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第22話 スライムボミット

 出現した黒いスライムに、俺達の放った多種多様な魔法が炸裂した。

 黒いスライムの全身が燃え、氷、溶け、弾け、切り裂かれていく。

 燃えたところが、解けた所が凹んでいく。


「効いてるぞ!!」


 歓声があがる。

 だが次の瞬間、黒いスライムが全身を振るわせた。


「何だ!?」


 俺達が身構えると、黒いスライムは全身から何かを吐き出した。

 塊の大きさは大小さまざま、大きい物は1m以上は在るんじゃないか?


「全員回避ー!」


 大歳坊のオッサンの号令で我に帰った俺達は慌てて逃げ出す。

 しかし慌てて逃げ出そうとした事で、女の子の一人がバランスを崩してコケてしまった。


「痛っ!」


 しかも運の悪い事に足をくじいてしまったみたいだ。


「危ない!!」


 運の悪い事は重なる。足をくじいた女の子に向かってスライムの吐き出したモノが降り注いだ。


「きゃあぁぁぁぁ!!!」


 だが女の子とスライムが吐き出したモノの間に大歳坊のオッサンが立ちはだかる。


「そもさぁぁぁぁぁんっっっっ!!!」


 謎のかけ声と共に正拳突きを放つ。

 普通なら拳が耐えられない。

 だが大歳坊のオッサンは身体強化魔法の使い手。

 なんと1mはある巨大な塊を素手で破壊してしまった。


「あ、ありがとうございます」


 回復魔法の使い手がやって来て女の子の足に回復魔法をかける。

 ……いいなアレ。俺も回復魔法覚えようかなー。


「お、おい。何だコリャ!?」


 と、その時だった。黒いスライムの攻撃を回避した連中が、吐き出されたソレを見て困惑の声をあげる。

 その声に釣られて俺も吐き出されたモノに視線を向けた。

 スライムの吐き出したモノ、それは……


「窓ガラス?」


 それは窓ガラスだった。地面に吐き出された衝撃ガラスは粉々に割れてしまっているが、残った窓枠から窓ガラスだとわかる。


「こっちは鉄筋コンクリートだ」


「道路のアスファルトか?」


「モールの看板かこれ?」


「階段?」


 他に吐き出されたのも建物関係のものばかりだった。


「けどコレ、溶けてないか?」


「え?」


 それはアスファルトを避けた奴の言葉だった。

 ソレに釣られて皆の視線がアスファルトに向く。

 確かにアスファルトは飴の様に半分くらい溶けていた。


「もしかして、あのスライムが食べたのか?」


 まさかそんな筈は、誰もがそう思った。

 だが、周囲を見回せば、散乱した建物や道路の残骸によってその推測の信憑性を否が応でも高めた。


「どうやら、あ奴は人間の作った人工物を破壊する為に存在しておるようだの。この世界を遊戯に変えた神の命じるままに」


 大歳坊のオッサンの言葉で俺は重要な事に気付いた。


「もしかして、ここはイベント用に用意された場所じゃなくて、日本のどこかなのか?」


 コレまで一切の人工物を見なかったのは、あの黒いスライムが近隣の人工物を食い尽くしていたからでは?


