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2話 パーティー編成

 外から聞こえる喧騒が、俺を夢の世界から連れ戻す。

 あまりのうるささに顔をしかめたが、とりあえずカーテンを開ける。すると真上まで昇った太陽の陽光が俺の視界を奪った。

 一つ大きな伸びをしてからまずは洗顔をしようと洗面所を探し始めたら突然どこからか鈴のような音が聞こえてきた。それほど大きな音ではなかったので、耳を澄ましていないと聞き逃してしまいそうだった。

 一歩一歩音を立てないようにして慎重に歩いていき、次第に音は大きくなってきた。

「これは⋯⋯?」

 そこにあったのは便箋が入っているような封筒だった。

 音の正体を探ろうとそれを手にすると「新しいメッセージは一件です」という機械的な音声が流れ、それに次いで「えー、こほん。アルフィールです。昨日、ギルドで受付をしていた者です。今回の用件は、本日中に行ってほしいことについて少しアドバイスをと思って手紙を書きました。マサトさんはこの街の新人さんであるのと同時に一人の王選参加者です。そこでまずは王選内で共に戦うメンバーを集められることを推進いたします。なにせ、王選はとてもとても一人で勝てるような闘いではないので⋯⋯。ぜひ、今日中にいいメンバーを見つけてくださいね!」

 そこでぶつりという音がして最後に「メッセージは以上です」という再び機械的な音声がして封筒は俺の手の上で消滅した。

 非現実的なことに口を開けたまま呆然としてしまったが、あのお姉さん、アルフィールさんの言ってたことをやれということだろう。

 そうとなれば早い。顔を洗い、朝食をとって、歯を磨いてクローゼットの中から薄手のジャケットのようなものを引っ張り出して羽織り、玄関で靴を履いて外に出た。

 外に出ると当然のことだがたくさんの人がいた。この中から俺とパーティーを組む人を見つけなければならない。

 その前に、確認したいことがあったのでまずはギルドに行くことにした。

「ひひひひ⋯⋯」


 〇〇〇


 「えーと、ちょっと聞きたいことがあって来たんですけど⋯⋯」

 バリバリのコミュ障を発揮しながら受付のカウンターに肘を置いている女性、アルフィールに話しかける。

「はい、どうなさいましたか?」

 ごくりと唾を飲んでから、

「実は、どのようにパーティーを組んだらいいかわからなくて⋯⋯」

「それって、どういう構成で組めばいいかわからない、ということですか?」

 その予想はまさに的を得ている。

「はい、そうです。ゲームは結構やるんですけど、構成は割と適当で⋯⋯」

「なるほど⋯⋯」

 『ゲーム』というワードが通じたことに多少驚いたが、今はそれどころではない。

「そうですねー、簡単に説明しますと、前衛と後衛のバランスを意識して組まれるとかなり強力なパーティーになると思われますよ」

 なるほど、と相づちを入れておくが正直なところいまいちよくわかってない。

「ところで、マサトさんは前衛と後衛どちらをご希望で?」

「そうですねー⋯⋯」

 ここは慎重に選ばないと後々大変なことになる。腕を組み、右足のつま先をパタパタさせ、職の書いてある紙を見ながら唸り考える。

 

 Q︰どちらを選ぶ?

 

 1.晴れの前衛 2.影の後衛

 

 これは間違いなく1だ。

 

 Q︰では、前衛の中で何を希望する?

 

 1.短剣使い《ピッカー》 2.ハンマー使い《ヘバー》 3.長剣使い《ストッパー》 4.ナイフ使い《ナイファー》 5.殴打ベアー

 

 これは悩みどころだ。正直なところ、前衛職であれば何でもいいと思っていたが、これほどまでに種類があり、それぞれの特色も全く異なるとなると話は別だ。

 短剣とナイフの違いがいまいちわからなかったが結局選んだのは短剣使い《ピッカー》だった。単に楽そうでかっこよさそうだったからだ。

「じゃあ前衛の短剣使い《ピッカー》で」

 かなりの時間を待たせていたが、アルフィールは愛想を崩さずニコニコしながら待っていた。

「かしこまりました!それでは短剣使い《ピッカー》で登録しますね」

「よろしくお願いします」

 そこでアルフィールはどこからか紙を引っ張り出し何かを書き出した。盗み見は宜しくないと思い覗き見ることは慎んだ。

 数分して。

「それではマサトさん、登録が完了したのであとは自由に行動してもらって構いません。私的には他のお連れの方などを探された方が得策かと思われます」

「丁寧にありがとうございます。そのつもりでいたので大丈夫です。また何かあったら頼りにします」

 深く一礼してギルドを後にした。


 ○○○


 「あー、誰か私たちを拾ってくれー」

「おらぬおらぬ」

「待って待って、あそこにいる人」

 怪しげな女3人組は1人は手を頭の後ろで組んで気だるげそうにし、1人は目を瞑っていながらも人の往来を把握しているのか他人に当たることなく歩き、1人は興味津々にたった今ギルドから出てきた1人の青年を指差している。

