131.そうじゃねえ
ああ。わかっていたさ。
思考するのが楽しくて。結果アレだろ?
そりゃドヤ顔するわ。
ワイなんかしました?なんて雰囲気でいたんだが。
フェイ様の笑顔の鉄拳がワイの後頭部を襲った。
「某の説明が悪かったのでござろうか。これは訓練だと言ったつもりだったのだが。創意工夫は求めておらんし結果も求めていないと言ったはずなのだが。」
あるぇぇええええ!1日20本って言ったじゃん!
「そうでござるな。が!業務内容1日20本と。訓練で1日20本!同じ意味でござろうか?」
意味ですかい、、、意味。違うよなあ。そりゃ違うさ。でもこんな訓練に意義を見い出せるほどワイ頭良くないねん。20過ぎたら勉強したくないねん。
「水素を使った魔法。実に見事でござる。通常であれば褒め称えるべきところでござろう。だが、この訓練の目的は創意工夫に非ず。魔力操作の向上が目的でござる。最初からお主には言えば良かったの。すまんかった。」
ちくしょう!最初っからそう言えよ!って言いてえ。日本人なら、異世界物に憧れる人なら俺の気持ち分かってもらえると思いたい。
だってそうだろ?日本という世界では使えなかった未知の力。魔法が使えるんだぜ?楽したいじゃん。俺最強したいじゃん。
所謂修行パートって言いたいよ?でも年下の子供達よりも自分の能力は劣っている。明らかに劣っている。
耐えられないんだよ。おっさんにだって自尊心。プライドは有るんだぜ?
文章で頑張った。耐え抜いたって何日もって表現すりゃ一瞬の話だよ。でも俺には耐えられねえんだよ。
結果がこうなるって分かってりゃ出来るかもしれない。でも結果が見えねえじゃねえか。我慢できねえよ。
申し訳ない。熱くなりすぎた。ただ単にガキどもにマウント取りたかった自尊心の暴走だ。
本当に俺が悪い。
後悔していたら、ハタと気づいた事があった。そうだ。まだアレを試してない。アレの方がもしかしたら解にもっとも近い事かもしれない。
「フェイ様の手本一回だけ見せてくれませんかね?」
確信が欲しい。これから自分が進むべき道の確認として。
「あまり具体的な手法は見せない決まりなのだ。が、あまりに見当違いの方へ進まれても時間の無駄なのでな。剣を媒体にした手本なら見せてやるが。」
へえ。媒体なんてあるんだ。
「おなしゃす」
目に魔力を集める。魔力視だ。魔力視って大発明だと思うんだよね。この世の理を自身で理解する可能性がある誰もが使えそうな唯一の使い方。
ってかフェイ様の体内魔力メッチャ濃い!
それはおいとこう。全部丸裸にしたるでえ。グフフ。
男色?BL?知るかボケ!
えっと?剣に魔力を纏わせて、、、違うな。体内魔力で体外魔力を操作して切っ先に集約してるんだ。
、、、やっぱり。
集約させた魔力は他と違い輝いて見えさえする。そして物凄く動いている様に感じる。
オーラブレードってヤツ?技的にそんな感じなんだろうか。
スキル:魔力付与Lv1【任せな!】
落ち着け!まず確証を得るんだ。模倣するんだよ!その為には理解が必要だ!あの言葉が真実なら模倣出来る筈!
