1. プロローグ
初作品となります。
優しくして下さい。お願いします。。
開いた窓から流れ込む風がこんなにも暖かく感じるのは春の訪れのお陰か、はたまた、壁に掛けた時計の針が真上を指し示す時刻の影響であるか。
ビルやマンションといった太陽を遮る建物のない田舎で暮らす彼 田中圭祐は、太陽から容赦なく注がれる光を全身で受け止める。
日光により目が覚めてしまった為仕方なく起きることにした。風に揺れる彼の黒髪は目元を隠しており、本来の彼よりも気力のない印象を与えた。
布団から這い出た田中圭祐は冷蔵庫でキンキンに冷やされた麦茶を飲み、今日はなにをしようかと考える。
半年前、この家の家主であった祖父が死んだ。
その頃、仕事が上手くいっていなかった圭祐はこの家の管理者として選出されてしまった為、もともとは仕方なく、この田舎に移り住んだ。
家主の祖父とは疎遠であったし、小さい頃に1度だけしか来たことのなかったこの家での生活は、都会暮らしであった圭祐にとっては案外、すごく新鮮なもので楽しいものであった。
それも1ヶ月もすると飽きてしまい、スマホでゲームをするか、SNSで好きなアイドルグループの情報を集めるばかりの生活になっている。
「黒砂メイちゃん、卒業すんのか…」
好きなアイドルグループのセンターに立っていた子の卒業を知り気力を失った彼は布団へと戻り、そして再び夢の世界へと旅立った。
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そんな生活を続けていたある日のこと。
昨夜眠りにつくのが早かったこともあり、朝日が昇ると同時に圭祐は目覚めた。
「せっかくだから掃除でもするか。」
と朝から家中を掃除していた。そして祖父の部屋であった場所を掃除していたその時、発見してしまった。
彼の人生のその後を大きく左右するその場所を。
祖父の部屋だった場所に入ったのは久しぶりだった。この家に引っ越してきてすぐの頃はよく家の中を探索していた。
都会と比べると土地に余裕があり、また祖父は裕福であった為大きな家に住んでいた。そんな大きな家であることもあり、初めは各部屋を巡りどんな使い方をしようかと楽しく思案していた圭祐だったが、1人で暮らすのにこんな部屋数は必要ないなと持て余していたのであった。
久しぶりに入った祖父の部屋にはホコリが溜まっており、圭祐は少しだけ罪悪感を覚えた。
「掃除しておくよ。じいちゃん、ごめんな。」
そう言ってタンスや机のホコリを落とし床を磨いた。
タンスの掃除をしている時に見つけた、昔この家を訪れた時に撮ったであろう写真には、幼い頃の圭佑と彼の祖父が2人して無表情で映っていた。
その写真に写る祖父の眼が圭祐の叔母、圭祐の母の妹の眼にそっくりなのを見てハハッと笑いがこぼれた。
「覚えてないけど、怒られたんだろうな…。」
まさか怒られた理由が重度の痔を発症している祖父に対して会心のカンチョーをしてしまったことが原因とは、いくら圭佑といえど思うまい。
彼の祖父は厳格な人だったと母から聞いたことがある。
昔気質の人で、家事は何もせずキッチンになど近付きもしなかったようだ。
そんな祖父を見て育った母は、自分が結婚する相手は家事を進んでする人じゃないと嫌だと思っていたと話していた。
実際、圭祐の父は家事全般を得意とし、休日はいつも父がご飯を作っていた。
そして、祖父はスポーツマンであったとも言っていた。
圭祐も祖父の血を引き継ぎスポーツ全般を人並み以上には出来ていた。しかし彼は何か一つにハマることもなかった為、それまでだったのだが。
祖父の部屋の掃除を大方終えたので、次は押し入れを掃除しようかと考えていた。
「…あれ?よいしょっ!…は?」
しかし、押し入れを開こうとしても何かが引っかかっているのか、なかなか開かなかった。
「な、ん、だ、こ、れ…!……ぃよいしょっっ!!」『ギャッ』
押し入れの扉を力いっぱい引き、ついに開いたと思うと同時に何かが挟まった感覚。そしてごろんごろんと何かが転がる音がした。そして目の前には…
「な、なんだこれ…!」
目の前には洞窟の入口。中へ入りすぐ左を見ると長い石の階段が地下へと続いていた。
⦅ゴブリンを討伐しました。⦆⦅おめでとうございます。世界初のモンスター討伐者です。⦆⦅モンスター初討伐者報酬を獲得しました。⦆⦅EXスキル【スキルポイント】を取得しました。⦆⦅おめでとうございます。世界初のダンジョン探索者です。⦆⦅初ダンジョン探索者報酬を獲得しました。⦆⦅EXスキル【略奪の魔眼】を取得しました。⦆
「えっ?!なんて?!」
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その日、圭祐が見つけた〈ダンジョン〉と呼ばれるその場所は、後に世界各地で発見され、この世界を変えていく。
人の多くは〈ダンジョン〉を探索する者 〈ダンジョン・シーカー〉に憧れ目指し、そして〈ダンジョン〉へと潜っていった。
ある者は金を求め、ある者は名誉を求め、そしてまたある者は浪漫を求めた。
これは〈ダンジョン〉へと挑む、熾烈を極めた〈ダンジョン・シーカー〉たちの物語である。