【第三章】第十一部分
亜里栖は火照った体のままで、無事に帰宅した。
亜里栖のスーパーに設置されているテレビ、ニュースが流れている。
『次は経済関連ニュースです。各地の魔法銀行で銀行強盗が相次いでいます。強盗と言っても、魔力マネーが、ネットデータ上喪失しているということです。警察の調べでは、ネット上の強盗は魔法セキュリティーの壁を破って、魔力マネーを強奪している模様です。実行犯はただのハッカーではなく、魔法使いハッカーではないかとの噂がネットを賑わせています。』
店内の手伝いをしながら亜里栖はテレビを眺めている。
「魔法銀行のセキュリティーを破るなんて、とても考えられないわね。これは個人犯罪じゃなく、何らかの組織が関与しているかもね。それにしても胸元がちょっと張ってるわね。洗った下着が縮んだのかしら?ウチで売ってた特売品はこれだからダメなんだわ。」
人目を気にせず、胸を触る亜里栖であった。亜里栖の下着はメーカーから押し付けられて、仕方なく一時的に販売していたが、食品スーパーで売れるはずもなく、在庫処分する中で、自分で購入したものだった。
「こんな下着じゃ、とても勝負できないわね。勝負?・・・。アタシはいったい誰と勝負するのかしら?しゅ、しゅ、しゅ。これ以上を考えてはいけないわ。」
日の丸のような色になって照れる亜里栖であった。
次の日も同じような経済ニュースが流れていた。
『各地の魔法銀行からの魔力マネー流出は続いています。被害額は数百億MMに及び、本来価値の安定しているはずの魔力マネーが高騰しています。1MMがかつての基軸通貨ドルの二倍になってしまい、物価への影響が各地で見られます。』
亜里栖はテレビを見ながら、商品の値札を貼り替えていた。
仕入れ価格が二倍になったため、売価も上げざるを得なくなったからである。しかし、亜里栖の表情は明るかった。
「物価が上がったけど、アタシの胸も膨らみが増して来たわ。下着が原因じゃなかったんだ。ついに胸のインフレ期が到来したんだわ。低成長に悩んできた日本経済がついにデフレ脱却したのよ。それに合わせてアタシの胸も成長する、この膨らみはそういう体質だったのよ!あ~はははっ!」
予定外に膨らんできた胸を突き出して高慢に笑う亜里栖。
「それにしてもすごくお腹が減るわ。でも食べる量は変わらないし。頭の中だけが空腹で体はお腹がすかないっていう感じ。なんだか変ねえ。」
奇妙な脳内空腹感に戸惑う亜里栖であった。