【魔導】
〔魔導師〕へとクラスアップを遂げた優奈の力を試すため、2人はモンスターは探す。
「なんかね、この【魔導】ってスキル、なんでも出来そうな気もするんだけど、上手いこと行かないんだよね…。」
「まあその辺りは練習あるのみだな〜」
「うん…そうだね!」
ダンジョンを探索しながらも優奈は魔導に慣れるため、それを発動し、身体の周囲に魔素を集め、圧縮と展開を繰り返す。
薄暗いダンジョンの中、自身の周囲を淡く光らせ微笑む優奈に「きれいな…」と圭祐は呟くように漏らす。
「えっ、わたし?」
「おんおん」
「なんだよ〜」
そう言って笑いながら話していると、モンスターの気配を感知した優奈は、突然顔を引締め臨戦態勢へと入る。
それを見て圭祐は はて と思う。
「どうした優奈?」
「モンスターが近くにいる…」
「え…」
(【気配感知】をLv 7まで上げている俺より感知が早いだと…っ! こいつはどれだけチートなんだよっ…!)
それに倣い、圭祐も自身の腰に提げた〔黒の小太刀〕を抜き右手に構える。
少し進むと圭祐もその気配を感知する。
陰に隠れダンジョンウルフの様子を見る。ダンジョンウルフはこちらに気付いている様子はなく、ダンジョンに生えていたキノコを食べている。
圭祐は優奈へ杖を返し、小声で話す。
『優奈、今度はあいつを魔導だけで倒してみろ。』
『了解。』
優奈は周囲の魔素を集め圧縮し、ダンジョンウルフへ放つ。
放たれた魔導はダンジョンウルフを吹き飛ばし壁へと激突させる。
圭祐はすぐに鑑定をかける。
(HPが残り10/38か……【ファイアーボール】より少し強いくらいだな。だが、それをMPの消費なしで無制限に打てるとなると…やっぱりチートだな…。)
よろよろと立ち上がったダンジョンウルフは、こちらの存在に気付くと猛スピードで襲いかかってくる。
圭祐はその攻撃を受け止めるため優奈の前に出ようとするも、優奈に阻まれる。
「圭祐、見てて。」
そう言って優奈は意識を集中させると、優奈の前方に淡い光が集まる。その光は飛びかかろうとしたダンジョンウルフの攻撃を阻んだ。
3度目のダンジョンウルフの攻撃で四散する光の盾だったが、その時には魔素の圧縮を終えた優奈がダンジョンウルフへ魔導を放つ。
吹き飛び息絶えたダンジョンウルフを見て、圭祐へどやっと振り向く。
「…いや、驚いた。これは…強いな……」
「へへん、でしょ?圭祐のことも守ってあげられるね!」
「バカか、俺が守ってもらわないといけないレベルの敵は優奈にはまだまだ早いわ!」
そう言って優奈の頭をぺちっと叩く。
そしてそのまま頭を撫でる。
「でも、強くなったね。これでさらに魔導を磨いていけば、それなりのお金稼げるようになるんじゃない?お父さんの治療費も、弟の学費も近いうちに貯まるさ!」
そう言って、圭祐は集めていた、優奈のレベルを上げるために倒し続けたモンスターたちの魔石を手渡す。
「これだけあったら買ってもらった装備の代金くらいにはなる。返しておくよ。優奈が倒したモンスターのだけど。」
「ううん、圭祐がいないと倒せなかったよ…。……圭祐行っちゃうの?」
「俺に着いてきたら優奈死んじゃうよ?怖いんじゃないの?」
「……そ、そうだけど…」
そう言って悲しげな顔をする優奈。
そんな優奈の表情をみて、くすっと笑う。
「俺が優奈を守ってあげれるくらい強くなったら迎えに行ってあげるからね。それまでに優奈はもうちょっと強くなってて」
「…っ!うん!その時はわたしが圭祐を守ってあげれるくらい強くなってるよ!」
「アホか!俺はまだ変身を2回残してる状態なんだぞ。最終形態の俺は腕が5本になるんだぞ!」
「なんで奇数なの!」
「戦いながらも中指立てたり、頭を撫でてあげないとダメだろ!」
「腕の無駄遣いっ!?」
そして2人は顔を見合わせ笑い合う。
「まあ、帰ろっか」
「うん!」
そう言ってダンジョンを出た2人は再会を約束し別れる。
帰路に着いた圭祐は魔導について考える。
(ダンジョン内に充満する魔素を導く魔導。魔法は決められた手順を踏むことで魔素が反応。発動されることで定められた現象を起こすものとすると、それに対して魔導はその魔素そのものを導き現象を起こす…。)
魔法とは違い、魔素を直接導く魔導。その強さの片鱗を見せつけられた圭祐は帰り道にダンジョン雑貨用品を買い漁る。
家へと帰り着いた圭祐は買ったダンジョン雑貨をバックパックへ詰め込み押し入れのダンジョンへ向かう。
家の中には調査の為に集まったダンジョン・シーカー協会の職員が集まっており、その中にいた玲香に声を掛けられた。
「あ、田中さんおかえりなさい。どこ行かれるんですか?」
「おー、玲香さんただいま。ダンジョン潜ってくる。」
「ダメですよ!調査が終わるまでは危険過ぎます!」
「大丈夫〜」
「まだ危険度も把握出来てないんです!死んじゃうことだってあるんですよ?」
「…………いい」
「…え?」
「あんなもん見せられて、ただそれを羨んでるだけの人間になるくらいなら死んでもいい。」
そう言い放つ彼の眼には剣呑さが宿る。
圭祐が纏うその熾烈な気迫に玲香は気圧された。
「な、なにもここじゃなくても名古屋にもダンジョンは……」
「…そこじゃ見られるかもしれないだろ」
「…?」
「そこじゃあいつに、俺の頑張っている所見られるかもしれないだろ。」
えぇーーと玲香は思うも声には出さない。
なにも言われなかった圭祐は少し顔を赤らめダンジョンへと潜る。
ダンジョンへと潜った圭祐は【ダンジョン内転移】を使い、10階層へ、そのままさらに11階層へと降りて行く。
(俺だって特別なスキルは授かってるんだ…。負けてられない…!)
11階層を韋駄天の如く駆け抜ける圭祐は、優奈が居ないためか、久しぶりに強く感じる攻撃衝動に身を任せる。
現れるモンスターを次々と撃破しては自身の持つ力を強化させ、さらに下層へと潜っていくのであった。
ブクマ、評価ありがとうございます!
誤字報告も助かります。ありがとうございます!
ストック切れました……。けど更新頑張ります!




