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第24話 夕方の城壁

 ボスだったブラックスライムを倒した事で手に入れたレアアイテムやスキルポイントなどの確認が終わった俺達は、地面にへたり込んで休憩をしていた。

 ポーションでHPとMPが回復できても体力は回復しないし、気分的な疲れが在るからだ。


「コレでイベントクリアって事なのかな?」


 地面に寝転んだ恭一郎がふと呟く。


「終わりだろ。ボスを倒したんだしよ」


 隼人が即断で答える。


「でもさ、ゲームならボスを倒してイベントが終わったら、そのまま元の場所に送られるモンじゃないかな? なんで元居た場所に帰れないんだろう?」


 そういえばそうだな。

 

「そういえばメールでイベントの開催期間は24時間って書かれてたけど、ボスを倒したら終了ってかかれてはいなかったよね」


 と、涼華がスマホのメールを確認しながら会話に参加してくる。


「じゃあまだイベントが続くんだ」


 怪我人の治療が終わった美香が戻ってくる。

 俺はスマホで時間を確認する。

 今は夕方の……もうすぐ5時か。俺がイベントに参加したのは朝の9時。

 残り16時間……って結構長いな。

 ここで一旦休憩をして、いやその前に寝床を確保しないといけないな。


「なぁ、寝床を確保しにいかないか?」


「うむ、夜も敵は襲ってくるであろうからな。守りは固めるべきだろう」


 大歳坊のオッサンも賛成の意を示す。


「んじゃ、ちょっと声をかけてくるか」


 俺は立ち上がり、ボス戦が終わってだらけている連中に声をかける。


「おーい、暗くなる前に野宿の準備をしようぜ! モンスターから身を守れる様に守りを固めたいんだ。手伝ってくれ」


「普通のスライム程度なら火を燃やして、交代で見張りを立てておけば大丈夫じゃね?」


 疲れて動きたくないのか、何人かがそーだそーだと賛成の声を上げる。


「ロックスライムみたいに硬い奴もいるし、疲れてる時に夜行性のスライムが襲ってくるかもしれないだろ。それにゲームなら夜にモンスターの出現率が上がる可能性がある。安心して眠る為に力を貸してくれ」


 皆が顔を見合わせる。俺の理由に対して、それはゲームの話だろとはとても言えなかったからだ。なにしろ今は現実がゲームになってしまったんだから。


「わかった。ささっとやっちまおうぜ。何をすればいいんだ?」


「食料と水の確保。それに灯り付け続ける為の篝火を作れる木の枝と薪を頼む。土魔法が使える奴は廻りに塀を作ってスライムが内部に入れないようにしてくれ。食料や薪を回収したら出入り口も埋めてくれ」


「あ、俺土魔法使える。けど一人じゃかなり無理だな。誰か手伝ってくれ」


「俺ストーンショット使えるからそれも積んでくれ」


「某の身体強化魔法で黒いスライムが吐き出したコンクリートの固まりを運んでこよう」


 大歳坊のオッサンが塀作りに手を挙げてくれる。こういう時、大人がいると安心感があるな。


「私、水魔法を使えるので真水は大丈夫です」


 皐月ちゃんも自分の魔法をで役に立とうとしている。


「よっし、俺が狩りをして肉をゲットして来てやるよ。いくぜ恭一郎!」


 隼人は体を動かしたいらしく、狩りを申し出てきた。


「分かったよ。一緒に食べれる野草とかを探してくるよ」


「分かるのか?」


 恭一郎の意外な申し出に、つい聞いてしまうと、恭一郎はポケットからスマホをだして言った。


「ネットで調べるよ」


 成程、納得である。


「分かった。頼むわ」


「おう! 任せろ!」


「暗くなる前に戻ってこいよー」


 隼人に付いて行く様に、数人の男達が狩りに出かけていった。


 そんじゃ俺達も仕事をしますかね。

 塀作りは地属性の魔法を使う連中に任せるとして、数人は作業を円滑に進める為に周辺のモンスター退治をしてもらう。

 あと予想通り調理器具が無いので、食事は原始的な串焼きなどになりそうだ。

 自分の分の食料なら、バランス栄養食のスティックが在るんだが、うっかり即イベント参加をした奴とかは何も用意せずにここに来ている。疲れている所で食料が無いと要らぬトラブルが発生するかも知れないからな。

 一応隼人達が失敗した時の為に魚釣りの準備をしておくか。

 俺は氷魔法と風魔法、それに雷魔法の使い手達を集めて、湖の辺へとやって来る。


「俺等釣竿とか持ってないけどどうやって魚を捕るんだ?」


 呼ばれてきた連中が自身なさそうに俺に聞いてくる。


「ネットで調べたんだけどさ、釣竿を使わずに魚を捕る方法ってのは在るんだよ」


 へー、と感嘆の声が聞こえる。


「まずアニメや映画でおなじみの電撃攻撃。近くの魚が痺れて浮かんでくる」


「ああ、見た事ある!」


「そしてダイナマイト漁にガチンコ漁。すごい音や衝撃で魚を気絶させる奴だ。ウインドハンマーみたいな風の塊をぶつける魔法を一箇所に集中させればおどろさせる事が出来るだろ。浅瀬なら美味くすれば魚を吹っ飛ばす事が出来るからそれで気絶すると思う」


