大きなカブ(もうひとつの昔話 30)
お爺さんの家のそばにある畑には、それはそれは大きなカブができておりました。
ある日。
夕食の料理に使おうと、お爺さんはカブをとることにしました。
「うんとこしょ、どっこいしょ。うんとこしょ、どっこいしょ」
お爺さんはカブをかかえて抜こうとしました。
けれどもカブは抜けません。
「そうだ!」
お爺さんはお婆さんを呼びました。
「せーの、うんとこしょ、どっこいしょ」
お爺さんがカブを引っぱって、お婆さんがお爺さんを引っぱりました。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
それでもカブは抜けません。
「そうだ!」
お婆さんは孫娘を呼びました。
「せーの、うんとこしょ、どっこいしょ」
お爺さんがカブを引っぱって、お婆さんがお爺さんを引っぱって、孫娘がお婆さんを引っぱりました。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
それでもカブは抜けません。
「そうだ!」
孫娘は犬を呼びました。
「せーの、うんとこしょ、どっこいしょ」
お爺さんがカブを引っぱって、お婆さんがお爺さんを引っぱって、孫娘がお婆さんを引っぱって、犬が孫娘を引っぱりました。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
それでもカブは抜けません。
「そうだ!」
犬は猫を呼びました。
お爺さんがカブを引っぱって、お婆さんがお爺さんを引っぱって、孫娘がお婆さんを引っぱって、犬が孫娘を引っぱって、猫が犬を引っぱりました。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
それでもカブは抜けません。
「そうだ!」
猫はねずみを呼びました。
お爺さんがカブを引っぱって、お婆さんがお爺さんを引っぱって、孫娘がお婆さんを引っぱって、犬が孫娘を引っぱって、猫が犬を引っぱって、ねずみが猫を引っぱりました。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
それでもカブは抜けません。
「うんとこしょ、どっこいしょ。うんとこしょ、どっこいしょ」
みんなで力を合わせて引っぱります。
「うんとこしょ、どっこいしょ。うんとこしょ、どっこいしょ」
スッポーン!
とうとうカブは抜けました。
「抜けた、抜けた!」
みんなは手をたたいて大よろこびです。
と、そのときでした。
「こらっー」
隣のお爺さんがすごい剣幕で走ってきました。
「この盗人めらが! うちの畑のカブをとりやがってから」