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2.ランナート

ランナート・イバーナ7歳、子爵家嫡男


彼は次期子爵として生をうけた。




彼は数年前より始まった貴族教育を黙々とこなし、日々努力し続けている。


貴族の子供は7歳になると王都の王宮でお披露目の儀というパーティに出席しなければならない。


そこでも彼は礼儀作法や話術を完璧に使いこなし、笑顔を貼り付け様々な話題で相手と友好を結び大人顔負けの社交をやってみせた。


結果、将来有望、イバーナ子爵家安泰と評判になるほどだった。


まさに神童ではないだろうか。




ランナートは不満だった。


何が不満って今回のパーティーでついた自分への世間の評価だ。


自分が神童?そんなわけあるか。


神童っていうのは弟ロイみたいな者を指すのだ。


それか神童と評価を受けない子供の努力が足りないんだ。









最初に違和感を感じたロイの行動は3才児だった頃の行動だ。


その日の朝、ロイの部屋を通りがかった時にドアが開いていたのは偶然だろう。




ロイはジッと侍女を見つめていた。


その侍女は胸の大きな女性で母と同じというよりは幾分か年上の女性だった。


胸でも見ていて母恋しいのかと思ったのだが違うらしい。




ロイは侍女と壁とを何度も交互に見ている。


それはキラキラした目で嬉しそうだった。


『なんで?どうして?なんでそれ触ると明るくなるの?もう一回やって』


まさかの部屋の灯りに対する疑問だった。



『もう一回!もう一回やって!』


侍女は困惑しながらも数度照明をつけては消してみせたが。


『もう一回!なんで明るくなるの?』


『こちらは魔道具となっておりまして魔力に反応して明るくなるのです。ぼっちゃま。そろそろ朝食のお時間で』


『もう一回だけ!魔力って何?』




照明の次は魔力か。


『魔力とは人の体の中にあるものでして、そろそろ朝食の』


『もう一回つけて!体の中に魔力が有るの?体のどこに?』


次は魔力の位置かよ、うん、しつこいな。いい加減に止めるか。




「おはようロイ。あまり彼女を困らせてはだめだよ。さあ、朝食に行こう。」


割って入りロイの手を掴むと食堂方向へ歩みだす。


「おやようございます。あにうえ。あにうえは魔力ってしってますか?」


うん?なんか嫌な予感が



「魔力かい?当然知っているよ。丁度家庭教師に教わり始め」


「しっているのですか!おしえてください!」


最後まで聞いてくれないな。



ロイをなんとかなだめながら食堂へ行き父に窘められるまでしつこかった。









ロイは魔力について聞き周り、次に試し始めた。


最初は可愛いものだと思ったが自分より先に魔法を発動された時はショックだった。


悔しかった。惨めだった。


悔しくて何度も魔力を探り、体内を魔力で循環させる事を教わると自分は魔力尽きるまで鍛錬した。


魔法を初めて発動させ自分で感動し、調子に乗ってドヤ顔でロイに火魔法を披露してみせた。



『すごいです!コレが火魔法ですか!流石です兄上!』


そうだろう。うんうんと肯いていると。


『どうやって火魔法を発動させたのですか?』


うん?



『それは教師に教わったり本を読んで』


『教師?本?それで覚えられるのですね?』



うんんんんんん?


『つまり教師に教わっている兄上に教わり、本を読めば僕にもできるんですよね?』


んんんんんんん?間違ってはいないな。いや、マズい。


『教えて下さい!』



やっぱりきた!今のロイがこう言うのは予想ついたじゃないか!


ランナートがかなり後悔した後戻り不可能な猛勉強と特訓の日々が決定した瞬間だった。




読み書き計算はあっという間。


魔法関係にも貪欲。


教えてはすぐに追いつき追い越されランナートも意地で追返す。


しかも魔法以外にも興味は尽きない様で色々やってみてその経過や方法、結果を自分に報告されるのだ。


悔しい。


だが自分が報告を受けた。


知らない事を知らされた。


ただそれだけで終われるものかとその結果に対する疑問や考察、助言をしてみせる。


その度にロイは嬉しそうに瞳を輝かせ実際に試しその結果をもってくる。









認めてしまおう。


楽しいと。


そう楽しいのだ。


7才のパーティで交わしたどの会話よりも自身の身になり成長の糧になるのが分かり楽しいのだ。


だが王都からの帰りの馬車、もう明日には着くだろう屋敷にいるロイに王宮や王都での話でもしてやろう。


そんな事を思っていた矢先、例の事件が発生した。


『ロイナート様が!』




早馬で報告を受けた父と母が真っ青になった。


自分はその時何を思ったか、考えたか。




何も覚えていない。

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