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ダンジョン資源買取所

優奈と別れてから2ヶ月が経った。

ダンジョンから帰ってきた圭祐は、ダンジョンから持ち帰った大量のモンスターの魔石の入った袋を、魔石入れと化している木箱に投げ入れる。


「かなり溜まってきたな……。」


この2ヶ月間で何度もダンジョンへ潜り、大量のモンスターを討伐した。

時には泊り込みでダンジョンへ潜り、疲れ果てるまでモンスターと戦い続けた。

その努力の結晶こそ、この木箱のなかの大量の魔石である。


【ダンジョン内転移】があるのだから帰ればいいと思われるかもしれないが、案外このスキルは使いにくい。

まず、戦闘中の使用は出来ない。

圭祐がその事実を知った時、戦闘中に敵の後ろへ転移して背後から攻撃なんかできれば戦いやすいんだけどな…。と嘆いたものだ。

さらに転移する者の行った所にしか転移出来ないのである。この【ダンジョン内転移】は触れているものは一緒に転移することは出来る。しかし、仮にパーティメンバーを一緒に転移させようとした時、一緒に転移する相手が行ったことのないフロアにしか転移することが出来ない。

そして各階層の階段付近でしか使用できない。

〈名古屋ダンジョン〉のような1階層辺りの面積が広くないダンジョンであれば毎日帰ることも可能かもしれないが、この押し入れのダンジョンはあそこに比べて階層辺りの面積が広いのである。

さらに、階を下るにつれ1フロアの面積も広くなった。

圭祐は現在地下25階層まで進んでいるが、17階層を踏破するのに10日間の日にちを要した。

そうなると一々ダンジョン外へ出るより中で寝泊まりする方が攻略は断然捗るのである。




帰って来たその日はダンジョンでの疲れをゆっくりと癒した圭祐は、次の日、魔石と少しの素材やアイテムを車に積みダンジョン・シーカー協会へ向かった。


先日、25階層の階段を見つけた圭祐は、やっと帰れると気を緩ませたところを24階層に現れる巨大ムカデに襲われ、攻撃を受けてしまう。

幸いにも傷口はポーションで塞ぐことは出来たが、優奈に買ってもらったレザーアーマーは酷く損傷を受け、防具としての力を発揮することは出来そうにない。

そこで、この貯めに貯めた魔石などを売り払い新しい装備を整えようと考えたのである。





2ヶ月振りのダンジョン・シーカー協会は相変わらず大勢の人で賑わっていた。

なんでも第3期のダンジョン・シーカーの募集が始まったようで一時は落ち着いたというこのダンジョン・シーカー協会本部だが、再びライセンス目当てに大量の人が押し寄せているとのことであった。



圭祐は新規受付に比べると落ち着いているダンジョン資源買取所の受付へ並ぶ。

各地のダンジョンへバラけていった為か、現在ダンジョン・シーカーとして活躍しているはずの人数の割には待機列は短くすぐに圭祐の順番が回ってきた。

圭祐は空いた受付へ向かうと、そこで居たのは見知った人物であった。


「おお、玲香さん!おひさ〜!」

「……田中さん…その木箱なんですか…?」

「いやー、ちょっとそろそろ買い取ってもらおうと思って〜」


そう言って両手で抱えていた木箱を受付台の上に置く。

台へ置いた時のドンッという音から相当な重さであることを感じ取った玲香は顔を引き攣らせる。


「いや、あの…ダンジョンへ潜られているのは知っていましたのでなかなか魔石も素材も、持ってこないなーとは思っていたんです。他からもそんな話も聞かなかったですし。」

「うん、ちょっとダンジョン攻略に必死すぎて!」

「こんな量……。はあ、ちょっと中失礼しますね。……っ!!」


木箱の中の袋を持った瞬間のジャラッという音で目を見開いた玲香はその袋を開け中身を見て固まる。


「…あれ?玲香さん?」

「………もしかしてこれ、全部魔石ですか…?」

「うん」

「…この量をおひとりで?」

「うん」

「一体どうすれば2ヶ月でこんなことに…」

「そりゃいっぱい頑張ったよ!玲香さん褒めて!」

「……この人アホや…。」


そう言って天を仰ぐ。

そもそもダンジョン・シーカーが1人でダンジョンへ潜ることは少ない。

大抵がパーティを組み、それでも1日に30〜50体ほどのモンスターを討伐して帰還し、素材や魔石を買取所へ持ってくる。

それを圭祐は1人でダンジョンへ潜り、1日50体〜 多ければ100体以上のモンスターを討伐する。

理由の1つとして他のダンジョン・シーカーのいない自宅の押し入れダンジョンであるため、モンスターの奪い合いが起きないということもあるが、なにより圭祐の1日に何度もモンスターと命の奪い合いを出来るその心の強さこそがこの状況を作った1番の原因であろう。


「あのですね、魔石の買取とはいえこの量は流石にかなりの時間が掛かりますよ!そして職員の負担も大きいです!次からはもう少し頻繁に持ってくるようにして下さい!分かりました?!」

「は、はい…。」


魔石を買い取る際、担当職員が一つ一つを鑑定し、魔石に保有される魔力を計測。それを元に査定金額を出しているのである。


「それにしてもこんな大きな魔石あまり見ることないですよ。今何階層まで進みました?」

「昨日25階層に到達したよ。」

「…っ!あのダンジョンのソロで25階層……いくらなんでも無茶し過ぎです!もう少し自分のお身体を大切にして下さい!…全然来ないから心配してたんですよ…?」

「…………は、はい///」


突然の玲香のデレに本気で照れてしまう圭祐。

その後、魔石とさらに追加で出したモンスター素材の査定には今からなら急いでも明日になると言われた圭祐は協会を後にする。

すぐに買取をして貰えると思っていた圭祐は、急な空き時間をどう過ごそうと思案する。

素材等の査定を待ってる間、とりあえず目星を付けておこうと、防具屋へ足を運んだ。



「いらっしゃいませ!どんな防具をお探しですか?」


そういって声を掛けてきたのは頭の寂しい小太りのおじさんであった。

咄嗟に(ハゲゴブリンっ!)と叫びそうになったが顔が優しそうなので辞めておいた。伊藤源治のせいでついついゴブリンに引っ張られそうになる。


「前のが壊れちゃったんだけどなんかいいのあるかな?」

「うーん、失礼ですが、レベルはおいくつですか?」

「42だ。」

「っ!?よ、42!? 失礼しました!それ程の方でしたらこちらなんていかがでしょう?」


そう言って見せられたものは店のガラスケースに飾られた白い全身鎧。お値段1億円。


「…たっかっ!…しかも動きにくそう…却下。」

「高い…動きにくそうですか…うーん、ではこちらなんてどうでしょう?」


次に見せられた物は黒をベースに赤いラインの入った鎧。お値段3500万円。


「たっけえ……でもカッコイイな。」

「そうでしょうそうでしょう。こちらオーガの皮を魔法を使用し、特別な加工を施したもので、とても固く、そして見た目の割に軽く、さらには魔法すら少々は弾く性能に仕立てました。いかがです?」

「ま、まあ、ほかも見せて?」


そう言ってほかの防具もみせてもらう。

その後も店員の熱いセールストークは続き、店を出た時には夕食時となっていた。

1度家へ帰る予定の圭祐であったが、また明日もくるの面倒だなーと思い、有名チェーン店で牛丼を食べたあと適当なホテルへ泊まることにした。

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