23.お風呂と領民
バーナ領都
相変わらずプスプスするのがお仕事です。
実験したい。何故こうなった。
意味がわからない。
後ろに張り付くエマとナナ。
立会人の如く間に立つヴィルとサバート。
自分の横に立ち何故か剣に手をかけたままジッと相手を観察するフェイ。
別に殺ってやろうって訳じゃない。
いつものアレだ。領民宣誓と宣言。
五人ずつ位で行われる。それを何回もここ毎日ずっと。
考えてもみてくれ。五人ずつ。一人あたり五分もかからない。
それを朝から日が暮れるまで。一日100人位。
おっさんがもうコレやめないかとうるさいが一度始めた事は変えられない。
というか逃げられない。何故か部下が見張ってる。領主を。
日が暮れると領主館から見える領都を囲う塀の外を見てため息をつく。
沢山の焚き火とテント天幕が並んでいる。
そう領民に成る為の待ち人集団。
それに炊き出しをしている警備兵共。
食べさせているのは未加工のザザの実の粥だ。
それでも嬉しそうにがっつく者達。
「なあ、いつになったらアレ消えるの?」
領民権発行待ちの行列を眺めながらつぶやく。
「全員が領民に成るまでじゃないですかね?」
ヴィル君冷たいなあ。二人を先頭にぞろぞろ部下と渡り廊下を渡る。
先日完成した風呂だ。しかもデカイ風呂。金にものをいわせて作り上げた一品。
最近みんなで仕事上がりに入るのが日常だ。裸の付き合い?
ただ時間的にかち合っているだけだ。
おっさん曰く銭湯ってこんな感じだよなあだそうで。
みんな疲れた顔をしている。
いやさ。もう全員同じことを繰り返しているんだよ。
案内して領法説明。禁止事項やらの説明。
そして俺は笑顔で宣誓を聞き届け領民認める宣言。
プスプスやってカード作って笑顔で握手。
「もう気が狂いそう」
「狂って無かったのですか?」
サバートうるさい。セイっと木戸を横にスライドさせ真っ裸で浴場に入る。
シャワーで固形石鹸と布を使って身体を洗う。
布を絞り頭にのせて風呂に浸かる。皆同じ姿だ。
「笑顔で自傷行為。宣言して送り出す。コレって俺以外でも出来るんじゃね?」
「出来るわけがござらん。領民は領主に忠誠を尽す。もし今後やらないとなればコレまでの領民と明らかな差が出来るでござる。それは」
「分かっているって!例えば血を貯めといてさ。」
理屈的には可能なのだ。自分の血で魔力を反応させるだけなのだから。
「目の前で血を出し血判を押す。その行為に領民は忠誠を誓っています。」
せやなあ。なんかそれやると領民になった連中の目が変わるんだもん。
「普通の領主はそこまでしませんし。立会もしません。せいぜい代官がサインして終わりです。」
カードもない。
本当に領民に成れたかも分からない。
よくそんなんで領民抑えてこれたよなあ。
力でねじ伏せるかあ。
貴族すげえや。
プスッとやってペカッとして笑顔で握手。プスッとやってペカッとして笑顔で握手。プスッとやってペカッとして笑顔で握手。プスッとやってペカッとして笑顔で握手。プスッとやってペカッとして笑顔で握手。プスッとやって、、、
「もういやだああああああああ!!!」
「ロイ様ご乱心!皆の者!取り押さえろ!!」
無理に決まってんだろ!
昼休み。食堂で飯を食っている最中。当然皆も同じ時間に食事を取っている。
一緒にいるが同じ様に飯を食っているのだ。いけると思ったんだ。
ヴィルの掛け声で廊下までの道が一瞬で塞がる。
なめるな!幸い今日は晴れ木窓は開放されている、、、既にエマが封鎖。
反対の窓!ナナ!イケる!
ナナに向かって突撃敢行!勇敢なナナが負けじとこっちに突っ込んでくる。
甘いな体格差というものがあるのだよ!
ドンと胸の辺りに衝撃が走る。ドロップキックだと!!!
崩れ落ちるロイと驚愕するおっさん。
「確保!確保おおお!」
そんな日々がようやく終わりを告げようとしている。
あれから二月。なあ、俺がんばったよな。ああ、お前は一人前だ。
と脳内でおっさんに慰められるロイ。
現在ロイ君久しぶりの視察中。
凄まじい数の元移民領民は現在何やっているかって?
これでも領主なんだ。
奴隷の如く毎日働かせているよ。
ん?何をって。
出来る事をやってもらっている。例えば、、、
「領主様!こんな事で家貰えて美味い飯が腹一杯食えるなんて。この領は天国ですかい!」
ん?あげたんじゃないぞ?
最初は借金だからな。
金は俺の立替だから払わねえよ。しばらくはな。
そう特に特技がない領民は腹一杯に飯食って体力を付けさせ。
何をするって相変わらずの穴掘りだよ。
「馬車にも乗れるなんて。」
うん、毎回訂正するけど牛車な。
違いわかんないんだろうなあ。
その牛車にのってお山へどなどな~って行って岩の採掘な。
そして視察先は予定ではそろそろ完成予定の風呂屋だ。
おっさん曰く銭湯と言うらしい。川からの長大な水道橋。
仕事のない移民共へ仕事を与えねばならない
労役として重労働の穴掘りをさせ、
元領民には経験済みの石運びと石積みという労役を課した。
同時進行で街道整備兼森林伐採、建物も増産してるからね。
数年前に領民達がやってくれた。
鉱石が輸入だより。輸送費が嵩んで仕方がない。鉱山さえあればな。
部下か使用人か公務員が領民に領主が求めていることをもらしたらしい。
それはもう指示なしで動いていた。
海へ向かっていた街道整備の労力を再び結集。山へと向かった。
そして到達してしまった。地肌で岩山と見えた山向かって辿り着いてしまったのだ。どんだけ目が良いんだよ。
だがそう簡単に鉱石が見つかることもなく未だに出てくるのはただの石。
どうしようコレ。ってなって使えば良いじゃんのロイ様。
サッサと屋敷に運ばせて風呂建設。
使えるじゃんと領民達にも使える風呂作るって事でまたお仕事追加。
ただ言っとく。風呂屋。入る義務を領法で決める!
ついでに入る為の金も取るがな!
ああん?義務な上に金を取るのかって?
それを決めるのがお貴族様じゃい!
悔しかったら貴族になってみろ!
臭い汚いってのは本人が慣れたら気にならないかもしれないが。
匂いは漂う。汚いってのは広がるんだよ!
他の貴族はよく耐えれるな。
自分の持ち物(領民領地)が臭くて汚いの、、、




