100.大魔法擬き
おっさん、おっさん。気付いたんだけどさ。
聞きたくないな。
文献にある大魔法の使用地って書いてないけどさ。大魔法の影響って台地が抉れた。都市が滅んだ。海が大荒れした。台風が襲った。って全てが外の話なんよ。
ん?外?どういうことだ?
ダメージのあった場所は屋外じゃん?外じゃん?地下ではないじゃん?
ああ、なるほど。そうだな。
術者が使った使用地までの記述はないけど外だと仮定する。そうすると太陽光の電池板?よくわからんけど変換効率4割であの出力得られるって話あるわけじゃん?
、、、またとんでもないものを。
アニメだっけ?ソー〇レイとかって兵器とか。要は鏡とか光の合成?レンズじゃん。
そうなるな。言いたいことはわかったんだが。
エネルギー波って垂れ流しだから弱いと思うんよ。一気に圧縮して球にした方が強いんじぇね?
それあまりにも強力だった場合余波でこっちが被害くわないか?
、、、せやな。
というわけで私は帰ってきた!!
やるんかい!
再び使用人達が準備してくれる。
バカンスなんかな。
ジュースうま~。
海水浴にはピッタリの天気だな。曇りだけど。
、、、砂浜が広がってるな。
あ~。本当に良い実験日和だ。曇りだけど。
現実を見ろ。別に責めちゃいない。砂浜の中にある岩場。不格好じゃないかって話だ。
ポツンと岩場。不格好っちゃ不格好だけど。あれはアレで風情がある。
なら良いが。で?余波の対策は?
、、、無い。指向性を持たせる事が可能かもわからない。
お前はアホだなあ。おもしろいから良いけどな。
だから可能な限り遠くの海中を標的とする。
津波ってのがあってな。
この防波堤だっけ?超える位?
出力次第だろうな。加減も出来ん。大魔法の威力がどの程度かもわからん。
オーディエンスからいきなり反対コールが上がったんですが。
津波が発生したとして被害の規模が想像以上ならお前の塩田全滅するぞ?
そんなんやり直せばいいじゃんか。つうか珍しいな俺が失敗して悲鳴を上げるのを望むお前らなのに、、、お前以外の悲鳴を聞いても嬉しくない。津波なめんなって。なめちゃいないけどさあ。お前らの物語にだって大魔法の大津波ってあるじゃんよ。
そうだなあ。たぶん実害の酷さを知ってるってのもあるがそういう大魔法を使う時って巨大な敵を倒す事に使われるからじゃねえのか。悪を倒す。正義の行為って事で。試し打ちみたいなお遊び感覚でしていいことじゃないって話だろう。
無茶苦茶な話だなあ。試し打ちせずにどうやって威力や破壊規模を調べるんだよ。イメージだけでどうにかなるなんてありえないだろうに。
そうだな。だから俺も実験自体には賛成なんだが。津波だけは被害を予想出来んからなあ。他に威力や規模の確認出来る方法を考えてはいるんだが。
いいじゃんか。大魔法使えるかも知れないんだから。文献にもあったやん。その威力は地を割り、海を割り、空をも割るって。
だからそれほどの威力のもんって考えるとだな。前段階の魔法だとしても似たような威力出てみろ。地面は論外。海は津波。空は、、、空は?
空は、、、どんな被害だっけ?、、、空割ってみる?
雲か。丁度良いっちゃあ丁度良いが。他に対象ねえしなあ。
よっしゃ。やったるわ。えっと。何するんだっけ?
ああ。太陽光のエネルギーを集めてだな。
、、、ダメじゃん。曇りじゃん。実験不可日和じゃん。
そうだな。ん?いけるんじぇねえか?太陽光が届いていないなら夜だろう?今明るいじゃねえか。
ああ、なるほど、結局自分の周りの太陽光のエネルギーを集めて変換してだからいけるんじゃねって話ね。でもこれだけの明るさしかないんなら貧弱そう。心配する必要なくね?ってか太陽光のエネルギー変換実験の意味なくね?
確かに。これじゃあ検証結果が不十分になる可能性が高いな。
、、、おお、そうだ。水蒸気爆発魔法、ようは気化魔法で一部の雲に穴あけりゃあ良いんじゃねえか?
良いねえ。ただ雲まで届くかな。マジックボールで飛ばすとして。射程がなあ。とりあえずマジックボール撃ってみるか。
指先に魔力を集中。中身は空洞を意識して。なるべく海側の方が良いよな。
くらえ雲ごときが!
マジックボールが空目掛けて飛んでいく。
届いたか?
「届きませんでしたな。」
くそ、フェイ見てたのかよ。俺より遠見の練度高いからなこいつ。まあ、俺、今、遠目は使ってませんでしたし。実は遠目、遠見の練度フェイに勝ってるかもしれませんし。
「どの辺りで消えた?」
「そうですなあ。雲まであとここから10分の1程度でござるかな。」
10分の1って気化魔法の範囲に入るんかねえ。
微妙だな。とりあえずやってみればどうだ?
了解っと。水魔法で水を作り出す。その水を障壁で囲って、圧縮!圧縮!!
射出準備完了。っつうか。今にも魔力障壁が破られそう。
とっとと上空向けて撃ち放つべし!人差し指に魔力を追加で込めて。、、、10分の1がさっき届かなかったんだからこっちもさらに魔力込めてっと。
ぶっ飛べ雨雲よ!
エネルギー弾が上空へ放たれる。
それは雲へ届くか届かないかの距離だった。
ボフッ!
なんとも間抜けな響きだ。
キレイに円形を描いて雲に穴が開いた。
同時に日の光が差し込んでくる。一条の光が海面を照らした。
耳元でヒュッと風の動きが感じ取れた次の瞬間。
んなああああぁぁぁ!!!!!
突然の衝撃波が一帯を襲ってきた。
気化爆発を大魔法じゃないなんて言ってすみませんでした。
やべえ、あの魔法。やっちまった。
結論だけ言おう。
雲の一部は穴が開くほど確かに吹き飛んだ。
問題は衝撃波だ。
簡単に言うとこちら側も吹き飛んだ。俺だけじゃない。衝撃波は天だけでなく地上をも襲いバカンス用具一式は吹き飛び、従者が吹き飛ばされてそこかしこの木に摑まってなんとか難を逃れたが、まさかの威力だった。
曇って最低5kmは上空に発生するんだ。その距離からの衝撃波。届くと思わんやん。って距離はともかく空なんか遠いから舐めてたわけだ。俺だけじゃなくてここにいる全員が。
え?現在の俺の状況?フェイに片腕で抱き上げられフェイが木に摑まっている状況。
「これが大魔法。流石の威力でござるな。」
フェイ、違うんだ。これ、中級魔法みたいな。言わば大魔法の準備段階。
あれ?でも威力的には大魔法なような。