「攻撃魔法をそんな事に使うのか」


「じゃあ氷魔法は魚を水ごと凍らせるのか?」


 おお、なかなか鋭い。


「それでも良いし、魚の周囲の水を凍らせて氷の檻を作ってもいいな」


 なるほどなーという声と共に、自分の魔法をどう使えば魚が取れるのかを考え始める参加者達。


「火属性魔法なら水を速攻で沸騰させて煮魚に出来るんじゃないのか?」


「試してみるか」


 アイデアが出た連中が次々に動き出し、初めての魔法漁を開始される。

 皆初めての事に動き出すまでが遅かったが、一度動き出せば流れる様に動き出した。


「おーい、氷魔法が足りないから手伝ってくれよ」


「分かった」


 氷魔法グループに呼ばれたので俺も漁に参加しますか。


 ◆


「おー、リッパな壁が出来てるじゃねぇか!」


「立派かなぁ?」


 狩りから帰ってきた隼人達が出来上がった塀を見て感想を口にする。

 確かに恭一郎の言うとおり、完成した塀はコンクリートや岩の間に石を詰め込んだなんちゃって城壁だ。

 けどボスはもう倒したし、残る相手は普通のスライムなのでこれでも十分耐えられるだろう。


「猪狩って来たぜ! 俺様の風魔法が猪を一撃ノックアウトよ!」


 ビシッっと親指を天に突き立てる隼人。

 なんだろう、サタデーでナイトなポーズに見える。


「実際はそんなスマートにはいかなかったけどね。あ、これ食べられる野草だよ」


 と、その時だった。

 ポケットの中の携帯がブルブルと震え、メールが届いた事を教えてくれる。

 実はさっき漁をしていた時に、着信音が鳴るのが危険でもイベント告知メールとかが来る事があるから、バイブくらいは設定しておけと忠告されたのだ。

 言われて見ればその通り、ついつい着信音でピンチのなった所為で過剰に着信にビビッていたみたいだ。

 俺は携帯のメールを開く。

 するとそこには【夜になり魔物の発生率が上がりました】と書かれていた。


『ここまで生き残った皆さんお疲れ様です。この時間より魔物の凶暴性と発生率が上昇いたしました。夜の魔物は昼に遭遇する時よりも強くなっております。また、夜にしか行動をしない魔物もいますのでお気をつけ下さい』


 やっぱり何か起きたか。


「よし、出入り口を埋めてくれ!」


「任せろ!」


「ふんぬぅ!」


 身体強化魔法の持ち主が岩を積み、スキマに石と土が埋められていく。


「見張りは二時間交代で上から見張っててくれ」


「分かった」


塀の構造は鋭角な台形をしていて、内側には塀の上に登るためのバリアフリーが作られていた。

 この構造にする事で上から一方的にスライムを攻撃出来るからだ。

 イベントでレベル上げやアイテムを買い溜めしておきたい連中の要望である。

 見張り用の櫓にもなるので担当の土属性の使い手達に頼んでおいた訳だ。


「んじゃ夕飯を作るから刃物持ってる奴は料理できるヤツ等に貸してやってくれ」


 モンスターと闘う用に持っていたのか、意外にも刃物持ちは多かった。


「調理するのは良いけど、鍋もフライパンも無いから焚き火で串焼きくらいしか出来ないわよ」


 包丁で魚を捌きながら涼華が愚痴をこぼす。っつーか料理できたんですねー。


「私が料理できるの可笑しい?」


「ソンナコトナイヨー」


 ギラリと包丁を輝かせながら言わないで下さい。


「わ、私もお料理できます!!!」


「お、おう!?」


 何故か皐月ちゃんが料理宣言をしてくる。なんぞこれ?


「あ、あとフライパンならコレでどうだ?」


 俺は大歳坊のオッサンに持ってきてもらった面が水平な岩を指差す。

 そして岩に向かってファイアアローの魔法を連発する。

 そして皐月ちゃんに用意してもらった水を焼けた石にかけて沸騰させる。

 熱湯消毒だ。


「ああ、石焼きって訳ね。良いじゃない」


 ワイルドなアウトドア調理がお気に召したらしく、早速魚や猪の肉を焼いていく。


「くぼんでいる岩があればスープも作れるのにね」


「なら今から作ろう」


 大歳坊のオッサンが、まだ熱していないフライパン岩に拳を当てる。


「フンッッッッッッ!!! 」


 ボッ! っという音がなると、なんと岩の拳を当てていた部分がパキッという音を立てて割れた。


「はぁ!?」


 このオッサン、拳で岩を割ったのか!?


