【第三章】第十九部分
二股に別れた二十階建てのビルが聳え立っている。そこの地下牢に連れていかれた亜里栖。
「アタシが何をしたというのよ?ここから出してよ!」
鉄格子を握って、ゴリラのように暴れる亜里栖の前には、会長が真面目な顔で立っている。
「一本木さん。この拘束について、まだ納得されてないようですわね。」
「当たり前よ。アタシは何も悪いことをしてないわよ。」
「本気でそう思ってらっしゃるとは考えてませんわ。でも通知表が欲しいとおっしゃるなら用意はできますわ。」
ふたりの黒サングラスが大きな人形のようなものを持ってきた。
青い招きネコの形をしているが、耳がなく、お腹の辺りにポケットがあり、投入口と表示がしてある。その下にはゲージがあり、「10,000,000」という黒い数字が映されている。
「これって、ドラえ●ん貯金箱じゃない。どうしてこんなものを持ってきたのよ。」
「これはタダの貯金箱ではありません。魔力マネーが一千万MMほど貯められる代物ですわ。実際、今満タンとなっています。ワタクシが生活費を節約してチビチビまるこちゃんと貯めたものですわ。これは仮装通貨ではありません。モノホンですわ。」
「いかがわしい言い方をしないでよね。で、その貯金箱がなんなのよ。」
「これが、あなたの能力、つまり罪を暴く、いや罪を認める証人となりますわ。」
「アタシがその貯金箱を着ぐるみにして、アニメで活躍しろとでも言うの?」
「M1の一回戦で負けそうなギャグですわね。」
「ほっといてよ。すべって、ちょっと恥ずかしかったんだから。」
ビミョーに顔を赤らめた亜里栖。
「奇妙なスイッチを入れましたわね。ではワタクシは一本木さんのスイッチを入れますわ。これをごらんなさい。」
会長が一枚の写真を見せた。
「えっ。・・・。これってどういう意味なのよ。」
貯金箱の数字が一万ほど減った。
「やはりそうですわね。実験は正しかったようです。」
会長の見せた写真には、秀太郎の制服姿が映っていた。
「何がしたいのよ?」
亜里栖の額から汗が滲んできた。