【第三章】第二十八部分
「何が言いたいのよ。はっきりと言いなさいよ。」
「そんな、ワタクシにこんな場所で、コクリ、こっくりさんを強要すると?」
「そんなこと、言ってないわよ。言語の曲解サーカスをやってるわけじゃないのよ。」
「そうですわね。冗談はここまでにして、ちょっとお耳を貸してくださいますか。むにゃむにゃむにゃ。」
「ちょっと、マジにむにゃむにゃむにゃ。って言ったって、わかるわけないでしょ!」
「あらごめんあそばせ。最近むにゃむにゃ語を勉強してまして。」
「どこの国の言葉よ!」
亜里栖がツッコミした瞬間に、会長は亜里栖の耳元に何かを囁いた。
亜里栖の顔はみるみるうち青ざめていった。
「そ、そんなこと、簡単にできるわけないじゃない。」
囁いた会長に笑顔はなく、むしろ頬に影が差していた。
亜里栖は無言になり、走り出して、廊下に出た。
そこではすすり泣く声がだんだん大きくなっていく。亜里栖の様子を見ていた全員が沈黙し、場の空気はどんよりするだけであった。
しばらくして、外の泣き声が聞こえなくなった。
『ガラガラ』という夾雑音を立ててドアが開いた。
亜里栖は元の場所に戻ってきて、秀太郎の前に立って、大きく息を吸い込んで力一杯吐いた。
「あんたなんか大嫌い!」
「泣いていると説得力がないぞ。」
「だって、だって~!」
秀太郎の言葉は、さらに亜里栖を泣かせた。
「アタシに秀太郎のことを諦めろなんてムリ。それなら死んだ方がマシよ。でもアタシがこのままじゃ、経済を、社会を、みんなの暮らしを壊してしまう。それはイヤとかいうレベルの話じゃない。アタシには人間としての義務があって、それを最優先するのが、最も正しい生き方だわ。」
膝から泣き崩れる亜里栖。
秀太郎は俯いてこれでもかというぐらい強くまぶたを閉じている。
会長も無言のままである。
「そうでもないじゃん。」
「そうだよ。ひとりですべてを抱えるとは、貸出金利が低すぎるよ。」
「いつき、美散!どうしてここへ来たの?」
「「ここに生徒会室があるから来ただけ。」」