「コレくらいの深さでどうかの?」


そう言って割れた岩を取り除いていくと、まるで餅突きの臼の様にくぼんだ穴が現れる。


「おっけー、皐月ちゃん、水で中の細かい石を洗い流して」


「は、はい!」


 涼華の指示を受けて皐月ちゃんが石鍋の中を洗い流す。

 つーか普通驚くのが先だろ。涼華の奴、普通に流したぞ。


「火をお願い」


「あ、ああ」


 涼華に促されて、俺は石鍋に炎の矢をぶち込む。


「次、水ね」


 涼華が皐月ちゃんに新しい水を要求する。


「はい、ウォーターシュート!」


 皐月ちゃんが出した水が岩の熱で沸騰する。

 そして恭一郎が獲ってきた食べられる野草と魚の残りを入れていく。


「調味料があればよかったんだけど、流石にそれは贅沢ね」


「だったらコレはどうだ? グリーンスライムの毒消しポーションがコンソメスープ味だぜ」


 何処から持ってきたのか、隼人がフラスコを手に会話に参加する。


「ちょっと塀の上でポーションの飲み比べ大会をやっててよ。ちょっと飲んでみろよ」


 なんだその闇ジュース大会は。

 隼人から毒消しポーションを受け取った涼華が手のひらに少しだけ注ぐと舌でぺろりと舐める。勇者だ。


「……確かにコンソメスープ味ね。おっけー、コレを基礎の味にしましょ。他のポーションも持って来て」


「「「「えっ?」」」」


 思わず近くに居た連中が声を上げる。


「分かった。ちょっと待ってろ!」


「おい馬鹿止めろ!」


 だが、俺達の静止にも止まらず、隼人は塀の上へポーションを取りに行ってしまった。

 意外にも、出来上がったスープは大変美味しかったです。


 ◆


 意外にも美味いポーションスープと猪焼肉を食った俺達は、見張りと交代して彼等にも食事を取って貰う事にした。


「気をつけろよ、スライム共妙に暴れまわってるからな。塀を壊されないように近づいたら魔法で攻撃してくれ。レッドスライム用の水はそこにあるから、足りなくなったら水魔法使いに頼んでくれ」


「分かった」


 交代した俺達は堀の上から下を見る。

 懐中電灯や篝火の灯りはあるが、やはり町中では無いので灯りが心もとない。


「お、ブルースライムが来たぜ! 喰らえウインドハンマーっ!!」


 隼人が体を斜めに傾けた変なポーズをとってブルースライムに魔法を放つ。


「あれ?」


「どうした?」


 隼人が顔を驚いた顔でブルースライムを見ている。

 あと姿勢が悪いのか足元がプルプルしてる。


「攻撃でも外したのか?」


「いや、当たったんだけどよ、生き残ってら」


 ブルースライムが? アイツは一発当たれば死ぬだろ?


「当たり所が良かっただけじゃないのか?」


「かなぁ? おらっウインドハンマー!」


 隼人が体を捻りながらもう一度ブルースライムに魔法を放つと、ブルースライムは跡形も無く消滅した。

 その変なポーズ意味あるのか?


「うーん、やっぱ気のせいだったか?」


「そう言う事もあるだろ」


 隼人がスライム退治にノリノリなので、見張りに集中しながらスキルの使い道を考えていた。

 今回の戦闘でレベルが2上がって16Lvになった。

 これでスキルポイントが2増える。

 更にブラックスライムと分裂した時に表れた未遭遇スライムが4種で合計5P、ボスの弱点発見でスキルポイントボーナスが5P。

 これに元々持っていたポイントと合わせる事でスキルポイントは19Pになった。

 これなら【複合魔法1Lv】と知識系スキルが1つ取得できる。

 知識系スキルは【研究Lv1】【戦術Lv1】【解析Lv1】【看破Lv1】の4種類だ。

 【研究Lv1】は今の俺には関係ないからいらない。

 【戦術Lv1】はバトルをメインにするならあって損はないな。っていうか欲しい

 【解析Lv1】は今後便利なアイテムを手に入れた時、量産するのに使えそうだから急ぎでは無いけど欲しいな。

 【看破Lv1】は敵の弱点を付く事が出来る様になるからコレが一番欲しいところか。

 となると【看破Lv1】とあともう1つ攻撃魔法が欲しいな。

 まだ持っていない属性の攻撃魔法を手に入れるか。それとも【複合魔法1Lv】を取って2属性同時攻撃でダメージを確実に与えるか。この魔法のいい所は弱点を突きやすい所と威力が上がるところだ。

