表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/150

10.イバーナイバーナ

イバーナ領の隣にあるイバーナ領


うん何を言っているのかわからないって?


しょうがないじゃんそういうものなんだもの。









「兄上!金ください!」


「判った。やるからこの紙に書いてくれ。」


まさかの言い訳不要。サイン付き小切手というやつだ。


悪童ロイ君の計画はランナートと打ち合わせ済。投資するから優遇してよねって事だ。




出発一週間前。ロイの周囲には子供10人。大人20人。全てロイの部下であり弟子だ。


そう弟子なのだ。ロイが何かする。あの侯爵家の打ち合わせで集まった貴族はその何かに賭けた。


勝負に打って出たのだ。スペアのスペアのって感じの5男やら親類に従者を付けてロイの従士として預ける。


利権に食い込み易くもなるし情報も手に入れやすいのだ。


だがロイもランナートも黙っていない。悪童全開で金寄越せだ。


具体的には子弟1人につき大金貨100枚で面倒を見る。


それは高過ぎとか色々有ったが結果それぞれ武具一式と馬と消耗品、大金貨10枚で手を打ったのだ。


新天地に自分の子供投資するのにたったそれっぽっちしか支度金用意しないの?子供可愛くないの?


成功したら利権だけ持っていくの?子供は捨て駒?


