【第三章】第六部分
放課後、秀太郎は生徒会室にひとりで来ていた。黒サングラスが機動隊訓練のように、二列に整然と並んでいる。
黒サングラスの刺さるような視線を通過して、会長席に進む秀太郎。
「ここに無断、いや土足で踏み込んで来るとはいい度胸してますわね。」
「オレは上履きだぞ。それに生徒会副会長が生徒会室に入るのに、許可なんかいらないだろう。」
「それもそうですわね。普通の学校の生徒会からそうでしょうけど。でもここは魔法銀行でもあり、生徒会は各部活の多くを支配していることをお忘れなく。言うまでもありませんが、副会長系の部活は債権回収部ぐらいでしょう。でも副会長のことをパートナーとは思っていますわ。」
「パートナーという認識がないからこそ、そういう言い方をするんだよな。パートナーというよりはパートタイマー扱いだな。」
「あらら、これはいい表現されますこと。」
「だから交渉するためにやってきた。対等ではなく、労使交渉レベルだがな。」
「なるほど。そういうことであれば、経営側として、話を承りましょう。労働者の意見を聞くのはこちら側の義務ですから。アリンコでも五分のタマキイ?がありますからね。ホーホホホッ。」
「放送禁止ギリギリだな。一歩、いや一文字間違えば、会長ポストを失うぞ。早速だが、人払い、いや黒モブ払いをしてくれるか。」
「まさか、ワタクシにコクろうとでも?ポッ。」
いきなり顔を赤らめた会長。
「本音を語るという意味では、そんなところだな。」
「いいでしょう。なんなりとおっしゃってくださいな。ワタクシの心は小テストの範囲ぐらい広いですから。」
「ずいぶんビミョーな広さだな。では単刀直入に言おう。」
「なんと破廉恥な言葉ですわ!」
思わず顔を伏せた会長。
「ち、違うだろ!この四字熟語のどこがエロいんだ?・・・よく考えるとそこはかとなく淫靡な気もするけど。そうじゃない!亜里栖が今どう使われているか、知ってるぞ。このままじゃ、亜里栖の命が危ない。亜里栖を解放してやってくれ。」
「無論タダで解放ということではありませんわよね。」
「ああ。生徒会にとって、副会長派は目の上のタンコブだろう。それを取り除いてやる。つまり、オレは副会長ポストを辞任する。それなら生徒会内部の勢力図も塗り変わるだろう。」
「それはどうでしょうか。仮装通貨ですべての予算も握れるし、もはや副会長派とかは無視できるレベルになっていますわ。泥でもすするおつもりなら、ワタクシの歩いたあとでも掘ればいいのではないでしょうか。」
「泥でもなんでも来いと思いだ。何でもやってやるぜ。」
「そこまでおっしゃるなら、ワ、ワタクシと、い、一夜を共にしなさい。」
顔が熟し過ぎたリンゴのようになった会長。




