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11. シーカーライセンス

別室の扉を開け、中に入ると協会の制服を着た女性と自衛隊の服を着たガタイのいい男性が立っていた。


扉を閉め、2人へ向き直ると女性が声を掛けてきた。

「こんにちは。ここではダンジョンで得られる技能である【鑑定】を使用して、あなたの身体能力を確認させていただきます。よろしいでしょうか?」


(なるほど、たしかにそれなら短時間で済むな…)

「どーぞ。」

と返事をした圭祐に対して女性は鑑定をかける。

すると突然「えッ!…」と声を上げた。

どうした?と隣にいた男性が女性に声を掛けると、2人でコソコソと話出す。

(な、なんだ…)


2人の話が終わると身構えた男性がホルダーから拳銃を引き抜き圭祐へ向ける。


「いくつか質問に答えろ。

ダンジョンへは潜ったことはあるか?どこのダンジョンだ?どのくらいの期間潜ったっ!?」

突然拳銃を向けられた圭祐は慌てて手を挙げ答える。

「い、いきなりなんだよッ !あるよ!じいちゃん家にあるダンジョンだ!3ヶ月近くだよ!大人しく答えるから鉄砲は降ろしてくれってッ !」

「…シーカーライセンスを持たずダンジョンへ潜るのは犯罪だと知っているか?」

(う、うそだろ…!?)

「し、知らねぇよッ!知ってたらわざわざこんな所来ないって!」

暫く圭祐を怪しい目で見ていた男性だったがひとまず拳銃を降ろす。

「…信じてやる。着いてこい。」


歩き出した2人の後を歩く。女性は時々怯えた目で圭祐を振り返る。

(ダンジョンに潜るの犯罪なのかよ……知らねぇよ…あの人可哀想に……超怖がった目で俺の事見てくんじゃん…よしよししてあげたい…。)

そんな圭祐の心の声が届いたのか女性はビクッとしたあと再び圭祐を怯えた目で振り返る。

(可愛い…。)


目的地と思わしき扉の前へ着くと、男性は扉をノックする。中から「いいぞ」と声が聞こえると、男性から「入れ」と促される。

(鉄砲怖い…)と男性にビビる圭祐は言われたまま扉を開け部屋に入る。



圭祐が中に入ったあと、ここまで連れてきた2人も中に入ってきたのを確認すると、部屋に一つだけ設置された大きなデスクで書類をまとめていた人物が立ち上がり顔を上げた。


(ッッッ!!!! 嵌められたッッ!!!)

圭祐は腰を落とし身構える。



その人物は背丈が2メートル程ある男性で、頭はスキンヘッド、顔には凶悪な笑みを浮かべている。


すぐに鑑定を掛けた圭祐に男性のステータスが表示される。


伊藤 源治 〔ウォーリアー〕♂

 Lv 18


 〔ステータス〕


 HP 148/148 MP 42/42

 ATK 61(-40) DEF 59(-40)

 AGI 26(-15) MAG 18(-15)


 STR 40


所持スキル

〔Nスキル〕

【指揮】【剛腕】【身体強化】【射撃】【斧術】

【威圧】


人間の男性。年齢は42歳。

ダンジョン・シーカー協会のマスター。



と表示された。

(なっ…!?ステータスの偽造までできるのか…!?)

驚愕した圭祐は、しかしすぐに冷静に戻り集中力を集める。


「おうおう、そう身構えんな少年。」

「ッッ!?!?」

しかし声を掛けられたことで集中力が途切れる。

「話せるだと…ッ!?」


焦る圭祐を放って、圭祐をここまで連れてきた男性が伊藤源治へと声を掛ける。

「マスター、例の青年を連れてきました。」

「ご苦労。」

そう言って圭祐へと接近する。


(クソっ!!街中だと油断して武器を置いてきてしまった!倒せるか…!?)

さらに身構える圭祐に伊藤は声を掛ける。


「なにをそんなに警戒してる?」

「モンスターはダンジョンから出られないと思っていたが間違いだった様だな!」

「「「は?」」」

圭祐以外の3人が呆然とするなか、圭祐は続ける。


「人間のフリをしているようだが、ダンジョンでゴブリンを長いこと狩り続けた俺にはわかる!人間はそんな凶悪な顔面を持たない!大きくそして緑に包まれるその身体!さらにツルりと光る頭となによりその凶悪な顔面!!お前は!!〈ハゲゴブリン〉だなッ!!!」

「「プフッ」」「死ね」


伊藤から繰り出されたストレートを躱すことが出来ず、顔で受け止めてしまった圭祐は意識を闇の底へと沈めた。



意識を取り戻した圭祐の左右を挟むように彼をここへ連れてきた2人が正座していた。

「お二人共!ご無事ですか!ハゲゴブリンは?!」

その言葉を聞き2人は下を向き肩を震わせる。

「ま、まさか…どこかで暴れてるのか!?クソっ……」

「誰がハゲゴブリンだ」

圭祐が顔を上げると伊藤がデスクに向かって座っていた。

「ハゲゴブリン!さっきはよくも…!」

「落ち着けバカが。ぶち殺すぞ。」

そう言って顔を上げる。

「田中圭祐。お前は祖父の家に出来たダンジョンへ1人で潜ってレベルを上げていた。ライセンスを持たずにダンジョンへ潜ることが犯罪とは知らなかった。ってことで間違いないな?」

