146.ダンジョン1F
どうも。ダンジョンへお一人様ごあんな~い。
ええ、ワイです。
仲間はって?
いねえよ!いらねえんだとよ!
冒険者階級:青銅級
ダンジョン低層なら単独でもOKだそうだ。例の冒険者の報告で低層なら大丈夫じゃね?って前回の探索とオーガからの撤退判断で評価されたそうだ。
アレって確か引きずられて撤退だったはずだけど。
ちくしょう!あの野郎のせいでワイがボッチじゃねえか!
ギルド判断で単独OK。一応待機組っぽい冒険者に声かけるも低層範囲で初心者じゃねえしなあと申し訳なさそうに断られた。
他の冒険者に協力をお願いしたり混ぜてもらえないかとか頼んだんだよ。そしたら自分達の実力とワイの実力?冒険者の評価的なお話と探索域や分け前的に厳しいと断られた。
冒険者切実過ぎ。冒険者じゃねえ。ダンジョン駆除業者としか思えん。同じ立場ならワイでもそうするけどさ。
唯一声かけてくれたのがダンジョン入口の警備兵さんお二人。伝令業務らしい。流石に一人はって言ってくれた。困ってるなら力になるとも。だが泣く泣く断った。警備兵や衛兵さんはワイが所属していると思われている派閥仲間の可能性は高い。正直助かる。
でも!だからこそ!サバート様の領地で頼って良いものかも考えさせられるのだ。
だって宗教関連のが怖いんだよ。ロイ様と直接話す身としてはな。彼らに迷惑かけたくないんだよ。どこでどう繋がるか分からねえんだもん。
ダンジョン1階層目。せやね。入って最初の階層。洞窟。支え無しの炭鉱のイメージ。出現モンスター。ゴブリン。終わり。
そうゴブリンだけだ。ゴブリンしか出ない。そして今のワイにとってのゴブリン。正直雑魚。雑魚だけど油断したら大怪我する事は間違いない。そういう世界。
木槍でプスプスして終了。討伐後の落とし物は激安魔石のみ。偶に剣とか武器とか腰布が落ちている。
遭遇は早いのでマジで数で勝負って感じ。いや、ゴブリン、もう面倒だ。ゴブで良いか。そのゴブの繁殖力を考えればダンジョンでの出現確率も当然なのか?
新たに現れた単独ゴブの喉元に木槍を速攻で突き刺し持ち上げる。ちょっとジタバタするがゴブに逃げられないし攻撃も受けない。ゴブ程度ならボーガンいらんし矢も消費しなくて済む。
木槍1本ゴブ10体位で買える(昔はな。今の魔石の価値は知りたくない!)。木槍の耐久性は解らんが最低でも既に1本あたり100体は殺っている。つまり既に元は取っているんだ。まだまだ使えそうだし。折れる可能性があるのはオークレベルを相手して初めて可能性があるって感じ。
木槍最高!コスパ良過ぎ!
ところでマッピングってあるじゃん。アレ意味あるんかな。ダンジョンにもよるんだろうけど、この国での公式見解ではダンジョンは生き物。生き物というか表現が難しいのだが魔力が関係する自然環境?
自然が不動と誰が決めた。しかも魔力って少量でも火を点けるほどのエネルギーが有るんだぜ?ルートなんか速攻変わるわ。
低層ほどルートがほとんど変わらないのはダンジョンが意思を持っているからだって説もある。人を取り込む為で人間をエネルギーとして吸収する。人の呼吸すらエネルギーとなるという説もある。それって植物みたいな?
ある書物の見解。あながち間違いでないかも。
万物に魔力有りけり。ダンジョンはその摂理が顕著に確認出来るとのこと。万物。それこそ骸はもちろん。料理、調理前の肉、植物、木材に至るまでダンジョンに放置すると吸収される。
時間の程度の差はあれどだ。吸収されないのは生命活動が顕著な物体。又はそれに付随する物品。
なら生命活動が顕著と言われる冒険者がダンジョン1階層に剣を一本放置。十数階へ探索後帰り道に確認。その剣は普通に吸収されずに済んだ。
その後そのまま剣を放置しダンジョンを脱出、次の日。再びダンジョンに入るとその剣は消えてなくなっていたそうだ。
剣には領実験中という札がかけられていたため盗難の可能性はかなり低いと仮定。この実験も十数回行われたが結果はどれも同じ。
その後研究者立会いの下、確認され立証された。
その結果から考察するにダンジョンの吸収を防ぐにはダンジョン内にいる生命活動体、もしくは付随物と判定される必要があると書物に書いてあった。
本当に研究実験って大事なんだね。だって既にギルド?領?がこの法則を悪用。ダンジョンの内部で活動者の登録が行われる。
インクも生命活動の所有者という事になるようだ。より効果を高める為に魔力を込めながら署名すると良いんだってさ。
このダンジョン探索登録。最初は外部でやっていた。それが今までのこの世界での常識だった。現状では王国内限定かもしれないがダンジョンに入ってすぐだ。そこにギルド職員2人と警備兵1人がそれぞれ交代で詰めている。
ダンジョンの入口は伝令役の人達しかいない。
ユウスケは目の前の光景に目を疑う。目の前には激安魔石と剣。そうゴブリンソードだ。
じっとゴブリンソードを見つめ。ゆっくりと拾い上げる。穴だらけの曲刀だ。ショートソード程度の長さしかなく。普通のショートソードと比べて滅茶苦茶軽い。
落とし物、ドロップ品としては珍しい。正に珍品だ。レア品だ。
いや、そうじゃねえ!なんで?剣なんか持って無かったぞ?マジで異世界。さすがダンジョン。物理法則ガン無視か?まあ。死体が残らない時点でお察しだし。良いんだけどさ。
なんでここに来てコレをドロップすんねん!
