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第28話 再開の約束

これにておしまいです。

ご愛読いただきありがとうございました。

「あー、疲れたー」


「ですねー」


 俺と皐月ちゃんは、朝日を見ながら寝転がっていた。

 流石に何時敵が来るか分からないから寝る訳にはいかないが。


 イベントの終了まであと数時間、残った食料を全部出してちょっと豪勢な食事としゃれ込む。

 といっても携帯栄養食やスポーツドリンクだけどな。


「それにしても、イベントって大変なんですねー。これだと次のイベントの参加は考えちゃいますよ」


 フルーツ味の携帯栄養食をモグモグしながら皐月ちゃんがため息をはく。

 ちなみに俺はチョコ味だ。


「けど強制参加イベントが在るかもしれないから、今の内にレベルを上げておいた方が良いだろうな」


「強制……」


 強制イベントと聞いて皐月ちゃんがげっそりとした顔をする。


「まぁ何かあったら連絡を取り合おう。メアドも交換したしさ」


「あ、そうですね! 確か巧さんはO市のホームセンターに立てこもってるんですよね」


「ああ、複合型の建物だからスーパーや服屋とかもある。立てこもるにはもってこいさ」


 正直な話、あの時ホームセンターを目指したのは正解だった。ただ武器を探しに行っただけだったが、結果的には食料を確保できたし、折羽ちゃんも助ける事が出来たもんだ。……母親の事は残念だったけどさ。


「元気がありませんが、どうかしたんですか?」


 折羽ちゃんの母親の事を思い出していたのに気付かれたらしく、皐月ちゃんが気遣ってくれる。

 良い子だ。魔法少女だけど。


「いや、これで皐月ちゃんの魔法少女姿を見られないと思うと残念だなぁってさ」


「っ!?」


 皐月ちゃんはピンクスライムによって服を溶かされた事を思いだして顔を真っ赤にする。


「に、二度とあんな恰好はしません!!」


「そりゃ残念」

 

「もぉー!」


「ははははっ」


 風が頬をなでる。近くに湖があるからか、風は少し冷たい。

 戦いの連続で火照った体には心地よい涼しさだ。


「皐月ちゃんさ、俺達と一緒に暮らさないか?」


「えっ?」


 ちょっとイキナリだったかな。けどイベントが終わる前に言わないとチャンスを無くしそうだ。


「一人だと色々危険だろ? 食料もいつか無くなるだろうし、こっちに合流したほうがいいと思うんだ」


「うーん、そうですね」


 下心が無いわけではないが、女の子が一人で生きるには危険すぎるのもある。


「でも迷惑じゃないですか? 私今回のイベントじゃ巧さんに迷惑かけてばかりだったし」


 いやいや、寧ろお礼を言うのはこちらである。いろいろな意味で。


「そんなことないさ。それに俺達の中には小さな女の子も居るから、同性の友達もいた方が良いと思うんだ」


「女の子?」


「ああ、俺達が立てこもったスーパーで保護したんだけど、母親は助ける事が出来なくてね。だから皐月ちゃんが合流してくれると俺達も助かるんだ」


「小さい子ですか」


 皐月ちゃんが考え込む。


「そう……ですね。小さい子がいるのなら同性がいた方が色々良いですよね。何歳くらいなんですか?」


 ん? 折羽ちゃんの歳か、たしか……


「だいたい6歳前後かなぁ」


「6歳前後……」


 やはり小さな女の子を男所帯において置くのは心配なんだろうな。

 皐月ちゃんは顔を上げて俺を見つめる。 


「分かりました。巧さん達と合流します」


 よっしゃ! 折羽ちゃんありがとう!!!


「ああ、宜しく頼むよ」


「こちらこそ。それに巧さんと一緒にいた方が、私の生き残りやすいと思うんですよ」


 は? 何でそんな結論になる訳?


「だって昨晩の戦い、巧さんの指揮凄かったじゃないですか。敵の動きを読んで何重にも策を練って。まるで歴史漫画に出てくる軍師みたいでしたよ」


 皐月ちゃんの俺を見る目が潤んでいる。

 これはアレか? チャンスなのか?

 生き残る為とはいえ、ノリで戦術スキルを取得した事が俺にとってトンデモナイラッキーを生み出したのか!?

 落ち着け、これは間違いなくチャンスだ。

 これを上手く生かせば彼女居ない暦=年齢に終止符を打つ事が出来る!


「皐月ちゃん!」


 俺は皐月ちゃんの肩を掴み抱き寄せる。


「は、はひ!?」


 俺の突然の行動に皐月ちゃんが目を白黒させる。


「皐月ちゃん、俺は……俺は!」


「ははははははい!」


 皐月ちゃんの顔が赤い。ただ驚いているだけじゃ、こうはならない!

 コレはイる!


「皐月ちゃん、俺は君が……」


 と、その時だった。

 皐月ちゃんの体が薄く光始める。


「あ、私もそろそろ帰るみたいです」


 な、なんだってぇぇぇぇぇ!!

 このタイミングでそりゃ無いよぉぉぉぉぉ!!!

 だが光は俺の悲しみを嘲笑うかのように輝きを増してゆく。


「あの、私準備が出来たら連絡します!」


「あ、ああ。そしたら迎えに行くよ。女の子一人じゃこっちに来るのは大変だろ?」


「ありがとうございます。でも私からも向かうので、後で落ち合う場所を決めましょう」


「ああ、分かった」


「それと……」


 輝きに包まれた皐月ちゃんが俺を見つめる。

 

「次にあった時は、さっき言おうとしていた事の続きを教えてください!」


 明らかに朱に染まった頬の色で皐月ちゃんは言った。

 そして次の瞬間、彼女は光と共に姿を消した。


「行っちまったか」


 無人の大地に吹く風は、少しだけ寒く、それ以上に心は熱かった。


 ◆


「ただいまー」


 帰還の光と共に俺はホームセンターへと戻ってきた。


「おう、お帰り。首尾はどうだった? つっても相手はスライムだから楽勝か」


「おかえりー!」


 真澄と折羽ちゃんが迎えの声を上げる。


「ただいまー。イベントのほうはアレだ。マジに殺しに掛かってきたわ」


 俺は抱きついてきた折羽ちゃんを持ち上げて高い高いをしつつ、真澄にイベントの内容をサクッと伝えた。


「マジか。こりゃあ今後もヤバイイベントが増えそうだな」


「ああ、そうだな」


俺は折羽ちゃんを抱きしめたまま、ホームセンターの床に寝転がる。


「ああそうだ。もう少ししたら友達ができるぞー」


「友達?」


 折羽ちゃんがきょとんとした顔で俺をみる。


「ああ、向こうで出会った女の子がここに来るんだ」


「巧お兄ちゃんの友達?」


「ああそうさ。折羽ちゃんの友達にもなってくれるってさ。良かったな」


「新しい友達ー!」


 折羽ちゃんが嬉しそうにはしゃぐ。


「お前、イベントで女の子をナンパしてたのかよ」


 真澄が呆れた声をあげる。


「ナンパじゃなくて仲間集め。優秀な仲間は多いに越した事ないだろ」


「はいはい」


 真澄は呆れ顔だ。


 その場を生き残る為に取得した戦術スキルだったが、そのお陰で俺達は生き残り新しい仲間を得る事となった。

 しかし俺はこのスキルでこれからも新しい仲間と出会う事になる。

 ゲームとなった世界で、レイドバトルを勝利に導く軍師として。


 いずれこの世界を救う俺達の冒険はここから始まるのだった。

 

             ~完~

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