第一章supplement
蛇足です。
◆勇者に関する諸条約◆
俗称は、勇者条約。
魔王の討伐という目的で各国人族および亜人族の間で交わされる、相互協力を目的とした多国間条約。
基本は各国より選抜された有力な者と勇者契約を交わすことで、対象となる勇者およびそのパーティメンバーが決定される。
契約者は国の裁量の範囲で様々な特権を得る代わりに、魔王討伐を含む、国に対する貢献を義務付けられる。
・勇者契約
魔王討伐が公式に成っておらず、神器の返納が行われていない状態で、勇者およびそのパーティメンバーが魔王討伐中に死亡した場合、契約に基づき、死亡時点で最後に立ち寄り、契約状態の記録更新のための儀式を行った神殿にて復活する。
また、魔王討伐を主任務としている期間、勇者およびそのパーティメンバーは国からの魔力供与を受けることで自身および他者の各種の能力を大幅に強化することができるようになる。
元々は勇者が魔王に敗北することが非常に多かった状況下で、勇者の生存率を上げるための研究が盛んだった時代に編み出された技法。
現在は詳細について公にされていない技術が数多く使用されている。
この契約が為されている間、勇者とそのパーティメンバーは勇者条約を結んだ各国を契約主とする召喚獣に近い存在となる。
たとえ死んでも、魂を最後に立ち寄った神殿にて呼び戻し、肉体を契約主から供出された魔力で再構成して復活することが可能。(混同されがちだが、死者の蘇生ではなく召喚獣の再召喚に近い)
また、身体能力の全てを契約主となる各国から供出された魔力を利用して補強し続けることで、契約期間中は無敵に近い存在となる。
勇者条約を結ぶ各国の義務を不履行のまま放置するなど契約主に対する不利益を働いた場合や、魔王討伐が成り、神器を返納した時点で契約は終了し、契約終了後は通常の人もしくは亜人と何ら変わりない存在に戻る。
この契約には死霊術および動物・魔物の使役術の技術が多数採用され、勇者の魔王討伐任務の成功率に大きく寄与しているが、現在は死霊術や魔物の使役術を扱う術者に対する偏見が強いため、現在となっては術式の構造や詳細について秘匿されている部分が多く、一部の国の雇う呪い師に各種の権限が集約されている状態となっている。
・勇者の紋章
勇者契約を行った者が体の一部に記す紋章。勇者としての証明となるため、多くの者は手の甲に記す。
勇者の各種権能を効率的に成長させるための機能、万が一死亡した際に死亡地点と神殿とを繋げる機能、倒した魔物から魔力の一部を吸収、勇者の強化に利用する機能など、数多の魔法技術の応用から生まれた魔法技術の結晶。
基本的に勇者の紋章は肉体と魂が保護されていることを示すための証であり、紋章が記されている部分を失った場合でも、紋章の効果自体は契約により魂が保護されている限り効果を失うことはなく、神殿で儀式を行う、パーティメンバーが治癒術を施すなどの施術により、失った部位は修復することが可能。記された証も、勇者の魂本体と離れるなどして接続が失われた場合は、自動的に消え去るようになっている。
・蘇生術および専用回復術
勇者およびそのパーティメンバーにのみ使用可能となる契約術式。死者の蘇生を行えない通常の治癒術とは違い、死んだ勇者およびそのパーティメンバーに限り蘇生することが可能。
元々は勇者およびそのパーティメンバーが、死亡後もしくはパーティ分断後に合流できるようにすることを目的として開発された、死霊術および動物・魔物の使役術の技術を改良して生み出された魔法。
専用の祈祷手順を踏むことで、術者の魔力で最後に契約状態の記録更新のための儀式を行った神殿の記録、および現在勇者の紋章の記されている者の魂の接続を参照、紋章が記されている者の魂が神殿まで呼び戻されていた場合は神殿の記録を、魂が肉体に残留していた場合は肉体に残留している魂の情報を基準とし、神殿側で供出可能な魔力および術者の魔力を供出することで、術者の付近に召喚陣を構築、対象となった者の肉体の再構築を行うことで蘇生する。
回復魔術を使う神官および祈祷師に主に術の構築方法が授けられており、神殿側で魔力供出の負担の肩代わりを行うことが可能であることから、通常の回復魔術とは一味違う印象を与えるが、起動原理が治癒術の域にないことから、詳細については秘匿されている。
理論上、生存したまま個々に分断された状態でこの術式を使うことで、一ヵ所に合流しパーティとしての態勢を整えることも可能だが、機能の詳細についての秘匿が進んだ結果、詳細を知る者が一部の国の雇う呪い師のみとなり、実質的に勇者およびそのパーティメンバーに伝えられる機能としては失伝している。




