【第三章】第二十部分
「では、これならどうでしょうか。」
「ぐっ。どうしてこんなもの、持ってるのよ。ごく。」
亜里栖の口の中は唾で満たされようとしている。
秀太郎上半身裸の写真であった。わずかに上目使いなのがセクシーである。
一方、貯金箱のカウンターは、さらに百万減少した。
「シメはこの2枚ですわ。」
「クソが!」
亜里栖はあまりに興奮したのか、汚い言葉しか出なかった。
一枚は、秀太郎によるミニスカロリスのなでなで写真、もう一枚は、会長ハグであった。
「2枚目写真、アタシがカットされてるわ!」
「そっちですの!」
ツッコミが会長から飛んできた。
貯金箱残高カウンターは残酷にもゼロになってしまった。
「ど、どうして貯金箱の金額が減ってしまったのよ。」
「正確には無くなってしまったということの意味と理由を教えてほしいということですわね。ワタクシにとっては、せっせと貯めた魔力マネーがゼロになってしまい、途方に暮れているところなんですけど。でもここまでの実証実験で、すでにわかってらっしゃるのではありませんか。」
口の端を吊り上げて、勝ち誇りの表情の会長。
「興奮するとさらに魔力マネーを食ってしまいます。それも人を好きになる感情が作用するのですわ。それがなればなるほど大きくなります。それを一本木さんがやってしまっている。そういうことですわね。」
「ほ、本当にそういうことなの?信じられないわ。でもアタシは悪くはないわ!」
言葉では否定しているが、瞳の鈍い光が肯定している。
「これをごらんなさい。」
会長は小さなモニターを取り出した。そこには最新のニュース映像が流れていた。
『現在、この地域では次々と異常な現象が発生しています。魔力マネーがなく電気が止まり、ガスが止まって、日常生活が破綻している世帯が続出しています。とくに貧困層ではそれが顕著になっています。依然として、魔力マネーの現象原因は不明です。魔力マネーを食われて、会社が潰れて自殺した人、街で飢え死にする人や餌を与えられず死ぬペットが公園に捨てられて、腐臭で来る人がいなくなった公園もあります。食物を求めての強盗も出現しています。お金は命の次に大事なものです。このまま魔力マネーがなくなる状態が続けば、街の治安が維持できない懸念もあります。』
「これをアタシがやってでも言いたいのね。」
「言いたいというレベルではありませんわ。それに魔力マネーを一本木さんが食べた何よりの証拠がその膨らんできた部分にありますわ。」
亜里栖は視線を下に移した。
「こ、これが、アタシが魔力マネーを食べた結果。胸が大きくなったことはうれしかったのに、これが諸悪の根源。・・・。」
亜里栖は次の言葉を紡ぐ術を失った。
「そういうことですわ。ご理解いただけましたですわね。一本木さんの空腹を満たすのは魔力マネーなのですわ。これから次の実験を始めます。」