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【第一章】第十部分

カマボコは誰もいないのに動き出した。亜里栖は目を見張って、口をあんぐりしている。

「なにあれ。ロボット、それともまさかの異次元生命体?誰か知らないの?」

周りをキョロキョロするが、騒いでるのは亜里栖ひとりで、他の生徒たちは各々手に何かを持っている。

動くカマボコは縦に立ったまま、上半分をゴムのように曲げては元に戻るという運動を繰り返している。

「何なの。こんにゃくみたいですごく気持ち悪いわ。」

「あれはこんにゃくじゃないよ。相手をよく見てよ。」

三つ編みメガネっ娘が、亜里栖の顔を見ずに声をかけた。

動くカマボコを凝視する亜里栖。

「カマボコは一枚岩ではないみたい。薄いたくさんの板でできてるわ。」

それぞれの板は縦に回る。そこまでは亜里栖の視力でも見抜けた。

「単純な動きしかしないから楽勝ね。」

予測不能な相手に対して楽観的な亜里栖に対して、風が吹いてきた。スカート全開。

ただひとり制服だった亜里栖。

白地に金貨の模様入りのパンツが、太陽のない場所で日の目を見た。

恥ずかしいと思ってスカートを押さえたあと、パンツを見られたのではないかと周囲を見渡すと、亜里栖を見ている生徒はおらず、みんな目の前で動くカマボコと対峙していた。カマボコによる風を、他の生徒は予想していたのか、少し距離を取って構えている。

三つ編みメガネは、いまだにスカートを押さえて戦闘態勢の取れない亜里栖に、黒い布切れを投げつけ、それは亜里栖の顔を覆った。

亜里栖は風を顔に受けながらもそれを手に取り広げた。

「何これ?ブルマじゃない。これを穿きなさいってこと?助かるけど、どうせ誰も見てないのだからお礼なんて言わないんだからねっ。」

ブツブツ言いながらもブルマを穿いて、気持ちに余裕が出てきた亜里栖。そこで球場内にアナウンスが行われた。

「ここに来ている生徒さんで、課外授業の意味を知らない人がいるようなので、みっちゃんを説明するですぅ。」

「先生、ミッションです。」

三つ編みメガネがすかさず指摘。生徒の声は、マイクでミニスカロリスにも伝えられる仕組みになっている。

「ミッションをみっちゃんがクリアするのだから同じですぅ。」

「先生、みっちゃんって誰ですか?」

「みっちゃんとはみなさんのことですぅ。」

「わかりました。それならば正解です。よくできました。二重丸です。」

「わ~い。初めて誉められたですぅ。」

破顔一笑とはまさにこのこと。

「みっちゃんは、カマボコさんの枚数を数えてくださいですぅ。それも縦読みと横読み両方で行うですぅ。カマボコさんが大きいとか強いとか、触ったらケガする、最悪死ぬとかいうクレームは受け付けません。課外授業は給料をもらえるのですからですぅ。」

 多くの生徒が手に硬貨を持っている。それを前に突き出して、呪文を唱えると、硬貨が直径1メートル大になった。それを正面のカマボコに投げつけるとその動きが止まった。こうなると枚数数えるのは容易である。

 縦読みが終わるとカマボコは再び動き出す。

 今度は扇形に広がったカマボコ。

「縦読みはカンタンですけど、横読みは、通称『横黄泉』ですぅ。何人死ぬか楽しみですぅ。」

 ベンチに設置された放送席で目元を黒くして、ほくそ笑むミニスカロリス。それまでとは別人のようである。

 扇形カマボコは、左右にゆっくりと揺れている。

「なあんだ。全然大したことないじゃないの。チョー楽勝じゃない。」

 亜里栖はそう言い放っているが、まだ縦読みが終わっていない。それは亜里栖ひとりだった。亜里栖には金貨がないのだから当然である。

 縦に激しく揺れるカマボコの前でなす術のない亜里栖は、唇を噛みしめるしかなかった。


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