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第7話 兎退治

「ゴブリン達はスーパー側の壁際の通路の真ん中あたりにいる。兎が丁度店の真ん中に居るから、兎が動かないと倒してもゴブリンに追われる危険があるぞ」


 警備員室の防犯カメラの映像を見ながら、バックヤードの内側で待機している真澄に声を送る。


『分かった。壁際の通路を通って兎に近づく。ある程度まで近づいたら手斧を投げて攻撃する。ゴブリンと兎の動きの連絡を頼むぞ』


「了解」


 真澄はヤル気満々だ。確かに兎は足を怪我しているし、怖いのはゴブリンだけだからな。

 などと思っていると防犯カメラに真澄の姿が映し出される。

 さて、気合を入れてナビをしないとな。

 この店は横長形状をしていて、入り口のすぐ傍にレジがある。レジの前の通路を右にまっすぐ進むとスーパーの店内に入る。

このホームセンターは10mほどに並べられた棚を1つの島として、縦方向に3つ島があり、横方向には30の島がある。

島と島の間には長い通路があり、この通路に出ると建物の反対側の通路まで丸見えになってしまうので注意が必要だ。


「ゴブリンがスーパーの入り口に着いた。……お、丁度いいぞ、ゴブリンがスーパーに入っていった!」


 防犯カメラがスーパーに入っていくゴブリンの姿を確認する。


「兎は4つ目の棚を右に曲がるとお前から見て2つ先の通路にいる。そこから投げても当たらないから手前の棚で曲がって距離を詰めろ」


 店内では魔物に位置を悟られない為喋らないようにしている。だが防犯カメラ越しの真澄はかすかに首を縦に振る。了解したと言いたいんだろう。

 俺の指示に従った真澄が兎の居る棚の一個前の棚で曲がって真ん中の通路に向かって行く。


「もうすぐ兎が顔を出す。準備をしておけ」


 ある程度まで移動していた真澄が通路の途中で止まり、腰の工具ホルダーから手斧を取り出して構える。

 真澄はまだスキルを取得していないから心配だな。


「っ! 来るぞ!」


 カメラの映像が兎の動きを俺に教える。

 真澄は俺の声に従って手斧をブン投げた!


 ガンッ!!


 見事手斧は兎の一個先の通路から飛び出し、その先にあるペンキ缶にぶつかった。そしてペンキ缶から真っ赤な赤い液体が溢れ出す。


『おい……』


 店内では喋らないルールを忘れて真澄の声が聞こえる。


「スマン、もう一列左だった」


 だって防犯カメラって見づらいんだもん。

 真上からゲームみたいに神の視点で見れれば分かり易いんだけどさ、真澄のヤツよくコレで指示出せたな。


「兎とゴブリンは!?」


「ちょっと待て」


 真澄に指摘されてゴブリンと兎の姿を確認する。


「ゴブリンはスーパーから出てこない。兎は警戒してそのままの向きで後ずさってる」


『……』


 俺の報告を聞いた真澄は腰の工具ホルダーを確認する。

 手斧はもう投げてしまったからだ。

 真澄が予備の手斧を取り出す。


そして一旦真ん中の通路に戻り、兎が居る本当の列に向かう。


「キィ!!」


 通路の影から現れた真澄に兎が威嚇の声を上げる。

 兎ってあんな声だすんだな。

 真澄は兎の威嚇をものともせず、手斧を大きく振りかぶる。

 兎が身体を動かして真澄のほうへと向き直る。

 しかしその時には既に真澄の手から手斧は解き放たれていた。

 だが手斧は兎には当たらず背後の商品棚にぶつかる。

 兎が尻をあげ、突撃の姿勢をとる。

 あの足で走れるのか!?


 真澄は兎から目を逸らさず、工具ホルダーに手を突っ込んで武器を漁る。

 兎が走り出す。だがそのスピードは俺を追ってきた時に比べれば遥かに遅い。

 真澄は兎がある程度近づいてくるまで待ってから横っ飛びに逃げる。

 兎に近づかずにその場で投げたのは、攻撃を外しても兎の攻撃を回避する為か。

 兎は真澄の回避行動に反応出来ずそのまま通り過ぎる。

 回避して転がった真澄は即座に起き上がり、兎に向かって持っていた細長い工具をブン投げる。

 ここからじゃ何を投げたのか見えないな。


「キィッ!!」


 工具に当たった兎が悲鳴をあげる。

 その隙に真澄は場所を移動。

 目的は商品棚にぶち当たった手斧だ。

 すかさず拾うと、ペンキ缶に刺さった手斧も回収する。ダブルアックスだ。


『兎の位置と反応!』


 真澄から要求され兎を確認する。


「動いてない。けど首を動かして周囲を警戒してる」


 真澄は最初ペンキ缶に手斧を投げつけた場所へと戻っていく。

 途中の通路で兎のいる列に戻るつもりか?

 だが意外にも真澄は通路が交錯する十字路を突っ切っていく。


「おいおい、何処に行くつもりだよ!?」


 真澄はまっすぐ走っていくと、突然足を止める。

 一体なんのつもりだ?


『兎を見ておけ』


 真澄の声が届く。どうでもいいけど店内では会話無しはもう完全に無視されております。

 とりあえず指示通り兎を確認する。

 と、そこに斜め上から兎へ手斧が叩き込まれた。


「え!?」


 見れば真澄は真上に跳躍し隣の通路を視界に納めたうえで、商品棚越しに兎へと手斧を投げつけていたのだ。

 なるほど、確かにそれならギリギリまで近づけるわ。

 と思ったら真澄はまた走りだして十字路を曲がり、兎と同じ通路に入る。

 そして手斧を喰らって苦しんでいる兎に近づき、、思いっきり手斧を投げつけた。


「ギィ!!」


 トドメの攻撃を受けて兎が動かなくなる。

 兎が動かなくなったのを確認した真澄は近くにある長モノの商品を使って兎に刺さった手斧を引き剥がし、自分の元へと寄せる。

 随分と慎重だなぁ。

 手斧を回収した真澄がバックヤードに入ると再び真澄から声がかかる。


『スマホを確認したが、レベルが上がっていた。2Lvになった』


「おー、やったじゃん」


 スキルはまだ覚えれないけど、コレで戦いがマシに鳴りそうだ。


『一旦そっちに戻……』


 と、そこで真澄が動きを止め、後ろへ振り返る。


「どうした?」


『悲鳴が聞こえた。スーパーの方に人が居るぞ!』


「なんだって!?」


 真澄がスーパーに向けて走り出す。

 俺もまた、準備してあった獲物を掴んで警備員室から飛び出したのだった。 

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