「あいつがどうかしたのか?マノ」

 マノと呼ばれた目を輝かせている幼女はうん、と頷く。

「あそこにいる人、絶対旅人さんだって。ほらほら、あのお財布すら持ってなさそうな感じ、ぜったいぜったいそうだよ。そう思わない、マロ?」

「また謎理論かよ⋯⋯あんなやつとはやってけねーよ」

 はー、と大きなため息をつくマロと呼ばれた少女。

「どうよマオ?」

 マロが問いかけるとしばらくの間ができた。

「⋯⋯⋯みえない」

 マオと呼ばれた少女は1度も目を開けることなくその方向を見つめていた。

「マジかよ⋯⋯となると⋯⋯」

 3人が同時に互いの顔を見つめる。そしてニヒヒと悪い笑みを浮かべるのであった。

「こりゃ楽しみになりそうだなー」


 ○○○


 とりあえずやることもやったので次の目標である一緒に攻略を進めてくれる仲間を探すことにした。

 しかしどの人も左腕にパーティーに属している証であるパーティー固有の腕章をしていた。俺が渡されたのは鶏のような鳥に剣が突き刺さっていて、赤を基調としたものだった。ギルドを出る直前にアルフィールが慌てて持ってきた。

「さて、どこかにフリーな人はいないかな⋯⋯」

 心の中だけで呟いたつもりだったが、声に出ていたらしい。

「ここここ、ここにいるよ」

 肩に手をかけられ振り向くとそこには俺よりも背の低い女の子が3人いた。左腕を見ると腕章をしていない。

「これはキターー!」と心の中でガッツポーズをする俺はこの子たちよりも幼いのかもしれない。

「⋯⋯あなたのジョブ、短剣使い《ピッカー》ですね?」

 喜びに浮かれていた俺だが、一気に寒気に襲われ一歩後ずさりしていた。何せ俺はまだジョブについて話していないし、急展開すぎるし、さらに問を投げかけた少女は目を1度も開けていないからだ。

「ど、どうしてそれを?」

 しどろもどろになっていた。

「私には見えるんです。どのように何が見えるかはお教え出来ませんが」

「そ、そうか⋯⋯キミの言う通り俺は短剣使い《ピッカー》だよ。聞かれたついでに聞くけど、キミたちのジョブは?」

 逆に俺が問うと3人は口を噤んだ。何かジョブについて言いたくない事でもあるのだろうか。

「⋯⋯それを答えるのは、パーティーに参加することが決まってからだ」

「はい?」

「ほら、もうじき日が暮れるぞ」

 空を見上げると眩しい日が真正面から照らし続けている。

「⋯⋯まだ真昼間なんですけど?」

 指摘すると3人の中で1番背の高い少女は顔を赤くした。

「ぐっ⋯⋯!とにかくパーティーに入れるのか入れないのか早く決めてくれ!」

 耳まで真っ赤になっているあたりよほど恥ずかしいのだろう。そして触れられたくない事案でもあるのかもしれない。

 辺りを見渡す。どの人も腕章をつけている。もはやこの子たち以外の望みは薄と見ていいだろう。

「わかったよ。パーティー参加を認めるから早くジョブを教えてくれ」

「⋯⋯あなた、まずはあなたの名を教えるのが先では?」

 先延ばしにされる。

「俺はマサト。よろしく」

 軽く会釈すると3人は深々と礼をした。

「あたしはマロ。ちょーっとばかりめんどくさがり屋だけどよろしくー」

 さっきまでの必死な少女の面影はもう見えず、今は「はー」とため息をついて気だるげにしている。

「私はマノ。ちっちゃいとか言ったらぶっとばすんだからね」

「⋯⋯かわいい」

「どぉりゃー!」

 純粋な気持ちを口にしたら鳩尾にアッパーを喰らった。普通に痛い。

「私はマホと言います。目は見えませんが別の目があるので大丈夫です。よろしくお願いします」

 顔の前にそーっと手のひらを近づけるとマホは避けることはせず、彼女の手のひらを俺の手のひらと合わせた。

「見えてますよ?」

 事実らしい。

「さて、そろそろキミたちのジョブを教えてくれないかな?」

「やっぱ無しは無しだからな」

 そこまで念を押すということはよほど特殊な何かを持っているのだろう。場合によっては⋯⋯ありえる。

「私たち、全員後衛職なんだわ」

 =俺が的

 はい無し。却下。論外。有り得ない。

「ごめんねー、俺用事思い出したからそろそろお暇させて⋯⋯」

「逃がさねーぞー!」

 スイッチが再びオンになったマロが一歩出す前に俺はスタートをきっていた。

「まてごらぁ!」

「まってー!」

 このままずっとついてこられるのだろうかと不安になり、半泣きになっていた。

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