【第三章】第二十五部分
この日のスーパー閉店後、秀太郎は父親を連れて生徒会室にやってきた。
今の生徒会長は、亜里栖共々、がっこうぐらしである。
「こんな時間にやってくるとはちょっと驚きました。夜伽話する気満々ということでしょうか。ワタクシは準備万端ですけど。」
「ぐッ。これは眩しい、というか、目のやり場に困るっていうか。」
紫色のネグリジェ姿の会長に怯んだ秀太郎。
「うほほ。これはオジサンにとっては超眼福ですな。最近活躍していなかったピンチヒッターが、ネクストバッターボックスに待機しているんだけど。」
「お父さん。それは別のお店で、いや球場かバッティングセンターでぶちかましてくださいな。ワタクシを打っていいのは、そっちの副会長だけですから。」
「が~ん。・・・。でもやっぱり性春っていいねえ。」
父親は会長のネグリジェの膨らんだ部分をガン見していた。
「そういう文字化けはやめてくださるかしら。まさか、野獣に化けることなんて、ゼッタイダメですからね。もっとも、もう野獣化するだけのパワーは残ってらっしゃらないと思いますけど。」
「そうだったあ。40代後半は奈落の底だあ。ず~ん。」
父親のテンションが急降下して、落下傘部隊となった。
「さすが、オヤジ狩りのベテランだな。うんうん。」
秀太郎が腕組みをして、目を閉じて納得顔になった。
「そのワードだとずいぶん人聞きが悪いですわね。でもこれで冷静に対処できますわね。さあ、ご用件を承りましょう。」
「そうだな。亜里栖をここに呼んでくれ。どっこいしょっと。」
秀太郎は大きな機械を生徒会室に台車で搬入してきた。機械を乗せる台と椅子も用意している。
そこへ黒サングラスに連れられて亜里栖がやってきた。
「・・・。こんな時間に、まだ浄化しなきゃいけないの。アタシ、疲れてるんだけど。」
群青色の顔になった亜里栖の言葉には力がなかった。体操服姿である。
「亜里栖!」「アリス!」
秀太郎と父親が一緒に声を掛けたが、当の亜里栖は無反応だった。
「くっ。これはすぐに何とかしないと、手遅れになってしまう。お父さん。これを思う存分使ってください!」
「おう。わかったぞ。アリスがいなくなってから、ご無沙汰だったからな。行け~!」
父親が亜里栖の前に出てきて、スロットマシンを回す。
コインを立て続けに投入する父親。回るドラム。
リールは一向に揃わず、ハズレが無尽蔵に産出される。
コインと時間の無駄使い。これがギャンブル。
亜里栖はひたすらハズレまくる父親を見て、瞳が色づいた。
「おおお~!久しぶりにいい感触だあ。負けるって、カネをスルって、こんなに気持ちいいんだあ!」
焦点の合わぬ瞳に、パチスロに興じる父親を映している亜里栖。
「・・・。この音は何。うるさいわ。それにお父さんの声。すごくイヤだ。こんな声、聞きたくない。」
抑揚のない、声ともつかぬ声を出している亜里栖。




