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第三話 「ぼっ!?」

とりあえず三話までです。続きは遅くても来週中には投稿します。

 午後の授業は日本史と数学だ。ただ先生の話を聞いてノートをとる。それだけのことだったので中身が入れ替わっていようともさして問題はなかった。


 ――稲垣直人にとっては。


 西園寺柚姫はどうやらぼっちらしい。この二時間どちらの授業も休み時間も誰からも声をかけられなかった。

 そして西園寺柚姫は天才なのかもなとこの二時間を通して直人は思った。


 直人は友達が多く、授業中や休み時間もしょっちゅう友達と話している。今は稲垣直人の中身は柚姫だが、彼女は稲垣直人以上に稲垣直人を演じていた。


「あんだけの事ができるのになんでぼっちなのかね?」


 直人は自分の友達と違和感なく話している柚姫を見ながらそう呟いた。

 直人自身こんなことになるまで同じクラスではあったが柚姫のことは一度も気に掛けたことがない。ただ自分のクラスにはとても頭が良い美人がいる。その程度にしか認識していなかった。

 あまりにも自分からかけ離れた存在の為、別の世界の住人とでも思っていたのだろう。


 故に西園寺柚姫はぼっちなのだ。誰よりも優れているから誰からも理解されない。誰も彼女には届かないのだ。


「ま、現状は楽でいいけどな」


 直人自身うまく柚姫を演じる自信はなかったのでこの状況はありがたい。


 と、帰りのホームルームが終わったので直人は教室を出る。荷物は置いて。


 教室をでた直人は真っ直ぐ図書館を目指した。


「にしてもスカートはスース―するな」


 歩くたびに揺れるスカートを気にしながら直人は歩く。


「よく女子はこんなの履いて歩いてられるよな。恥ずかしくないのか?」

「女の子はそういうものなのよ」

「うわっ!」


 直人は、後ろから独り言に返事をしてきた柚姫にびっくりして思わず声を上げてしまう。


「急に声かけてくるなよ。ただでさえ今は自分の体じゃないんだからさ」

「ふふ、そんなに驚くことないじゃない。それにこれがわたしじゃなかったら、わたしは周りから変な子って思われるから注意しなさい」

「なんだ周りの目気にしてるのかよ。高三にもなってぼっちのくせに」

「ぼっ!?」


 直人の皮肉に柚姫のこめかみがピクリとなる。


「だ、誰がぼっちよ!」

「いやいやぼっちだろ。お前普段話す奴いんのか?」

「う! そ、それは……」

「ほらな」

「うう……」 


 柚姫は項垂れてしまう。

 直人はそんな柚姫の姿を見て、俺の姿で項垂れるなよ、と思ったのだった。


   ✤


 図書館に着いた二人は早速入れ替わりについて手分けして探すことにした。


 …………が、探すこと二時間。それらしい情報は何も得られなかった。


「もう! なんでないのよ!」

「おい、口調口調」

「あ」


 まだ図書館には人がいるので直人は柚姫の口調を注意する。


「これはネット使った方が早いかもしれないわね」


 と、直人が提案する。


「うーん、やっぱそうなるか。一応帰りに市の図書館にもよってみないか?」

「まあ、別にいいわよ」


 その後はお互い口調に注意しつつこの後の行動について話し合った。 


   ✤


 教室に荷物を取りに戻った後、昇降口を出る頃には時刻は午後六時を回っていた。


「も、もし一生このままだったらどうしよう」


 それは今日初めて出た柚姫の弱音だった。きっと直人に聞かせるつもりはなかっただろうただの独り言の呟き。しかし直人はそれを聞いてしまった。


 だから直人は柚姫を励まそうと隣を歩く柚姫を抜かし正面へ回り込む。


「西園寺!」


 と、顔を向けた先には女の子の姿(・・・・・)をした西園寺柚姫が立っていて、俺の目線はさっきよりも高いところにあったのだ。


読んでいただきありがとうございます。ここからは週一話での投稿になると思いますがよろしくお願いします。


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