表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/150

37.宗教戦争

厄介なものだ。


わざわざこの未開の地にきてまで布教しなければならないとは。



この国では政教分離。


現在この国で一番布教しているのは光の女神を崇める我らだ。



王都で炊き出しをし布教活動をしてきた。


それが数年前から状況が変わった。



炊き出しをする相手が消えたのだ。


情報を探れば、バーナ領へ向かったらしい。



ええい!忌々しい。家畜の餌に釣られる貧民共め!







これが?未開の地?


は?と、とりあえず領主様へ謁見だ!



いない?今領内の別の地へ行っている?


戻ってくるのはいつになるかわからない?



くそ、追い払われた。


追いかけるか。え?この領都から出れない?


そういう領法?そんな。待つしかないのか。



おえええええ!クソマズイ!こんなのを貧民共は食べているのか?


しかし、旨そうに食っている。慣れか?慣れなのか?


馬鹿舌なんだろうな。



これなら、我々の炊き出しの方が。



は?高い!小麦がこんなに高いだと!ふざけるな!


思わず詰め寄ってしまった。



えー、儂司祭なんだけど。関係無い?領法上の公務執行妨害?


麦関連を販売している所は領営?公営っていうの?


で公営で働く人達は公務員、つまり、役人!



いや、あたまおかしいんじゃないか!ここの領主!



はあ、軽いもので初犯だから3日。



地獄をみた。クソマズイ粥を3日。


表に出てもパンはバカ高い。麦も高い。



連れてきた助祭や修道士、修道女達が疲れ切った顔をしている。


中には聖女と呼ばれた修道女、シスターもいるのだが。


どんなつらい修行でも意思の強さがにじみでて凛としていたのに。


彼女ですら耐えられないのだろう。



もう諦めるか?







ヴィル様というらしい。領主様に会うにはまず面談が必要と。



「何用で?っていうか布教だよね?」


「はい、出来れば援助もお願いしたく。」


物凄い勢いで金が減っている。お布施だけで賄いきれるとも言えん。



「、、、厳しいと思うよ?そもそも領法で宗教の自由が書かれているんだ。」


「でしたら我が宗教の布教も自由かと」


ヴィル様が目をつむる。そして首を振る。



「この領地の領民は皆食い詰めた者達。それを領主様に救われた。そして虐げてきた者達。つまり他領の者を信じない。意味判るよね?」


そうか、そうだよなあ。どの領民を見ても健康そうだった。


来るだけ無駄だったか。



「諦めるのはまだ早いよ?余所者の話を聞かないだけで領民からの話だったら聞くわけなんだから。」


そして宗教の自由。領民になって布教すれば良いのか!


「領民になるには!」


領主と会えば良い。領民の条件は領法を守ることだけ。それだけで良いらしい。


今日は帰還したばかりで疲れているだろうから明日の朝?領民になる者を連れてこいと。



全員で話し合った結果。


当然布教活動する為に全員領民になる事を決意した。





ロイナート様が訪ねて来られた。



「ねえ、変な噂聞いたんだけど。光の女神の像がって、アレ!」


む!しまった。慌てて修道士達に手を回し合図を送る。


「ちょ、あ、回転してるぞ!おい回転を止めさせろ!」


「ロイ様は疲れておられるのです。ちょっと一休み致しましょう。」


む、抵抗が激しいですな。力を込めて、よし椅子に座らせる事に成功した。


ガチンと音がする。うむ回転が終わったようだ。


「もう一度良く見てくだされ。、、、普通に女神像ではございませんか。」



振り返る。うんうん。女神像だ。


「ウソつけ!回転してたぞ!」


むう、強情ですな。へいへい、カモンじゃ!


シスター達が寄ってきてロイ様を取り囲む。


「領主様、シーサーペント退治のお話をお聞かせください!」


そうそう、取り囲んで。うむうむ、いつも通り胸を押し付けるんだ!


領主様は胸に弱い!もっともっとだ!有耶無耶にせよ!


「領主様お茶をお持ちしました。」


「領主様!この間、領主館にお使いに行った時にアイスクリームをご馳走になりました!また食べたいです!」


「「「「なにそれ!」」」」


なにそれ!儂も知らんぞ!新作!新作なのか!




よっしゃ。作戦成功。すっかり忘れたように帰っていかれた。


ズズズ、ガチン。再び像が回転し終わった。


まったく、神子様にも参ったものじゃ。


司祭の目の前にある像は木製ロイナート様像。


うむ、神々しい。正に神像だ!




さっそく領民達がロイ様考案賽銭箱に紙幣を入れてくれる。


跪き。ロイ様に御礼の祈りを捧げる。



ん?女神像は良いのかって?いや、夜には一刻ほど祈りを皆で捧げておるよ。




しかしなあ。


女神様に祈るよりロイ様に祈った方が良い生活出来る気がする。


皆もそう言うし。領民仲間も喜んでいるし。


この像の方が良い気がするんじゃ。



ああ、今日もご飯が美味い。








ところでシスター、アイスクリームの件なのじゃが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