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【第一章】第六部分

「そんないきなり攻撃しないでよ。893屋さんの脅し方って順番と段取りがあるんじゃないの?」

「そりゃそうだな。・・・なんてことあるか!」

893は日本刀を抜いて亜里栖に襲いかかってきた。

『銭形平次モード!』

亜里栖が叫んだ瞬間に、無数の硬貨が893の方にすごい勢いで、飛んでいき、全身に当たった。

「ぐわあ。」

一言呻いて893は大理石の地に没した。

「あれ?アタシ、コイツをやっつけちゃったのかしら。なんだか、変な叫び声を上げたみたいだったけど。」

「う~ん。そうだねえ。初めてにしては、うまくやれたね。」

「そ、そうなのよね、さすがアタシ。でも魔法を使ったっていう実感がなかったわね。でもこの秀太郎って男子には言いたくないから、黙っておこっと。」

 亜里栖の言葉は、その通り秀太郎には届かなかったらしい。

「じゃあ、オレの役割はここまでなんで。」

「ちょっと待ってよ。アタシ、コイツらから預金をしてもらってないわよ。もう2時過ぎてるし、他を当たる時間はないわ。」

「それは大丈夫だよ。相手の持っている魔力マネーに従って、預金として取れているはずさ。自分の端末機スマホを見てごらんよ。新規の相手預金通帳が電子上で作成されているはずだよ。」

亜里栖は手元のスマホを操作した。

「たしかに、893さんの名義の預金が獲得できてるわ。金額は1万1千MMだわ。まあこんな商売してるんだから、これぐらいの預金は持ってるわよね。これでいちおう目標は達成されたわ。」

亜里栖は腕時計を見た。

「もう時間がないわ。早く学校に戻らなくちゃ。」


学校に走って帰る亜里栖。体力はさほどないため、息も絶え絶えに校門にたどり着き、大講堂の受付で基準クリアを確認されて、入場した。ステージでは、黒髪で、おさげふたつの女子が司会者席に立っていた。

「ワ、ワタクスわ、いや、ワタクシは、しぇいとかい、書記のさ、西園寺華莉奈でしゅ、しゅしゅしゅ。こ、これから入学本試験の結果を発表しましゅ、しゅしゅしゅ。」

緊張しているのか、滑舌がひどく悪い。司会台がガタガタしている。華莉奈の足の震えが力のモーメントにより、台に伝達されているのである。

華莉奈の視線は台面に張り付いたままで、下しか見てない状態である。

「み、みなしゃん。すでにご存知でしょうが、預金獲得1万MMをクリアしても選考基準には、その中での順位があります。預金獲得額の上位80位以内が合格でしゅ、しゅしゅしゅ。」

華莉奈が示した大きなスクリーンに結果が表示された。

順位と獲得金額、名前の三つが横に並んでいる。

『1位1億MM・・・』

亜里栖は、いちばん後ろの立席にいて、いちばん高い位置にある一位の名前が見えない。

「て、天文学的な成績だなんて、思ってもいないんだからねっ!」

ひとりごとで本音を吐露する亜里栖。周囲に聞こえているのかどうかは定かではない。

ずっと目を下に持って行って、自分の名前があるのか、確認する。金額の桁が違うため、70位以下を真剣にサーチする亜里栖。

そのポジションから80位までを見るために前の生徒を押しのけて、強引に前進する。

「な、ないわ、アタシの名前。」

そこから先は声帯を震わすことができなかった。

目で追う80位の金額。1万2千MMだった。

「あ~あ。ダメだったわ。アタシの高校生活はたった1日。いや半日。ううう。」

亜里栖の頬を、一筋の涙が名残惜しむように落ちていく。

不合格者の亜里栖が俯いている間に、会場がざわついてきた。

司会者席に、ひとりのショートカットの男子が近づいて、華莉奈に何か話しかけた。一分ほど会話して、華莉奈が頷くと、男子はステージから降りた。

「えぇっと。さ、先ほどの順位発表に一部修正がありましゅ、しゅしゅしゅ。」

大講堂を出ていた亜里栖の背中に声が飛んできた。


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