【第三章】第十二部分
魔導中央銀行の金庫残高をパソコンで見て、溜め息をつく生徒会長。
「困りましたわ。このままでは、銀行の経営が傾いてしまいますわ。」
眉間のシワが深くて、まだ女子高生なのに、シワが刻まれたままになるのではと心配になる。
「アタシの胸がアグレッシブになってきたのはいいことだけど、お父さんのことはビミョーなのよね。」
亜里栖は帰宅した時、父親は淡々と受け入れていた。
「ただいま。」
「お帰り。」
この会話だけで帰宅挨拶は完了し、以後は今までとなんら変わりない状態が続いていた。
亜里栖は余計な心配を父親に与えたくないという思いが強く、なすがままに流していた。しかし、亜里栖にはどうしても一点だけ、はっきりさせておきたいことがあった。
スーパーの羽振りがよくなっていたのである。以前にはなかった高い食材が多くはないが、並んでいる。
亜里栖の喉の奥には、父親が受け取ったニセ札のことが刺さったままだった。
「お父さん、今月の売上はどうなの?」
亜里栖は普段からよく尋ねている無難な質問をしてみた。
「うん。売上はそこそこいいな。去年の同月比では50パーセントアップしているな。」
(ウチのスーパーはずっとジリ貧だったのに、やっぱり怪しいわね。)
疑念を深めた亜里栖は質問を続ける。
「それで利益はどうなの?」
「これはいいぞ。前年同月比で200パーセントアップだな。」
(やっぱりビンゴだわ。高額商品の方が利益率が高いから、売上が伸びれば、それ以上に利益率が上がるのは道理。やっぱりお父さんは、生徒会からもらったニセ札を使ったんだわ!)
亜里栖は、野菜棚を整えていた父親の後頭部に罵声を浴びせた。
「もうガマンできないわ。お父さん、生徒会のニセ札で高い商品を入れたでしょう。それで店の利益が増えたのは明白なんだからねっ。」
亜里栖は右手の人差し指で、父親の額を撃つように指した。
「生徒会?ニセ札?いったい何の話だ。アリスがパパを責めるとしたら、ギャンブルに決まってるだろうに。スーパーの経営で何か意見するということは、将来ここを継ぐ決心がついたということか。パパはうれしいぞ。ハグっとプリキュア!」
父親は亜里栖を抱きかかえて、幼稚園児のように頭をナデナデした。
「ちょっと、お父さん、お客さんが見てるわよ。」