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【第一章】第十二部分

「これも魔法?先生ちっちゃいし、1円玉もちっちゃいけどスゴイわ!」

 亜里栖は目を少女漫画のヒロイン目で、ミニスカロリスの魔法を見た。

「ちっちゃいは余計ですぅ。さらに連呼は金剛同断ですぅ。」

「先生の身長で、金剛力士をぶった斬りできないわよ。」

「暴言禁止ですぅ。そんなことより、これを見るですぅ。」

 1円玉は新聞の高速印刷機械のように動いているカマボコの間に入った。それも一枚一枚の間に、きっちりと入ってカマボコの動きを止めた。

「1円玉にそんなパワーがあるのかしら。」

「1円を笑うものは1円に肉ですぅ。」

「そこは泣くでしょ。1円で買える肉は腐ってるわよ。」

「ツッコミは不要ですぅ。これで横黄泉もカンタンにできますぅ。魔法の使い方とはこういうものですぅ。今の一本木さんにこれができますかですぅ。」

「で、できるわよ。たとえ1円玉と言っても魔法が使える硬貨なんだから。」

「ちなみに過去を持った通貨のことを兌換通貨と呼ぶですぅ。魔法は兌換通貨でしかできませんですぅ。さあ、その1円玉を使って、カマボコの枚数をカウントできますかですぅ。」

「やれるわよ。アタシにできないことなんて、エッチなことだけなんだから!」

「エッチはできないですか。それは残念ですぅ。先生はできますですぅ。ぽっ。」

「そんなところで顔を赤くしないでよ。信じちゃうじゃない。」

「先生は未成年じゃないから、物理的法律的に可能なんですぅ!」

「法律的にできても物理的には不可能という烙印を押してあげるわ。で、アタシは魔法を使いこなしてみせるからねっ。」

 一枚だけに戻った1円玉を受け取った亜里栖は気合いを込めるが、うんともすんとも言わない1円玉。

「やっぱりムリですぅ。じゃあ、先生は帰るので、戸締りよろしくですぅ。球場のカギは無数にありますから、全部締めるには武田鉄矢しないといけないですぅ。」

「その鉄矢も徹夜もキライよ!グスン、グスン。」

 すでに涙目になっている亜里栖。すでにスコアボードの時計は21時を回っていた。

 1円玉1枚は日常生活でもまったく無力であり、ましてや魔法をかけることもできないならば、何の価値もないアルミである。ちなみに1円玉の生産コストは3円と言われており、作れば作るほど政府の赤字が膨らんでくるのである。

「仕方ないわ。戸締りをすることにするわ。カギはどこかしら。」

 ミニスカロリスは無造作にカギをマウンドに置いていた。その数は1,000本。10本のリングにウナギの稚魚のように、100個ずつカギが付けられていた。しかもほとんど同じような形状であり、ぱっと見には区別がつかないという始末に置けなさMAXである。

個々のカギに番号が振ってある。球場の出入口だけでなく、体育用具室、更衣室用ロッカー、あちこちにあるトイレのロッカー、小動物の出入口など数え切れないほどである。

「何これ。すごく重たいわ。全部持つのは到底無理だわ。リング一つずつ締めていくしかないわね。番号がついているから、錠の方にもきっと書いてあるはず・・・よね?あはは。」

 そんな亜里栖の楽観的思考は、すぐに裏切られることとなった。


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