【第一章】第二十二部分
亜里栖の金貨は眩く光り、どんどん膨張していき、亜里栖の上空に浮いている。その大きさたるや、縦5メートル、横20メートルの看板。『スーパーアリス』とカタカナで書かれている。
呆気に取られたいつき。少し間を置いてひとこと発した。
「ダサいじゃん。」
「ほっといてよ。威力はスゴい、・・・ハズなんだから。」
看板はそのままいつきの頭に落下して、いつきは下敷きになった。
不意を衝かれてやられた格好のいつき。
「油断したじゃん。バタン。」
「アタシ、勝っちゃったの?やったあ!みっちゃん、クリアだわ。」
『バ~ン!』
「イタっ!」
亜里栖の右足から血が流れいる。亜里栖は跪いた。
「やられたというのは見せ掛け。看板はあれだけゆっくり落ちてくれば対処のしようもあるというもの。竹刀で衝突を防いだ後に、ワザと頭に当てたということじゃん。で、今竹刀でそちらの足を払ったということじゃん。」
「そ、そんなあ。ううう。」
「ははは。メガネも劣等生も倒した。完全勝利じゃん。バタン。」
いきなり崩れ落ちたいつき。
結局、いつきをやっつけた亜里栖。
「アタシの攻撃が時間差で効いてきたんだわ。これでホントのみっちゃん、クリアよ。」
「みっちゃん、クリアだって?それは違うよ。」
喜び勇む亜里栖の元に帰ってきた美散。
「あれ?メガネ落武者が本陣に戻ってきたわ。」
「だれがメガネ落武者だ!ちゃんとこの商店街にも古い眼鏡屋があったから、そこで新しいメガネを作ってきたんだよ。すごく高かったけどな。とにかく、わたしたちは債権回収が目的だということを忘れてない?それが済んでるから帰るんだよ。この古魔法書の回収成績はすべてわたしのもの。試合に勝っても勝負に負けたら落第さ。」
「えええ?どうしてそんなことになるのよ。あいつを倒したのはアタシなのに。」
「本末転倒ってことだよ。じゃあ、学校に戻るよ。」
亜里栖に背中を向けて、そそくさと歩き出した美散。くすんだ竹刀がいつきの横に転がっていた。美散は亜里栖に気づかれないようにそれを回収していた。
「ちょっと、アタシにも少しぐらい分け前を頂戴よ!」
「何言ってるんだよ。回収魔力は銀行に返すに決まってるだろう。生徒個人は給料が入るだけ。それも歩合制じゃないし。あまり稼いでも実入りはそんなに変わらない。成績もパートナーと均等割りにするさ。わたしの足を引っ張らなければそれでいいんだよ。」
「そうなの?な~んだ。よかったわ。ぐッ。」
亜里栖は道路に横たわった。
「いきなり魔力マネーを大量に使ったから、疲れたんだね。」
美散は亜里栖の肩を抱えて学校へ戻っていった。