【第三章】第十四部分
『オレです。』
「おう、秀太郎くんか。」
『握手会は予定通り、今からスーパーの前で行いますから。もうお店のすぐ近くに来てますから。』
「頼むよ。もうスーパーの前には長蛇の列ができてるよ。」
父親を怪訝な表情で見つめる亜里栖。
「今の電話って、秀太郎から?」
「そうだよ。ウチの集客マシーンがやってくるってワケだ。外の行列は彼目当てだからな。」
「スゴい人数だわ。ウチのスーパーの1ヶ月分の来客数に相当するわ。補助券はわざわざ一点千円以上の高額商品に限定してるし。これが全員、秀太郎とのハグ期待なんて、スーパー業務として本末転倒だわ。」
「アリスがどうして怒るんだ?減るもんじゃあるまいし。」
「べ、別にムカついてなんかないし。でもアタシの取り分が減ってしまうような?」
捕まったフグのようになった亜里栖は、行列を見やっている。
見たことのある顔が亜里栖ソナーにヒットした。
長い金髪に少しつり上がった瞳。
「生徒会長が並んでいるわ!いったい何を考えているの、あの成金女。」
会長は亜里栖の憤り視線に気づいてにこやかに手を振った。
それは亜里栖の怒りゲージをさらに高める結果となった。
「いったいどういうつもりで並んでるのよ?」
会長は都合よく持っていたスケッチブックに、『副会長のハグは国民の権利ですわ♥』
と書いて亜里栖に示した。
「なんなのよ。それって、宣戦布告ってこと?」
『そうともいいますわ。』
会長は書いたあとに、口に手を当てて、『ホーホホホッ。』というお嬢様笑いのポーズ。
「ムカッ~!ドスン、ドスン。」
地団駄を踏んで地震でも起こそうとした亜里栖。
そこへちょうど秀太郎が到着した。
「きやあああ~!」「秀太郎様~!」「待ちかねたわ~。」「おいでなさい、王子様!」「握手が待ち遠しいわ。」「ハグっと、プリキュアしてくれるのよね?」「若い男子のエキスが吸えるわ。」「若返る~。」「オバサンの迫力バディを堪能してね。」「死ぬ前に一度抱かれてみたかったんじゃ。」
主として中年主婦が飢えていたが、老女も含まれた。




