126.慈悲とは
引き続きダンジョンだよ!
ああ、初ダンジョンさ!
予定狂って何故かダンジョンで書記だよ!
初ダンジョンが書記ってどう思う?
「この者不敬にも貴族の子を宿し出産を試みた者でございます。」
サバート様が罪状を読み上げる。本日最後の受刑者だ。
若い。ってか子供じゃね?いくらなんでも中学?女子高生位の子よね?
「しかし、本当に貴族の子供であれば堕ろす事は死罪といういうのが通例でござる。」
怖えよ!なんだよその法律!貴族やりたい放題じゃん!
「この者の証言では無理やり連れ去られ襲われたと真偽鑑定の結果に偽りはございませんでした。」
はあ?犯罪じゃん!クソ野郎じゃんそのクソ貴族!
「愛人契約を試みたんでござろうなあ。それならば合法と言えばそうなのでござるが。、、、その貴族家から被害届が出ているでござる。」
フェイ様が苦々しげに言っている。
そうね。そうなるよね。すげえ判断に迷うところなんだろうなあ。ってか貴族の矜持って何よ!ノブレス・オブリージュって無いんかい!
「抜け道であるか。」
国王様がボソリと呟いたのを拾う。抜け道って?
「娘。産もうとした理由は何だ?やはり愛人契約の盾か?」
「違います!生まれてくる子に責任はありません!自分一人で育てるつもりでした!」
領主様の冷徹な声に彼女の悲鳴のような釈明。
ああ、見てられんお。
愛人契約ってアレだろ?メグミさんのヤツ。こんなパターンもあるんやなあ。
彼女の言っていた『私は宝くじを引き当てた』ってこういう事なんかあ。貴族も人。色々いるって事かあ。
ただなあ。どう見てもこのままだと彼女の分が悪いようだ。沈黙だ。あれだけ大騒ぎしていた聴衆者達も黙って行方を見守っている。
沈黙の領主様。
やがて領主様が口を開く。
「王国法は王国法であり。貴族法は貴族法である。また領法は領法であり守るべき法である。ヴィル!」
「バーナの領法ではこの場合臨月時の麻痺毒の執行と開腹の執行が通例となっております。生き延びられれば無罪となります。」
鬼だ。臨月時に麻痺毒って。腹切って。、、、あれ?
「ということだ。娘よ。生き延びられれば無罪だぞ。その時は子供に罪はないからなあ。二人で生きられればよいなあ!」
「絶対、絶対に生き延びてみせます!この子も守ってみせる!」
領主様悪代官だおw
領主様を睨む娘っ子。凄まじい闘気だおw
「ッチ!つまらん!逆らった罰だ。おい!腹を切り、子を取り出したら声を上げるまで逆さまにして取り出した子を叩け!不愉快である!本日は閉廷だ!」
娘っ子が泣き叫ぶ。うん。そうなるわな。
そんで歓声を上げる民衆。そうよな。この領の平民が入れる図書館までにある医学書で見れるんだよ。
帝王切開って技術が。
写本したから覚えてる。
内容聞いてて解釈するのに時間かかったわ。遠回しな慈悲だよ。あの年齢でもこの時代出産は命がけだ。最新の技術による無罪放免。
時代的知識で内容を聞いたら麻痺させられて、腹切り開かれて、子供を引きずり出された上に、その子が泣くまで叩く。
うん。クソ恐ろしい刑罰に聞こえるわ。
この領の平民も当然帝王切開の技術を知ってる。貴族の人達も知っているんだろう。ホッとした表情をしている。
でもなあ。あの娘っ子めっちゃ領主様を睨んでる。他の貴族の笑顔がさらに彼女を煽ってるんだろうなあ。
他領出身者の犯罪者で知識の差。貴族恨むなって方が無理。
んで後日。領主様に対する慈悲への後悔で教会入信で狂信者化までがワンセット。この通例ってか判例写本に有ったわ。
写本の後半がサバート様と教会だった時点でお察しやで?医学書関連全部教会とサバート様が編纂に関わっとる。追加でメグミさん。
あの姉ちゃん。毒物と解毒、疫病と抗体関連の刑執行で名前が載ってた。ペニシリンとか頭おかしいと思ったわ。
悪名轟く領主様。どう聞いても気狂いだよなあ。分かってくれる領民や貴族がいる。それに国で一番偉い王様も味方。なら良いかとも思うけど。
ワイも男やしなあ。なんとか手助け出来ないかなあ。
なんといっても生き様が格好良い。
俺に付いて来いって感じがさあ。
わかるだろ?ここまでされてさ。色々教えられて体験させられてさ。
禁書まで見せられてさ。命がけだけど。
刻印術式が例の鑑定道具とプレート、そして紙幣の根幹だというのは既に理解している。
フハハハハハハ。
私に見抜けぬ言語は無いのだよ!
ユニークスキル:言語理解【チョロイチョロイ】
:言語翻訳【カミノイコウナリ】
感謝致します!ユニークスキル様!
結論。どうにもなんねえ。領内で生きる限り領主様の威光、権力、信頼度は絶対。全てが領主様の名において許可され信頼され執行されている。
あの針をぶっ刺す行為も含めてだ。
本物のカリスマだ。
全て計算された上で成り立っている。
なあ。ワイどないしたらええんやろ。




