第4話 レベルを上げよう
俺と真澄は保健室を出た後、武器と食料を確保する為の行動を開始した。
目的はホームセンターだ。
今の世の中で武器になりそうな物を簡単に手に入れる事の出来る場所はあそこくらいだ。あとホームセンターの近くにはスーパーが隣接している事が多い。っていうか確実にある。
だからそこで武器と食料を手に入れた後、拠点を手に入れるのが最初のミッションだ。
ゲームのスタートとしては申し分ない内容だぜ。
「巧、コイツを使え」
真澄がロッカーからモップを取り出して渡してくる。
「……いや、俺はこっちを使うぜ。これはお前が使え」
俺は真澄にモップを返すと廊下にあった消火器を手にする。
「それじゃあ重過ぎるだろ。モップのほうがリーチがある分安全だ」
真澄の言いたい事は分かる。
「大丈夫だ。見てくれよ」
俺は消火器をブンブンと振り回す。
確かに重いが精々500mlのペットボトルを振り回すくらいの重さだ。
「おま……」
俺が余りにも軽々とペットボトルを振り回すのをみて真澄が驚きの声を上げる。
「さっきモンスターと闘った時にレベルが上がったんだよ。お陰で体が妙に軽いんだよ。お前もレベルが上がれば分かるぜ」
「マジか」
「マジマジ」
「分かった。じゃあ次のモンスターは俺にトドメを刺させろよな。2人で均等にレベルを上げたほうが片方が足手まといにならなくて済む」
「オッケー」
武器を手に入れた俺達は、意気揚々と町へ駆け出した。
◆
「逃げろ巧!!」
「分かってるよ!!」
ホームセンターを目指していた俺達は、偶然遭遇した魔物に攻撃を仕掛けた。
モンスターはさっき俺が倒した緑のバケモノ、ゴブリンと仮称しよう。
ソイツを一回り大きくした感じで、手にはゴブリンが使っていた棍棒よりも大きい黒光りする棍棒が握られていた。
レベルが上がった俺の力なら、不意打ちをすれば倒せるんじゃないかと思った俺は真澄に攻撃を進言し、その通りに行動した。
こちらに気付いていないデカイゴブリンが向こうを向いている隙に後ろから消火器を全力でフルスイングしたのだ。
デカイゴブリンは俺の一撃を受け地面に倒れた。
ただ、その時のショックで消火器の中身が噴出し、驚いた俺は消火器を手放してしまった。
それがいけなかった。
デカイゴブリンは立ち上がり俺達を睨む。
「巧、逃げるぞ!!」
真澄が撤退の声を上げる。
「グギャァァァァァァオ!!!」
デカイゴブリンの雄たけびが轟き黒い棍棒を振り上げる。
危険を察知した俺は慌てて後ろに飛び退る。
直後にデカイゴブリンの攻撃がアスファルトを破壊し、その下の土を露出させる。
「ど、道路が!?」
「逃げろ、あれはムリだ!!」
俺は先に走り出していた真澄を追って駆け出す。
つーか先に逃げるとか酷くね!?
「グギャギャギャギャ!!」
デカイゴブリンが俺達を負うべく走り出す。
ズルッ、ベチャ!
しかしデカイゴブリンは消火器の泡に滑って転んでしまった。
「うわダッセ」
「笑ってる場合か! 今のうちに引き離すんだ!!」
「お、おう!!」
こうして俺達はデカいゴブリンとのおっかけっこをする事になっちまった。