 けどダメージの上昇率はLv2魔法の方が上だろうから、知識系スキルをガマンして取得している攻撃魔法をLv2にするのもアリか。

 ポイントに余裕が在るっていいなぁ。

 今の所スライム達の弱点を調べる必要も無いから【看破Lv1】は次にレベルが上がった時でもいいかもな。

 今持っている魔法は炎と氷だからまだ持ってない属性で俺が取得出来るのは風と土属性か。他の属性の攻撃魔法は無いから皐月ちゃんのスターライトとかは特殊な取得条件を満たす必要があるんだな。

  

「なぁ」


 俺はスライム退治に夢中な隼人に声をかける。


「何だ?」


 隼人はこちらを見ずにスライムと戦いながら返事をする。

 俺もスライム退治しないとな。

 魔法で下のスライムを攻撃しながら隼人への質問をする。


「お前は新しい魔法を覚えないのか?」


 すると隼人は良くぞ聞いてくれましたと

言わんばかりにポーズを取ってこちらに向き直る。だからそのポーズなによ。


「実は俺は身体強化魔法を取得しようと思ってるんだ!」


 ああ、大歳坊のオッサンが使ってるアレか。

 アレは確かに接近戦で役に立つよな。


「けどアレを覚えるには武術を覚える必要があるみたいでよ、だから俺はイベントが終わったらタイサイボーのオッサンに弟子入りしようと思ってるんだ。その為に住所と電話番号も聞いた!」


 そういやさっきの休憩中もお互いのメアドや電話番号を交換してるヤツ等が多かったな。イベントが終わったら合流してみるのもありかもしれない。


「男なら拳で闘うのがロマンだろ? だったら格闘技を学ぶのもありだと思うんだけどよ、やっぱ覚えるならカッコイイ方が良いじゃん?」


「小学生レベルの理由だな」


「複数の古武術を自分流に昇華させた大歳無双流! 強そうじゃん!」


 あのオッサンそんな流派名乗ってたのかよ。


「巧も一緒に弟子になるか?」


 誘うな馬鹿。


「俺は遠慮しておくわ」


 武術は興味あるが、近接系か魔法系かを決めてないのにイキナリ弟子入りは出来んわ。

 などと話し込んでいると、バリアフリーを登って数人がやって来た。


「そろそろ交代だ」


「おう、サンキュ」


 俺と隼人は交代要員と交代して休憩に入る事にした。


 ◆


「お疲れ様です」


 見張りを終えた俺達に皐月ちゃんが水を差し出してくる。


「サンキュ」


「おう、サンキュー」


 受け取ったマグカップを一気にあおり水を飲み干す。

 塀の上で見張りをしていた時はずっとスライムに魔法を打ち続けていたので結構疲労が溜まっていたみたいだ。昼間もずっと闘っていた訳だから当然か。


 周囲を見ると、見張りを終わったヤツ等はそこら辺に雑魚寝を始めていた。

 逆に今まで寝ていたヤツ等は交代要員としてあくびをしながら塀の上に向かっていった。


「巧さんも眠っておいた方が良いですよ」


 確かに、既に隼人は地面に寝転って眠っている。


「そうだな……っと、ちょっと良いかな?」


「はい、何ですか?」


 皐月ちゃんは無防備に俺を真正面から見つめる。

 何か言いにくいな。


「あのさ、このイベントが終わった後でも連絡が取れるようにメアドと電話番号を交換しないか?」


 ふぅ、何とか噛まずに言えたぜ。

 ここで失敗したら恥ずかしすぎるからな。


「あ、良いですね! 是非お願いします!」


 一切の下心が無い皐月ちゃんは喜んで快諾してくれた。

 りょ、良心が痛んだりしてないからな!


「私の電話番号はですねー」


 俺達はお互いの電話番号とメアドを交換しあう。


「それじゃ俺はそろそろ寝るわ」


「はい、おやすみなさい」


 皐月ちゃんはこれから見張りに参加するらしく、塀の上に向かっていった。

 

「っしゃっ!」


 俺は小声でガッツポーズを取る。

 そんじゃ気分良く眠らせてもらいますか。


 ◆


 遠いような近いような、ぼんやりとした意識の中、わーわーと大勢の人が声を上げている夢をみていた。

 篝火の中、土の壁に囲まれた人達が必死の形相で走り回っている。

 随分とアグレッシブな夢だ。


「起きろーっっっっっっ!!!!」


「っ!!!!?」


 耳元で怒鳴り声が響いた事で意識が強制的に覚醒する。


「起きなさい! 非常事態よ!!!!」


 俺を起こしたのは美香だ。 向こうでは隼人が涼華に起こされている。


「何があったんだ?」


「大変なのよ! スライムが塀の中に侵入して来たのよ!!!!」


「…………っ!? な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇ!!?」


 そうして、最も長い夜が始まった。

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