背嚢の魔石入れ部分はほぼ満載。右肩に槍矢筒を掛ける。槍筒部分は9本で満載。槍筒備え付けの横にある二つの矢筒部分も未使用で満載。
右腰にボーガン。左腰に刀とショートソード。右手には木槍。そして左手には少し魔石が入った麻袋とゴブリンソード。
そう。もう持てないんだ。現在のゴブリンソード買い取り価格1万円。普通なら喜ぶよな?縁起物みたいなもんだし。激安魔石1個の値段と比べりゃ幸運と言っても良いだろう。って思うじゃん?
違うんだよ!コレ鉄製なんだよ。腐っても武器なんだよ。重いんだよ!同程度の激安魔石の質量や重さを集めた時と比べると安過ぎなんだよ!
一度出てもう一度来るって手もあるが、、、
帰るか。出口探さにゃならんし。
とぼとぼと出口探しを始める。途中途中で出会うゴブさん。
ようやく出会えた入口。2層目への。ってちゃうわ!
両手が塞がり既に物は持てない。どうしたもんかと呆然と下へ続く階段を眺めていると誰かがやってくるようだ。
はっはっは~。天は我に味方せり!
「で、マップも持たず作らず迷子ってお兄さん頭大丈夫?」
突然の邂逅。冒険者との。リーダー格の少年に残念な人を見る目で心配されるように言われた。
当然最初は警戒したがギルドで声かけまくっていたので領民冒険者同士という事もあり現在出口まで一緒に連れて行ってもらってます。
出会ったのは7人の子供?成人したて?位の子達だ。男の子3人と女の子4人組。その内の女の子一人はどう見ても未成年。幼女。背中には背嚢ではなく籠付の背負子。歳を聞いてみると幼女(9歳)以外全員15歳(成人)だそうだ。一人怪しい女性、女の子が一人混じっているが永遠の15歳で無い事を信じたい。じゃないとワイの命が。
この子達とワイの武器装備はおんなじ。唯一の違いは刀の有無だ。
「しかも運び屋すら雇わないって。申請すれば紹介もされるのに。」
幼女に説教されたおw
幼女は運び屋らしい。彼女だけボウガンと矢筒とナイフしか装備を持っていない。最悪時には逃げの一手らしい。あと領内成人ではあるが世間(異世界?世界?)一般的には未成年な為、領とギルドの指示で低層までしか探索してはならないと注意されているらしい。決まりではなく注意だ。子供であっても税さえ納めていれば領民で成人。領法でそう決まっている。冒険者って一応自己責任だからな。
色々と注意されながら出口へと向かう。幼女の背負子の中にはゴブリンソード1本。ワイの両手には魔石の入った麻袋とゴブリンソード2本。木槍は1本失ったというか捨てた。
ゴブリンソード2本目をドロップした時には顔が引きつり価格的な話で木槍を捨て、そこからは足技のみでゴブリンに対応。3本目をドロップした瞬間絶望した。
そこからはもう逃げの一手。出会う瞬間フェイント、足払いを駆使して身体強化で一気に逃走。もう涙目で必死に逃走だ。久々にゴブリンから逃げまくったおw
ということで案内賃代わりにゴブリンソードを進呈。いや、マジ持ってると動きにくいんだ。
「ゴブリンソード3本持ってた人初めて見ました。」
少女が珍しそうにワイの両手に有るゴブリンソードを見ている。
「いえ、ソロで3日ほどココで頑張ればそれは可能性的にあり得ます。」
永遠ではないと信じたい少女がそう言いながらワイを見てくる。
ああ、そうさ。だってダンジョンでどれ位経ったかなんてわからねえもん。疲れたら寝る。腹減ったら干し肉齧るで延々とゴブ狩りを繰り返していただけだ。
ま、迷子で2日とか経ってねない!たぶんだけど。