遠回しに煽りに煽った悪童二人、支度金ゲットだぜ!と満面の笑み。




部下に指示を出して物資をイバーナ領内で買い漁る。


岩塩、麦、作物の苗等の食料関連。衣服、武器、大工道具に鉄製農耕器具。


生きた牛100頭に豚100頭、鳥100羽。全てランナートの指示の下、ロイ出発用に商人に用意させ済みだ。


イバーナ領内で支度金を使う。しかも全額使い切っての今後商人によるロイの領への輸送契約付きだ。


悪童と神童たる所以だ。イバーナに金を落としたという事実。


商人経由で確実に金使いましたよって証拠付きの結託。談合ともいう。必要経費だから質が悪い。


突っ込みどころが無いのだ。部下達は疑うことなく確保済みの商品を買付に走り回る。


次いでに労働力の確保。仕事欲しい人いない?金は払うよ?今一緒に行けば魔物襲撃の心配ないよ。


宣伝しまくる。




一週間の準備期間を経てイバーナの隣領イバーナへ向かう。


しょうがないじゃん。家名イバーナなんだもの。騙してないよ。領都イバーナでのお仕事には変わらないもの。


領主が住む家がある所。それが領都じゃん。不安そうな顔するなよ。金は払うんだからさ。


隣領イバーナまで3週間。移動するのはロイと従士が1人、子弟従士10人とその従者20人意味分からんな。


と領民予定平民100名近くの大移動だ。領民の過半数が子供。実は領内の孤児ほぼ全部貰い受けたのだ。


誘い文句は領都イバーナでのお仕事です。詐欺じゃないよ。何度も言うけど嘘言ってないもん。


本来荷馬車で2週間かからずたどり着く。


しかし予定が3週間なのは平民の足が牛車だからだ。


牛に荷車を引かせ、その周りを領民予定者が交代で荷車を引かない他の家畜を先導する。


従者達が馬でさらにその周りをぐるぐる護衛役。


牧畜の訓練も兼ねている。馬車で?荷運びなら牛の方が力あるに決まってるじゃん。別に急がないし。


次いでに領民を荷車で運べば体力の消耗も少ない。初めて荷馬車に乗ったと好評だ。馬じゃないんだけどな。


宿泊は天幕。従士達の持参金の内の一つ。軍用天幕だ。


頑丈だし広いし転用できるし。しばらくの家に出来る。この天幕を張る訓練で更に時間がかかる。


宿?移動先には家もないのに?野宿より野営のがマシだろ。その辺を毛布で寝転がれなんて体力の無駄。










ようやっと山越え完了。


「これが新天地ですかロイ様」


従士となった少年ヴィル君8才。貴族って幼児虐待当たり前なのかな。ロイの年齢に合わせたらしいが。凄く不安そう。


平原の向こうにチョロっと村が見え、その奥に大森林。村3つ人工全てで500人未満。貧乏まっしぐら。


「そうだね~。地獄となるか天国となるかは僕ら次第。」


もっとも勝算有るけどね。口の中で言葉を転がせる。


「ちょっと行った先の平原中間に丘あるだろ?そこに天幕張るよ~。次いでに各村へ村長出向命令よろしく。サバート。」


サバート。従士最年長16才。年齢合わせるんじゃなかったんかい。


まあ、ある程度の年齢の人がいた方が楽だけど。


数人引き連れて村へ向かってもらう。挨拶大事。でも見栄も大事。貴族めんどくさい。


てめえが来いやってやつです。はあ。




森の北に村、その更に北には丘。丘の少し離れた所に川。そう川があるのだ。使い道は色々有る。


丘の上に自分のと家臣用天幕が立ち並び、丘の下には領民予定者の天幕が並ぶ。


まずは事前の打ち合わせ通りに事を進める。


木材を切り出し杭を作り平原に大人を使って杭打ちさせる。


杭の間を子供に縄を持たせて走らせる。大人が取り付ける。


放牧予定地だ。すぐには終わらないけど。


女性や女の子は炊き出しや細かい工作品作りの手伝いだ。取り敢えずそれだけで良い。自分は村長達と面会。


「自分がここの領主となったロイナート・イバーナです。」


言うこと聞けよ。貴族様だぞ。って圧迫面接をやって終わり。


傲慢?悪領主?評判なんて知らない。やりたいようにやる。




「そして僕達は木こりと土木工事ですか。」


ヴィル君不満そう。


「違うよ。魔力鍛錬兼南方開発だよ。当然僕もやるけど。」


魔力圧縮実験の話をすると子弟達が目を輝かせ始める。


どこでも何でも魔法を放って良いわけではない。


魔法使用可の施設なり場所であるかの確認。その土地の所有者の許可はあるのか。


貴族であれば理由は何かという建前が必要なのだ。


その訓練という名分で切り出しを行う。切り出した材料は家建築の資材となる。


「平民の家からですか?」


これも不満そう。


「家の建築技術なんて現状未熟、失敗当たり前なんだよ?技術上げてから作った方が良い物出来るに決まってる。」


丘の上から下々見渡して当分我慢しろって話ですわ。


作ろうとしているのは木造家屋。ノコ、ノミ、カンナを駆使して木を組み合わせる技術だ。


石造りなんて金かかるし釘大量なんて勿体ない。まだ技術も金も足りないんだよ。


「貯水池作りなんて、本当にいけますかね。」


ヴィル君は本当に不安そうだな。元侯爵子息かもしれないけど今の君は部下なの。言うこと聞け。


「魔力と人力、両方の力で取り敢えずやる。村の連中にも声かける。金は有るのだよ。」


無料で家?無料で飯?そんな事する訳がない。


証文で全部ロイへの借金。給料天引きだよ。


サイン?読み書き出来ない計算できないのが平民なのだ。そんなの口頭でだまくらかして血判ぽんだ。


借金スタートだけどいずれ金貯まるよ。欲しくなった言ってね貯まってたら精算するから。


そう貯まってたらね。いつ貯まるかは知らんけど。


商人もいないのに金なんて手持ちしても意味ないじゃん。


各村も同じ。全部こっちが持ち出しだし。商人からの買付もこっちがやる。


完全に領民の生命線を抑える。言う事聞かなきゃ止めるよ死んじゃうよって脅しだ。


元々三つの村も連れてきた領民も金無いけど。






悪童ロイ君の口八丁手八丁により南方開拓は進む。牛歩の如くだけど。


従士達の行動を簡単に手玉に取った。


魔力鍛錬と称した木こり事業。風魔法ですっぱりと切り。領民が牛車で木材牽引。


丘近くまで運んで木材の製材。ロイ設計の家が次々と建てられる。


治水事業も同じ。ある程度領民に穴を掘らせて土魔法で固める訓練。


領民と貴族子弟を使った開発は順調すぎるほどだった。




だが、ロイはおもしろくない。予想出来た事が予想通りに進む。そこから先は誰でも出来る事だ。


考えたロイ君。久しぶりのおっさん先生を召喚。思い出せ思い出せ。役に立て。


見つけたとばかりにニンマリする。水車開発だ。だがおっさん知識中途半端。でもそれが良い。


それでこそ役立たずのおっさんだ。面白い。







思いついたら即実行。領民を使い川辺に小屋を立てさせる。木工技術を駆使し早くも完成!


な訳がなかった。水は掬わない、回らない。板は外れる。軸が折れる。終いには小屋ごと倒壊する。


何が悪いんだ。こうすれば。なんでこうなる。


開発は困難を極め完成に一ヶ月を要した。




完成した水車を見上げニンマリするロイ。


「で、これ何の役に立つんです?」


そんなの決まってるだろ?粉引いたり水を汲み上げたり。ん?今の領に必要かって?


基本輸入食の小麦は製粉済。納税用の麦は実のまま輸出。在庫なんて茹でて粥だな。水は井戸だしな。




必要、無いな。ヴィル君厳しいな。待て。今考えるから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