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13. 名古屋ダンジョン

優奈の手を引き、再び名古屋ダンジョンの入口へ戻ってきた。


(あのステータスは一体どういう事だ…MAG値があんなに高いのにMPが0ってなんだ……。)


あのあとスキルについても【詳細鑑定】を掛けてみるが

〈魔素を導く。〉とイマイチ意味のわからない鑑定が出たため、実際に魔導を見てみようと圭祐は考えた。


「ねえねえ、私の名前はなぜか知ってるみたいだけど、貴方はなんていうの?」

「あぁ、申し遅れました。私、タマラン・ユウナスキーと申します。」

「なにそれ〜ちゃんと教えてよ〜!」


そう言ってムスッとした顔を見せるも、すぐ耐えきれず あはっと笑う。


「ねえねえ、本当は〜?」

「圭祐。田中圭祐だよ。」

「次は本当??けーすけ。」

「そうそう、圭祐。」


話をしている内に圭祐たちの番が回ってくる。

ライセンスを提示し、中へ入った2人は早速敵を探す。


「ここの1階層にはね、スライムが出るんだよ。」

「スライム?」

「うん、スライム。青くて丸いゼリーみたいなモンスター。」


そう言って探すもなかなかスライムは現れない。


「全然いないじゃん。」

「そりゃ第2期シーカー達も増えて、ほとんど狩り尽くされてるもん。アァ〜明日からどうやって生活していこ〜!」


そう言って落ち込み膝から崩れ落ちた優奈を放置して圭祐は進む。


「なんで?!なんで放っていくの?!」

「間違えた。」

「何をだよー!」


そんな話をしつつ探索すること30分。ついにスライムが現れた。


「圭祐!あれがスライムだよ!ちょうど2体いるから1体ずつ倒してみる?」


圭祐は「あ〜そうね。」と力なく返したあとスライムへゆっくり歩いて近付く。


「ちょっと!圭祐!危ないって!!」


優奈はそう叫ぶが、スライムへ到達した圭祐はスライムを蹴り飛ばし、壁に叩きつけた。


《スライムを討伐しました。》


(よ、よえぇぇ………)

「優奈。もう1匹いるよ。」

スライムを足で優奈の元へ優しく転がす。

圭祐のスライムの倒し方にドン引きしていた優奈だが、スライムが足元まで来ると、顔を引き締め、そして手に持つ杖を振り下ろした。5回ほど叩くとスライムは死んだようであった。

その戦い方を見て圭祐は (はて?) と思う。


「優奈、魔導ってのは使わないのか?」

「えっ!なんでそれ知ってるの!?……….使わないんじゃなくて、使えないの…。私MPが無いからさ。」


悲しげな表情で笑い、そう呟く優奈を見て、圭祐はそんなはずは無いと考える。


(今までの経験上、スキルは取得した瞬間から使える。それは魔法に関しても同じだった。MPが無いから使えないのであればそんなスキルは手に入らないはずだ。どういう事だ…。)


圭祐の場合、仮に使い方のわからないスキルがあったとしても、スキルポイントを消費しレベルを上げることでなんとなく使い方が分かる。

しかし他人のスキルのレベルを上げる手立てがないため途方に暮れる。



「優奈はさ、なんでダンジョンに潜ってんの?」

「まあ、簡単に言うとお金が欲しいの。お母さんは早くに亡くしちゃってね。で、お父さんが今まで男手1つでわたしたちを育ててくれた訳なんだけど、お父さんが病気になって働けなくなっちゃってさ。それにわたし弟が居るんだけど、弟には大学とか行かせてあげたいじゃん?家族3人の生活費とお父さんの治療費、それに学校行かせてあげることを考えると普通に仕事してたんじゃ無理だからね。…ところで、どうして圭祐はわたしの頭を撫でてるの?」

「優奈健気やなあ…ほんと偉いわあ…。

そんな状況で何故俺に防具なんか買ってくれたんだ?アカの他人がダンジョンで死のうと優奈には関係ないじゃん。」

「なんだかそのやる気のない目とさ、圭祐と話してみて分かったそのバカさがなんだか弟を連想しちゃって…。はあ、お人好しだとバカにしていいよ…。」

「は?悪口かよ、お前のその控えめな胸をもぎちぎってやろうか!」

「はぁー!?今は大きい胸をギュッと濃縮して凝縮させてるだけだからなー!スライムなんて比べ物にならないんだからなー!」

「実はさ、その濃縮した時に出た余分なものの集合体が俺なんだお母さん!」

「えっ!圭祐ってわたしの胸から生まれたの!?」



………………………………



「まあそんな訳でダンジョンに潜ってるんだけどね…」

「弱いから稼げないわけだ。」

「弱い言わないでよ…」

「……弱いはずないんだけどな………よし、じゃあレベルを上げてみよう!そうしよう!よし、優奈。下行くぞ。」

「やっぱりそんなこと言うでしょ?ダメって言ったでしょ?ダンジョンの経験は出来たでしょ〜?ほら、戻るよ。」

「無理。」


そういって優奈の手を持ち引き摺っていく圭祐。

わーわーと騒ぐ優奈を引き摺る圭祐に周りのダンジョン・シーカー達にドン引きされるも圭祐は気にも止めず探索を続ける。


「なあ優奈〜、階段どこ〜?」

「やだ!だめ!言わないっ!!」

「じゃあこのまま引き摺っていこか〜」

「ちょっと!危ないんだって!私じゃ圭祐を守ってあげれないの!!」

「大丈夫〜」


そう言って優奈を引き摺る圭祐は、遂に地下へ続く階段を見つける。躊躇なく降りていく圭祐に優奈は、

「ちょっと!本当に怒るよ!!」と言うも、「大丈夫〜」と呑気な返事を返す。

そして地下2階層へ到着してすぐ、運がいいのか悪いのかゴブリンが2体姿を現した。


「え〜ゴブリンかよ…」

「2体もッ!?圭祐!!危ない!!ゴブリンはスライムと違って強いんだよ!!!もーっ!!私が時間を稼ぐから上にすぐ引き返して!」


それでも「大丈夫〜」と呑気な圭祐の頬を優奈は叩く。

周囲にぺちんと小さな音が響いた。

涙目になった優奈が圭祐に必死で訴える。


「圭祐!お願い!聞いて!!ここ地下2階層からは本当に死んじゃうの!!」


それでも動かない圭祐。次第に近付いてくるゴブリン。

ゴブリンが襲いかかって来て、殺される!と思い、優奈が強く目を瞑った時、圭祐が動いた。

優奈が目を開けた時、2体居たゴブリンはどちらも頭から縦に綺麗に両断されていた。


「……えっ」

「優奈。敵を前にしてなに目を瞑ってるんだ。ダンジョン・シーカーがダンジョンで死ぬことを過剰に恐れていたらモンスターに殺されるぞ。悪いけど優奈、お前には覚悟が壊滅的に足りてない。」


そう言い放つ圭佑の眼には、ダンジョン・シーカー特有の剣呑さが宿っていた。

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