防具一新
翌日、朝目が覚めた圭祐はシャワーで目を覚ましたあとホテルを後にする。
ホテルから歩いて数分でダンジョン・シーカー協会へ到着する。
協会のなかへ入った圭祐は買取所へ行き、空いていた受付へと足を進める。
「どのようなご用件でしょうか?」
「昨日買取頼んでた田中だけど、どうなったかな。」
「少々お待ちください。」
受付の女性に買取の状況を確認すると、女性は1度裏へ下がる。
回りにフラフラと視線を送り観察しながら待つこと数分、玲香が書類を持って圭祐の元へとやって来た。
「田中さん、おはようございます。お待たせしました。こちら買取の内訳になります。」
そう言って玲香に手渡された書類を読むと、怖いくらいの金額が書かれていた。
「一応説明させて頂きますね。下級の魔石が1611個ございました。こちらはお安いですが1つ100円となり161,100円で買取させて頂きます。続いて中級の魔石が1148個ございました。……こちらをここまで集める事が出来る方なんていませんよ…。こちら1つ120,00円の買取となり、13,788,000円の買取になります。」
「…え?」
「さらにオーガの角に地竜の爪。……はぁ…。オーガの角31本は1本200,000円で買取となり、6,200,000円。
地竜の爪68本は1本140,000円で買取となり、15,720,000円。合計35,869,100円となりました。」
「ま、マジかっ!!たった2ヶ月だぞ!?」
「正直ドン引きです。それとこちらお返ししますね。」
そう言って玲香からライセンスを手渡される。
「この数の魔物を討伐されてますので、ブロンズの1級へと等級があがっております。シルバーへランクを上げる試験は2週間に1回。近いのは今週の日曜日にありますけど、受けますか?」
「なんかいいことあるの?」
「より難易度の高いダンジョンへ挑戦する権利が受けられます。そしてさらに強力な武器や防具の購入の権利が与えられます。」
「え?防具って外でいいの売ってるじゃん。」
「あれらもたしかにうまく作られていますけど…ダンジョンのモンスターの素材を使って作られてますし、他の革で作るよりは性能がいいです。ただ、協会で作られている専用の装備はモンスターの素材を研究することで、より性能を高めた物になっています。技術力が違うんです。」
「え、知らんかったけど。」
「冊子の始めに記載ありますけど…。え、まさか開いてもないんですか?」
「……。」
「え、ていうかまさかまともな防具なしで今までダンジョンへ潜っていたんですか!?」
ジーと厳しい眼差しを向ける玲香からの視線を受けながらその場を後にし、教えてもらった装備販売所へと足を運ぶ。
装備販売所は協会のすぐ隣にあった。
スーパーマケットほどの大きさのその場所は、中へ入ると所狭しと装備が並べられていた。
記載された値段を見ると数十万円〜高いもので数百万円であった。
(あのハゲの店…まさかぼったくろうとしてたんじゃないだろうな!?)
「いらっしゃいませ!なにかお探しですか?」
圭祐が防具を迷っていると、協会職員の制服を着た男性店員が声を掛けてきた。
「あ〜、防具を買いたいんだけど、種類が多くて何を買えばいいか分からないんだよね。」
「まあそうですよね!」
そう言い店の奥にある受付へ案内される。
案内された席へ着くと、向かいに案内をしてくれた店員がタブレットを持ってきて座る。
「お待たせ致しました。防具をお探しでよろしかったですか?」
「うん。」
「ではまずライセンスカードをお借りしてもよろしいですか?」
そう言われた圭祐はポケットから出し、店員へ渡す。
ライセンスを受け取った店員は、確認すると圭祐へライセンスを返す。
「ありがとうございます。ランクによって販売できる防具の素材がありますので、ブロンズの1級ですとこちらになります。」
そう言うとタブレットに防具がずらっと表示される。
「多いなあ…。」
「まあ、ここから戦い方や予算で絞っていきましょうか。ではまず予算をお聞きしても?」
防具は大切だよなあ…今貰った報酬を少し残して使い切ってしまおうか。
「3000万かな」
「3000万!?失礼ですがお金はお持ちですか?」
「あー、今貰ったからあるよ。」
そう言うとライセンスをもう一度店員に渡す。
ダンジョン・シーカーライセンスには、協会から受け取った報酬を記録できる機能が備わっている。さらにキャッシュ機能も備わっており、ライセンスカードで支払いをすることも可能だ。
ライセンスを協会専用タブレットで読み込み、報酬の履歴を確認した店員は驚く。
「な、1回で3500万!?ど、どれだけ持ち込んだんですか……!」
「2ヶ月分!」
「2ヶ月でも普通そこまでいきませんよっ!ていうか2ヶ月分を一気に持ち込むってどうしてそんなに溜め込んじゃったんですか!ダンジョンを出てすぐに買取所があるでしょう!?」
「まあまあ…」
そう言って店員を落ち着かせる圭祐。
落ち着いた店員は「失礼しました」と行った後、再び防具を表示させる。
「まあ、そこまでの査定がつく素材ということはなかなか深くまで潜られていることでしょうし、今ご用意させて頂ける最高品質のものをご用意させて頂きます。ただ、ブロンズランクですと、500万円ほどが限度になりますのでご了承ください。」
「別に金使いたい訳じゃないんだよ。」
「あとは戦い方によりますけど、重さはあるが防御性能の高い全身鎧にするか、軽さを重視し、動きを阻害しないよう局所に金属も使用した革鎧とでしたらどちらがよろしいですか?」
「それなら革鎧だな!」
「ではご用意させて頂きますね。」
そう言うと、店員は店の裏へ防具を取りに行った。
あぁそりゃそうか、いいものなんかは表に出してないよなあ。と考えていると戻ってきた。
「こちらになります。試着してみて下さい。」
試着室へ行き、防具を合わせてみる。
「おぉ!カッコイイ!!」
全体的にグレーのカラー。胸など急所になりそうな位置には金属のスタッズが打ち込まれており厳しい印象も受ける。
篭手にも動きを阻害しない程度のスタッズが打ち込まれモンスターからの攻撃を十分に防ぐことができるだろう。さらに掌側は、滑りにくい加工がされており、握りやすく、今までよりも攻撃の威力が上がりそうである。
「いいね!動きやすいし、今まで以上に狩りが捗りそうだ!」
「そうでしょう!メインにオークの革を使用し、さらに局所にダンジョン鉱石を加工したスタッズを打ち込んでいますので敵モンスターからの攻撃を十分に対応出来ます。魔法には物理攻撃に比べると少し弱いですが、それでもある程度軽減はされます。」
「いいね!」
「さらにブーツはシュッツァーワームというモンスターから採取される高粘度で弾力性の高い糸を混ぜ込んだインソールを使用しているため地面をより強く掴め、スピードと攻撃力の上昇も見込めます!」
「買った!!!」
「毎度あり〜!」
セールストークに一瞬で心を持っていかれた圭祐はライセンスカードで即時支払いを済ませ、浮かれた彼はそのままの格好で帰路へ着く。
ダンジョン・シーカー人口が増え、そんな格好をしていても案外目立たないんだなあと周りを見て思う。
防具を一新して、見た目もやっとダンジョン・シーカーらしくなった。
さあ、試験までの数日。さらに強くなってハゲゴブリンの度肝を抜いてやろうか!!
目先のストーリーが、どうしても思うように進まない…。ぴえん