「このイベントは、ただのゲームイベントじゃなくて……人間が作りだした人工物を破壊する敵を倒せってイベントなんじゃないのか?」


 誰もそれに反論しようとする奴は居なかった。

 目の前に広がる人工物の残骸を見ればそれは明らかだからだ。

 生き物を食べずに文明の産物だけを食べるモンスター。

 それは俺達人間にとって最悪の敵じゃないか。


「くだらねぇ事くっちゃべっててねぇで闘えクソ野郎共!!!」


 一際大きな爆発と共に放たれた一言で俺達は正気に戻る。

 見ればヘルトアルメーコーアの連中が黒いスライムに追撃を掛けてた。


「物を食うとかどうでもいいんだよ! 俺達はコイツ等を倒しに来ただけなんだぜ! コイツはイベントのボスキャラ! さっさと攻撃を再開しやがれ役立たず共!!!」


 物言いはむかつくが、コイツ等の言う分は最もだ。

 どのみちこの黒いスライムを倒すのが俺達のやる事なんだからな。


「また反撃が来るぞ! 避けろ!!」


 参加者の誰かの声に従い全員が新たに吐き出された人工物を回避する。

 今回は避けそこなった奴いないみたいだ。


「どうやら攻撃を受けると取り込んだ物を吐き出すみたいだね」


 恭一郎が冷静に状況を理解する。


「あの黒いスライムの大きさを考えれば体内の人工物はそれほど多くは無い。何度も攻撃して吐き出させればいつかは攻撃の手段を失うと思うよ」


「よっし、それで行こうぜ! 俺も面倒くせえ事はさっぱりだからな。ヒャッハー!」


 隼人が早々に考える事を放棄してスライムに魔法を放つ。


「言えてるわね。倒せばコレ以上建物を食べられないで済む」


 美香達もそれに賛成のようだ。

 他の参加者達も気を取り直して攻撃を再開していく。


 ◆


「よし、攻撃しても人工物を吐き出さなくなった!」


 反撃が無くなった事でイベント参加者達が歓声を上げる。


「「油断するな!」するんじゃねぇ!」


 ヘルトアルメーコーアの連中とセリフが被る。


「「ゲームなら敵が新しい攻撃パターンで反撃してくる筈だ! 全員警戒しろ!!」」


 また被った。

 思わずお互いの顔を見てしまう。


「お前、見込みがあるな。その気があるなら俺達のチームに入れてやってもいいぜ」


「そりゃ光栄っスね。とりあえず……コイツを倒してからって事で!」


 ヘルトアルメーコーアのメンバーがここで一気に魔法を連発していく。

 高レベルの魔法はMP消費が激しいのか、MPポーションをガブ飲みしながらの自転車操業だ。あれだけ飲むと腹がキツクならないのかな。


 黒いスライムの体がグネグネを動き出す。

 全身が沸騰したお湯の様にボコボコと蠢いている。

 何をするつもりだ?


 そして黒いスライムの体が弾けた。


「避けろーっ!」


 大量の黒い塊が大地に降り注ぐ。


「うわぁぁぁぁぁ!!!」


 回避し切れなかったヤツ等が悲鳴を上げて転げまわる。


「湖に飛び込んで洗い流せ!!!」


 俺の言葉を理解できた連中が湖に駆け込む。


「水魔法を使えるヤツ等はダメージ与えても良いからパニックに陥ってる奴の体を洗い流せ!」


「は、はい! ウォーターシュート!!!」


「ウボァッ!!!」


 皐月ちゃんの水魔法が炸裂し、黒い塊を吹き飛ばしたは良いが自分も一緒に吹き飛ばされる男達。


「ご、ごめんなさい!」


「いいから誰か回復してやってくれ」


「はいはい。ヒール!」


 涼華が傷口を回復魔法で治療していく。


「なぁ、これってあのスライムの体の一部じゃないのか?」


 黒いスライムの攻撃を回避した参加者が地面に打ち付けられた塊を見て告げる。


「どれどれ?」


 確かに言われてみれば黒いスライムの体の一部だ。

 って事はあの黒いスライムは……

 全員の視線が黒いスライムに集まる。


「小さくなってる」


 美香の行ったとおり、黒いスライムは小さくなっていた。


「よし! 攻撃を続行するぞ!」


「「「応っ!!!」」」


 ボスの予想外の脆さに驚く俺だったが、コレだけの参加者が集まっているのだから、それだけボスに多くのダメージを与える事が出来てもおかしくないのかもしれない。

 それに今回は俺達よりも上位の攻撃魔法の使い手達が居る。そいつ等の攻撃力も大きな要因となっている事だろう。


「喰らいやがれ!!!」


 隼人がやる気マンマンで黒いスライムに攻撃を加えていく。

 他の参加者達も負けじと黒いスライムに攻撃を加え、黒いスライムは何度も自身の体を弾けさせては体積を少なくしていった。

 そして遂に。


「これでラストだぜぇぇぇぇ!!!」


 ヘルトアルメーコーアの一斉攻撃で黒いスライムは完全にはじけ散った。


「よっしゃ、間に合ったぜ!!」


 何が間に合ったのだろうか?