「あ、あぁ…」

「あぁまた新しいダンジョンか、調査が必要だな…。」

そう言った伊藤は圭祐に手元に用意したカードを投げる。

圭祐は投げられたカードを拾う。見ると銅色のカードには〔ダンジョン・シーカー ライセンス〕と書かれていた。

「お前が寝ている間に過去の記録を調査させてもらった。犯罪歴はなし、ほかも特に問題なし。バカなようだがそのステータスを放っておくには惜しい人材だ。よって。おめでとう。これでお前も晴れてダンジョン・シーカーの仲間入りだ。」


そう言った伊藤を見ていた圭祐は隣で正座する女性に小声で話しかける。


「なああのハゲゴブリン、案外良いモンスターだな。」

「プフッ」「オ゛イ!!」


伊藤の怒鳴り声にビクッとする女性。


「俺は伊藤だ!伊藤源治だ!おぼえとけ田中圭祐!!

ほら!カードもってさっさと出ていけ!こっちはお前のせいでまた仕事が増えたんだ!ほら早く連れていけ!!」


そう言って追い出された圭祐達はエントランスへ戻り、そして圭祐は受付へ案内された。


「改めまして、田中圭祐さん、ダンジョン・シーカーライセンスの取得おめでとうございます。」


そう言って受付してくれたのは圭祐を鑑定し、ここまで案内してくれた女性だった。女性の名前は玲香さんというらしい。圭祐も改めて自己紹介をし、「圭祐くんって呼んでください。」と頼んではみたものの断られた。



「田中さんはダンジョン・シーカーとなられましたのでダンジョン・シーカーの役割について少し説明をさせていただきますね。

ダンジョン・シーカーである田中さんには各地にあるダンジョンの調査、及び現れるモンスターの素材や、ダンジョン内で手に入るアイテムを持ち帰って頂きたいと思います。

それらを協会内にあるダンジョン資源買取所か、もしくはダンジョンの側に派遣されております買取所へお持ち頂くことで報酬が支払われます。

また新しく発見されましたダンジョンの調査や、ダンジョンに現れたイレギュラーモンスターの討伐を協会からの依頼としてお願い致しております。あちらの掲示板、もしくは後程お渡ししますシーカー専用タブレットからご確認することが出来ます。依頼を受ける際にはシーカーランクの制限がございますのでくれぐれもご確認下さい。」

手で示された掲示板を見て圭祐は疑問に思ったことを尋ねる。

「シーカーランクってなに?」


「そちらに付きましてもご説明させていただきますね。

ダンジョン・シーカーの皆様にお配りさせて頂きましたライセンスカードにはランクの記載をさせて頂いております。」


圭祐は先程貰ったカードを確認する。カードにはブロンズ 3級と記載されている。


「ランクは大きくわけて3種類。下からブロンズ、シルバー、ゴールドとなっております。各ランクは3級から始まり、素材の持ち込みや依頼の成功数により進級致します。各ランクの1級へ到達されますと、ランクを上げる試験がございます。ブロンズからシルバーへ。また、シルバーからゴールドへランクを上げるためには試験を受けて頂き、合格していただく必要がございます。」

「ほぉ…モンスターは殺したやつをそのまま持ち帰ってもいいのか?」

「そうされても構いませんが、大きく嵩張るため数匹の討伐ごとに持ち帰って頂く必要があるほか、解体費用を差し引かれるためオススメはしていません。」

「じゃあなにを…?」

「全てのモンスターには心臓部に魔石と呼ばれる魔素を凝縮させた結晶がございますので、そちらをお持ち帰り頂くことをおすすめしております。また特定のモンスターの素材には様々な利用価値がございます。買取させて頂きます素材に付きましても後程お渡ししますタブレットにてご確認できます。」

「へえ〜…」

「以上で説明はおしまいですが、なにかご不明な点などございますか?」

「玲香さんのタイプってどんな人です?」

「では、こちらが先程お伝えしましたダンジョン・シーカー専用タブレットと、そしてダンジョンやダンジョン・シーカーについての説明をまとめた冊子となっております。お持ち帰りください。それでは本日はご登録ありがとうございました。良いシーカーライフをお過ごし下さいませ。」


そう言って頭を下げる玲香。圭祐は何故だか少しだけ痛む胸を抑え、ダンジョン・シーカー協会を離れるのであった。


(せっかくここまで来てるし、1回名古屋のダンジョンってのも経験しとくかなあ…。)

そう考えた圭祐は、名古屋ダンジョンへと向かうのであった。

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