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第8話 スーパーの死闘

 俺がスーパーの敷地に入ると、既に戦闘が始まっているのかモンスターの雄たけびが聞こえてきた。


「真澄今どこだ!」


 俺はスマホで真澄に話しかける。

 アイツはまだスマホを耳にくくりつけていた筈だ。


『奥だ! 肉コーナー!』


 このスーパーはホームセンターと隣接しているだけでなく、本屋に薬局、靴屋といった複数の店やフードコートが店を開いている。

 真澄が居るらしいん肉コーナーは食品コーナーの丁度真ん中、スーパーの中で一番奥にある場所だ。

 俺は手にした農耕用の長柄鎌を構え直す。

 長柄鎌は立ったまま作業ができるようにした鎌で、漫画に出てくるような死神の鎌とは違い、持ち手の棒が槍の様に長く、先端は普通の長さの鎌がついていた。


 武器を構えた俺は、全力で走り出す。

 Lvが3になった俺はまるで自分が陸上選手になったかの様な錯覚を受ける程足が速くなっていた。

 自覚ができるほどの速さ、それに身に付けた装備も全然重さを感じない。

 途中お菓子コーナーを抜け、冷凍食品コーナーのケースの角を掴んでスピードを殺す事無くカーブを曲がる。

 そして肉コーナーへとやって来た。


「たぁぁぁぁ!!」


 真澄がゴブリン達と戦っている。1対3だ。余りにも不利すぎる。

 だが相せざるを得ない理由が真澄にはあった。

 人だ、真澄の後ろには人がいたのだ。

 頭から血を流した女性が倒れていたのだ。


「せいやぁぁぁぁぁ!!!」


 俺は一番近い右端のゴブリンに長柄鎌を突き立てる。


「ギャァァァァァア!!!」


 突然の不意打ちにゴブリンが悲鳴を上げる。

 ゴブリン達の注意が俺に移る。

 その隙に真澄が左のゴブリンを手斧で攻撃する。


「ギャアァァァァ!!」


 ゴブリンLv2の注意が真澄に戻る。俺はゴブリンから長柄鎌を引っこ抜くと、ゴブリンLv2を攻撃した。


「グギャアア!」


 真澄に注意が向いていたゴブリンLv2は、回避に失敗し傷を負う。だがそのダメージは僅かだ。


「こっちだ!」


 俺は長柄鎌を振りながらゆっくり後退する。


「ガァァァ!!」


 ゴブリンLv2と右側のゴブリンが俺に向かってくる。

 良い感じで真澄から引き剥がせた。

 悪いが左のは一人で頼むぜ。

 ゴブリンLv2とゴブリンが棍棒を振り回すが、連携が上手いわけでは無いらしく、互いの棍棒をぶつけたり周囲の商品棚にぶつけたりしている。

 だがそれで敵が弱いと侮る事はできない。

 むしろ狭い場所で力いっぱい武器を振り回されるのは非常に危険だ。

 俺は長柄鎌を振り回しながら後退していく。

 真澄と負傷した女性から敵を引き離す為だ。


「ギャッギャッ」


 後退する俺の姿が、自分達におびえていると思ったのかゴブリン達は嗤いだす。

 そしてコレまで以上に大振りで棍棒を振り回しながら走ってくる。

 俺は長柄棒を捨てて全力で逃げる……振りをした。

 今の俺が全力で走ったらゴブリン達を置いてけぼりにしてしまうからだ。

 ストレートの通路、周囲には商品棚、敵は棚の真ん中。

 条件は揃った。

 俺は工具袋から丸いギザギザの円盤を取り出して両手に持って投げつける。

 普通ならそんな攻撃当たりはしないが、投擲スキルで命中補正の掛かった俺ならば当てられる。


「「ギャァァァ!!!」」


 見事ゴブリン達に円盤が当たる。

 俺が投げたのは電動丸ノコの換え刃だ。

 ギザギザの金属刃は投擲スキルの攻撃力補助によって深々と突き刺さっている。

 何よりその刃のギザギザが痛みにのた打ち回るゴブリンに更なる痛みを与える。

 知能が低いゴブリンはのた打ち回る事で肉に食い込んだ複数の刃が更に肉を切り裂く事に気付いていない。

 更に俺は工具袋に入っていたノミを取り出し、ゴブリンLv2に投げつけた。

 ゴブリンLv2はノミを回避しようと横に飛ぶが、横の食品棚ぶつかってしまう。 それでもかろうじてノミを避けれた事で安堵したゴブリンLv2だったが、俺が追撃で放ったノミを回避しきれず頭部に直撃する。

 ゴズッと音を鳴らしゴブリンLv2が崩れ落ちた。


「ギィィィィ!」


 ボスが倒された事でゴブリンが悲鳴を上げる。

 俺は手斧を持って残ったゴブリンに飛びかかる。

 そして一閃。

 俺の攻撃でゴブリンの頭は真っ二つに割れた。


 ◆


「真澄無事か!?」


 俺が肉コーナーに戻ると、丁度真澄もゴブリンを倒したところだったみたいで俺に親指を立ててくる。


「大丈夫だ。そっちも終わったみたいだな」


「ああ」


 互いの無事がわかると、俺達は倒れた女性の元へと向かう。

 真澄が女性の首に触れて声をかける。


「大丈……」


 だが真澄は何故か声をかけるのをやめてしまう。


「冷たくなり始めてる。脈も……無い」


「なっ!!?」


 それって、死んでるって事……なのか?

 俺達は冷たくなっていく女性の姿を、為す術無く見ているしかなかった。


「ん……」


 と、そこに小さな声が聞こえた。


「なんだ?」


 俺達は声の主を探す。もしかして誰か生き残りがいるのか!?

 声の主はすぐそこに居た。

 丸まった姿勢で倒れていた女性の下から、もぞりと小さな手が覗く。


「お、女の子だ!!」


 女性の下には、小さな女の子が眠っていた。

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