「よし、レアアイテムを確認すっぞ!」


 ヘルトアルメーコーアの連中は、運営が報告していた強力なモンスターを倒した際に貰えるという報酬を確認する為にスマホを操作しだす。

 しかし。


「なんだ!? 新しいメールも交換アイテムも表示されねーぞ!?」


 どうも討伐報酬が振り込まれていないらしい。

 と言う事は……


「うわぁぁっ!?」


 誰かの悲鳴が上がる。

 これはまさか……


「やっぱり」


 予想通り、黒いスライムから飛び散った体の一部が蠢いている。


「まだボス戦は終わってないぞ! そいつ等を倒せ!」


 俺もみんなに指示を与えながら炎の矢で近くの飛び散った黒いスライムの体を焼き尽くす。

 しかし、炎の中から黒いスライムの欠片が表れる。その体は全くダメージを受けている様子が無かった。


「くそ! 時間がねぇんだよ!! ファイアジャベリン!!」


 ヘルトアルメーコーアのメンバー達が近くに居る黒いスライムの欠片に攻撃を始める。

 だが彼等の攻撃でも黒いスライムの体を破壊する事はできなかった。


「どういう事だ!?」


 バトルが二戦目になって敵の属性が変わっているのか?


「フリーズアロー!」


 今度は氷の矢を黒いスライムの欠片に放つ。

 さっき闘ったロックスライムは、炎と氷の2属性の攻撃を連続して受ける事でダメージを受けた。だとすればこれで……と思ったんだが。


「駄目か……」


「くそっ! 時間切れか!!」


 一際大きな声でヘルトアルメーコーアが悪態をつく。

 見れば連中の体が光に包まれ消えて行く。


「ちっ、もっと早く参加者が集まれば倒しきれたのによぉ!!」


 そういう事か。コイツ等はイベント開催時間である24時間を越えたんだ。

 だから帰還しなければいけなくなっちまった。

 俺達よりもレベルが高いのなら、俺達よりも早くこのイベントに参加したのは疑いの余地も無い。

 黒いスライムとの戦いが始まった直後もすぐに攻撃を再開した。

 もしかしたら俺達と合流する前にも黒いスライムと戦闘を行った事があったのかもしれない。

 きっと時間切れになる前に、俺達を利用して黒いスライムに与えるダメージを僅かでも増やしたかったんだろう。

 その証拠に黒いスライムが人工物の破片を吐き出さなくなった瞬間から一気に魔法を大放出し始めた。 


「ちくしょぉぉぉぉぉ!!!!」


 そうして、ヘルトアルメーコーアのメンバー達は、悔恨の叫びと共に戦いの場から消えたのだった。

 レベル上げを早く行いすぎたから俺達と共闘する時間を持てなかったというのは皮肉なもんだ。 

 って、終わったように言ってるけど、こっちは全然終わってないし。

 黒いスライムの破片はそれぞれが独立した小型スライムとして動き始めていた。


「全員黒いスライムの破片から離れて集まれ! 混戦になったら不利だ!」


 俺の声に気付いた連中は慌てて黒いスライムの破片から距離をとり他の参加者達と合流する。

 気付かずに攻撃してる連中はチームを組んでいた仲間が声をかけて呼び戻す。

 あのまま混戦になっていたらまともにダメージを与える事も出来ずに全滅していたかも知れないからだ。


「けどどうするんですか? あの小型スライムには攻撃が通用しませんよ?」


 他の連中の攻撃が効かなかった様子を見た恭一郎が怯えるように策を求めてくる。今考えてるよ。


「まずはダメージを与える事の出来る属性を探すんだ。デカイ姿の時は確かにダメージを与えていたんだ。だったらどれかの属性は効いていた筈だ!」


 多分だが味方に不安を与える訳には行かないので、あえて断言する。


「全員別々の小型スライムに対してなるべく違う属性で攻撃するんだ! Mポーションが足りない奴は余ってるヤツから分けて貰え!」


「「「応っ!」」」


 何とか平静を保ったほかの参加者達が黒いスライムの破片に対して魔法を放つ。

 しかし。


「駄目だ、全然効いていない!!」


 何故か黒いスライムの破片達は全くダメージを受けているそぶりを見せる事は無かった。

 全員で攻撃したのだから、どれかは効いている筈なのに。

 実は巨大な姿の時もダメージを受けてなかったという可能性もあるが、ソレだったら巨大な姿の時の様に、全身を沸騰させて自分の体を撒き散らしたりするのでは無いだろうか?


 何かが足りない。

 俺はその何かがなんなのかを、先程までの巨大スライム状態だった黒いスライムとの戦いで思い出す。

 そして。


「あ、もしかして!」

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