんだ。ふんふん、はあ?風呂付既存物件ででかいのは派閥のおっさん共が既に買っていて負けてなるものかと?
大金貨1000枚!
え?全部の町とこの領都に新設依頼?じゃあ小さくなるじゃん。
数で勝負?一応別荘兼隠れ蓑だから複数必要。あまり大きすぎるとバレる可能性。うわ~計算ずくか。領法をサラリと読み、紙幣にさっさと交換。
物価の把握。え?銭湯まで行ったの?どんだけ物怖じしないんだよ。
は?公営馬車じゃなくて公営牛車の方を予約した?ケチくさい!じゃなくて本気で紛れ込む気満々じゃねえか!クソ!王家の紋章出るようにしとけば、
ダメだ。それでは意味がない。
侯爵達以上に頭が回る。しかも観察眼が半端ねえ。王様ってやっぱすげえんだな。
しかし、なんだか筋書きがおかしい気がする。俺には都合が良いが。
ラン兄か、やりやがったな!クソ天才め!
どう転んでも全員に利しかない。
くうぅ!カッコイイ!さらっとこの状況を作り出せる!
派閥会議が更に延期決定。一ヶ月後。




