【第二章】第十部分
「足はそこで止めるですぅ。いや、それ以上は前に行くと補習ですぅ。」
「先生!?どうして、ここに。もしかしたら、正気に戻ったの?」
「先生は前から賞金王ですぅ。」
「その言い方、いかにも先生だわ。」
「待て、亜里栖。先生の目を見ろ!」
秀太郎が身を乗り出そうとした亜里栖を右手で制した。
ミニスカロリスの目は昨日と同じく灰色で、まばたきをしていなかった。
「マ、マネキン猫人形みたいだわ。」
「マネキンなのか、招き猫なのか、はっきりさせた方がいいぞ、って、そんな場合じゃないだろう。」
「その通り、生徒会に挑戦状を叩きつける前に、先生を乗り越えるですぅ。」
「は~い。」
超小柄なミニスカロリスの頭を、少しジャンプして跨いだ亜里栖。
「こらぁ!約束が違うですぅ。乗り越えるっていうのは魔法で先生を超えるって意味ですぅ。」
「先生があまりに小さいからつい。てへっ。」
亜里栖が茶目っ気たっぷりにウインクした。
「もうアタマに来たですぅ。えいっ!」
ミニスカロリスは懐から金貨を取り出して振り回した。あまりの眩さに、目を開けていられない三人。
「亜里栖、美散。よく見るんだ。あれは本物の金貨じゃない。輝き方が不自然だ!」
「さすがに副会長。見破ったですぅ。光の原因、つまり光源はこれですぅ。」
金色の折り紙と懐中電灯を見せたミニスカロリス。
「な~んだ。先生も魔法初心者だったんだわ。隠してて、ズルい女ね。」
にわか同類意識を発生させて、ミニスカロリスに近づいていく亜里栖。
「油断したですねですぅ。今ですぅ!」
ミニスカロリスが手にしていた金貨は巨大化。それはグニャリと変形した。
「不気味だわ。ヒトデ型なんて!」
「ヒトデじゃないですぅ、星形ですぅ。」
「ぐにゃぐにゃしてるんだから、ヒトデ型よ。」
「星形ですぅ。星のファンタジーですぅ。」
「敵キャラにキレイな言葉は無用だわ。」
「それは偏見ですぅ。第一、先生は立場的にも正義ですぅ。」
「悪こそ、正義をかざすものよ。」
「亜里栖もさっき盛大に正義を振りかざしてなかったか?」
「秀太郎、味方の背中を撃つんじゃないわよ。」
亜里栖と秀太郎のやり取りを見てて、ミニスカロリスは大きな瞳を吊り上げた。
「なんか、そちらのふたりを見てると無性に腹が立つですぅ。」
「そうだ、そうだ。」
「美散。その相槌、何か変じゃない?」
「あっ、いや、その。こ、これは先生の反応がおかしいと表現したまでで?」
「なんだか釈然としないわね。」
「今は授業中、じゃなくて戦闘中ですぅ。私語は慎むですぅ。先生攻撃するですぅ。」
「それを言うなら先制攻撃だわ。」
「どうでもいいですぅ。先生のほっぺたみたいに、ぷにぷに攻撃ですぅ!」
ミニスカロリスは、ヒトデ型金貨をブーメランのように投げつける。
「ヌルヌルで、気持ち悪いし気味悪いわ!」
汚物を避けるように逃げた亜里栖。




