12. 出会い
〈名古屋ダンジョン〉の付近まで来ると、行き交う人の層は少し変わる。
辺りを歩く人は鎧を見に纏い、腰や背中には武器を携えている。
これまでのテーマパークの中にいるような和気あいあいとした空気感は一変して、剣呑な雰囲気に包まれる。
得体の知れない化け物共と日々命の奪い合いをするダンジョン・シーカー達は、ダンジョン内でいつ襲われるかもわからない生活を送るため、常に周囲を警戒し、襲撃に備えている。そのためダンジョン外でも無意識に周囲を警戒して歩く。
さらに、ダンジョンの魔素により、本来人間の持つ攻撃性を引き出されたダンジョン・シーカー達の眼は鋭く、苛烈さを宿す。
そのようなダンジョン・シーカー達の中をいつもと変わらぬ様子でひょうひょうと歩く圭祐。
圭祐は辺りを歩くダンジョン・シーカー達をこっそり鑑定し、そしてガッカリした。
周りに武器屋防具屋、またダンジョンに役に立つ道具が溢れ、さらに圭祐が1番欲しかったダンジョンの情報が行き交うここ、この街で、仲間を募りダンジョンを探索しているダンジョン・シーカー共はたかがこのレベルなのかと。
圭祐とて、自分の方がダンジョンへ潜り始めたのが早いということは勘づいてはいるが、それでも第1期であろうダンジョン・シーカーと見られる者達がLv10に満たない者から良くてLv15程度であるとは思っていなかった。
「あれ??君はたしか協会にいた…」
振り返ると協会で圭祐に話しかけてきたおじさんがいた。
「おぉ!おじさん!さっきぶり〜おじさんダンジョン・シーカーになれたんだね!」
「そういう君もダンジョン・シーカーになったみたいだね!」
「うん、おじさんよく合格出来たね」
「ははは、おじさんこう見えても柔道の有段者でね、最近までは自分の道場を持ってたんだよ。まあ最近門下生がいなくて廃業しちゃったんだけどね。」
こっそり鑑定するとステータス値がたしかに平均より高かった。お腹の出た優しそうな見た目のおじさんであるため圭祐は意外だな〜と思った。
その後お互い自己紹介をした。
おじさんは 遠藤 一郎 と言う名前だそうで、なんだか予想通りの名前で少しおもしろかった。
「じゃあね、圭祐くん、まさかとは思うけどそんな軽装でダンジョンに潜るといけないよ!」
「大丈夫だよおじさん。ちょっと様子見るだけだから!」
「心配だなあ。怪我には気をつけてね。僕達ダンジョン・シーカーはその身が何よりの資本なんだから。」
そう言って去っていくおじさん。
圭祐はいい人だなあ〜とその背中を見送る。
ダンジョンの入口には協会の職員が立っており、ダンジョンへ入る人にライセンスの提示を要求していた。
そのため入場のための待機列が出来ており、圭祐はその最後尾に並ぶ。
ぼーっと並んでいると突然横から腕を持たれ、列から引っ張り出された。
「ねぇ君そんな格好でダンジョンに入ったら死んじゃうよ!?」
そう言ってきたのは身長が160cmに満たないほどの目のクリっとした美少女であった。
圭祐がかわいいな〜と顔を見ていると、
「ねぇ!聞いてるの!?」
と顔を近付けてきた。
「うん、かわいいね。」
と圭祐が言うと、
「聞いてないじゃんッ!?」
と、彼女はオーバーリアクションを返してくれた。
圭祐はほっこりとし、自然と優しい笑みが零れた。
「いや!何優しく微笑んでるのっ!?もう!
ダンジョンに入る時はしっかりと準備を整えてから入ること!わかった!?」
「やだ。」
「なんでだよっ! どうしてこんなバカな人がダンジョン・シーカーになれたのよっ!」
と彼女は頭を抱える。
そんな彼女を見て圭佑はまたほっこりとし、頭を撫でてあげた。
「どうしてわたし頭撫でられてるの?」
「とてもほっこりした。」
そんな圭祐の言葉を聞き「知らんわっ!」と圭祐の手を払い除ける。
「ねえ、ダンジョンにはモンスターが出るってこと知ってる?」
「もちろん」
「モンスターに襲われると最悪死んじゃうこともあるんだよッ?!」
「大丈夫だよ、様子見で1階層しか回らないから。あれ、もしかして1階層で死んでも復活すること知らない?」
「知ってるよっ!でもそう言って入ったのに2階層に降りて殺された子を何人も見たの!!」
悲痛な顔で叫ぶ彼女に、通りかかったダンジョン・シーカーたちは「まあまあ」「それがダンジョン・シーカーだから」と宥める。
「…ねえ、お願い。今日のところは出直さない?」
「やだ。」
「………。」
頑なに言うことを聞かない圭祐に唖然とする。
そんな彼女にほっこりとしている圭祐は再び彼女の頭に手を伸ばそうとする。
すると突然自分の財布を取り出し中身を見たあと「うーっ」と唸った。かと思うと、「着いてきてっ!」と圭祐の手を引き移動する。
握り返した手は柔らかかった。
到着したのは装備屋であった。
「この人に合う防具を下さい!」
「まいどっ!10万円ね!」
「……おじさんお願いっ!7万円にまけてください…!」
「7万!?それはおじさんも商売成り立たないよ!せめて8万だな。」
「う、うううぅぅ、はい、じゃあそれで……」
「まいどあり〜!」
そして購入した防具を受け取ると振り返り圭祐に渡す。
「…はい!これあげるから装備して!」
「…マジか……」
「わたしが強かったら2階層でも着いていけるんだけど、弱いから…だからせめてものプレゼントです!」
「………。」
弱いと聞きなんとなく鑑定をする圭祐。
するととんでもないステータスが表示された。
大野 優奈 ヒューマン ♀
Lv 3
〔ステータス〕
HP 21/21 MP 0/0
ATK 4 DEF 6
AGI 7 MAG 21(210)
所持スキル
〔ユニークスキル〕
【魔導】
〔EXスキル〕
【高魔力体質】
〔Nスキル〕
【杖術】【魔力増強】
(なッ…!?!? なんだこのステータス…!?)
「おい優奈!ダンジョン行くぞ!!」
「え、はい。…え?待ってどうして名前知ってるの?ねえ!!」
この出会いが後に最強のパーティの1つとして数えられる、とあるパーティの始まりとなることは、今はまだ誰も知る由もない。
深夜テンションで書いてますのでなるべく深夜テンションで読み進めて下さい。どうぞよろしくお願いします。
気が向いたら評価おねがいします!!