フェイ様の一線。魔力の線。曲線であるが集約したなんだろう。かまいたちみたいなブーメランみたいな三日月型の魔力の線が木に飛んでいくのが一瞬だが確認出来た。
間違いない。ロイ様との雑談中に引き出せた。無属性に関する会話。
無属性魔法ってなんで無属性なんですかね?素朴な疑問だった。カラカラと笑いながらロイ様が言っていた。
『無属性とは言うがな。無属性ではない。人が認められる範囲の現象からはみ出れば無属性魔法となるのだよ。そうだな。代表的なのは身体強化だろうか。ユースケは身体強化を属性別けするならなんだい?』
答えられなかった。苦し紛れに熱を帯びる事から火属性と答えてしまった。
『おいおい。強制してるわけじゃないんだ。こじつけを必死に考えなくて良い。火魔法として身体強化出来るならもっと身体強化魔法が進化しているはずだ。他にも念動力、魔力盾、魔力弾があるだろう。あれはどう思う?』
そんなのこっちに来たばっかりの俺に解るかよ!話相手として良い話題が振れたと思ったのに。
『そういう顔するな。そうだな。あえて言うなればアレは力魔法だ。説明は難しいのだが魔法は指向性を持たせる事が出来るのは解るだろう?』
それは理解出来ていた。魔力に属性の色を持たせ指向性を持たせ発動し影響を与える。
『属性を決めずに魔力を放てば無属性。何故なら人はそれを分類出来ぬからなあ。熱を持たず、運動エネルギーさえ無いはずの魔力が力を持っている。しかし魔力が無ければ魔法関連が使えないのも事実。まあ口さがない連中は聖だの闇だの言うがな。君は知らないかも知れないが魔力弾は全ての相手に有効である。不思議に思わないかい?』
補足するなら火耐性があり弱点が水である魔物に水魔法が100で火魔法が1しかダメージが与えられない場合。無属性魔法の魔力弾は50与える事が可能だ。
それはどんな属性であっても変わりはしない。そういう論文を写本していた。覚えていて良かった!、、、良かったおw
なら無属性魔法の概念って何なんだろうね。何に染め上げれば無属性になるんだろうね。
『絶対とは言えないが、私の答えは欲だ。』
欲かあ。そうきたかあ。
『考え無しなれば無欲。が、他の魔法から考えるに力への欲こそが象徴として考えられるのではないだろうか。魔力への力渇望に対する収集。体内魔力であろうが体外魔力への働きかけだろうが。無属性魔法と呼ばれる魔法は力への渇望、力への欲ではないだろうかと私は考えている。』
あの日から無属性魔法を修練している。キーワードは欲。念動力が全ての魔法の根幹。
かもしれない。
そして欲とは力だ。指向性さえ持たせる事をイメージしきれればただの力として威力を発揮する。
最初のイメージはじゃんけんのチョキだ。そしてチョキの指と指の間にはハサミをイメージして鋭角な刃の魔力の塊をイメージ!ただの刃では切れない。なら刃先に振動イメージを追加だ。超振動ブレードや!
指への魔力はそんなに多くないくて良い。刃、むしろ刃と刃の間になる部分だけ集中的に魔力を集めれば良い。
体内魔力なんて関係ない。有るけど。体内魔力の全部を魔力収集の指示魔力へ変換する。
冗談じゃねえ!これヤバイ魔法だよ!自分の魔力の影響範囲以上に魔力操作範囲行くわ。
違う。そもそも大気中の魔力に属性なんか無かったんだ。
浸透性、親和性が高いんだ。
欲の塊を木に向ける。
力が欲しい。
お前だ、お前を切りたい。
へし折りたい。切り裂きたい。
それは第二の自分の手だ。影響範囲は習熟度によるらしい。明確には定義はない。でも何故か自分には解った。届かない。なら一歩、二歩は近づこう。よし届く。
人差し指と中指でチョッキン。
あっけないものだった。あっさりと目の前の木はハサミで切られたかのような傷跡を残しながら真横に倒れた。
「ぬ!修練鍛錬をすっ飛ばして極意でござるか!見事でござる!放出魔法の極意でござる!」
だと思ったぜ。ただの修練なら忙しいフェイ様が付き合う訳がない。最後まで見届ける意味がない。
習熟度?そんなん日々やってりゃ自然と増えていく。
そうじゃねえ。何かを掴ませるのがこの修練なんだ。つまり答えを見つけてそれを見つけ出し証明できればこんなもんよ!
今度こそさせてくれ!ワイ、なんかやっちゃいましたか?




