【第一章】第八部分
翌日、意気揚々と登校する亜里栖。定刻よりもかなり早く学校付近に着いた。
校門前に男子がニヤニヤひとり立っている。遠くからでもわかるぐらいのニヤつきぶりである。
「おやおや奇遇だね、亜里栖。」
「しゅ、秀太郎こそ、ずいぶん早く来てるのね。どうして校舎に入らないのよ。」
「いちおう生徒会なんで、遅刻の取締りってヤツかな。あっ、もちろん風紀を乱す生徒がいないかのチェックもやってるけど。」
「持ち物検査やる気なの?アタシは勉強道具以外の持ち合わせはないわよ。」
「それはどうなんだろう。確認する必要があるのかなあ。」
秀太郎は亜里栖の首の辺りをじっくりと眺めて、徐々に視線を落としていき、胸のところで停止した。
「ちょ、ちょっとどこ見てるのよ。朝っぱらからセクハラとはムダに元気だわ。」
慌てて貧乳をカバンで隠す亜里栖。
「あっ、ちょうどそれを見ようとしたんだけど。」
「い、いやらしいわね。超直球のセクハラだわ。け、警察を呼ぶわよ。」
「それは困るよ。ここで警察に架けたらすぐに来ちゃうよ。それにセクハラなんかじゃなくて、見たかったのは、カバンの中身だよ。」
「女子のカバンの中を見たいなんて、セクハラそのものじゃない!」
「いや、カバンの中身は見なくても、もうわかったよ。亜里栖。昨日の金貨は持って来てないんだね。」
「あんなもの、硬貨としての価値はないんでしょ。あれじゃ、ゲームセンターのメダルと同じじゃない。」
「まあ、通貨としての流通価値は皆無と言っていいだろうね。でもそんなことに使うのではなく、用途は知ってるよね。」
「そんなことはわかってるわよ。今日はたまたま忘れただけよ。てか、学校に持ってきていいのかどうかわからなかったんだけど。」
「あれは必需品だし、学校の持ち物検査に引っかかることはないよ。」
「そうなんだ。じゃあ、明日から持ってくるわ。」
「そうするといい。でも今日困ったことにならなきゃいいけど。」
「何か言った?」
「いや何でもないよ。それと、そのカバンの下に、見る価値のあるものは存在してないだろう。」
「バ、バカ~!」
亜里栖は顔を真っ赤にして、胸を隠しながらプンスカして校舎に足を運んで行った。