第一話 「はあ、おっぱい触りたかったな……」
初めての連載ですが皆様に楽しんで読んでいただけるように頑張ります!
昼休み。男子トイレの個室で用を足していた稲垣直人は、トイレットペーパを取ろうとした時に視界に写った自分の足に違和感を感じた。
白くて、細くて、柔らかそうで、無駄な毛などない綺麗な太ももに思わず動きが止まる。
「え?」
と、自分が発したその声は男の低くて野太い声とは違く、高く透き通るようなものだった。
「は? え……えっ?」
状況が分からず混乱する直人はあたりをきょろきょろと見回すが、トイレの個室の中なので周りにあるのは壁だけだ。
だが、ある可能性の元、視線を下へと向ける。
するとそこにはあるべき息子の姿がなかった。
「え、ええええええ!!」
思わず叫んでしまった直人は慌てて口を押さえる。幸い周りに人の気配はなく、直人の悲鳴は聞かれることがなかった。
「ふう、落ち着け。えっと……どーゆーことだ?」
聞こえてくる声は相変わらず耳慣れない高い声である。
「も、もしかして俺、女になった?」
直人は自分の服装を確認してみると、それは明らかに女子の制服で、左襟についている校章は直人と同じ三学年を表す青色のものだ。
そしてしなやかな黒髪が肩にかかるほど伸びていた。
「俺と同じ学年の女子になってる?」
再び自分の体を見下ろしてみると、直人の目は女の子特有の二つの双丘に吸い寄せられる。
「ごくり……こ、これは確認の為触ってみるしかありませんね……」
恐る恐る直人の手はその二つの双丘に伸びていく。
ブーブー。
「うぇい!?」
指が触れるかと思ったその瞬間、ブレザーのポケットが振動した。
直人は胸に触れかけていた手をポケットに入れ、中を探る。すると振動していたのはスマートフォンだった。
それを取り出し、ディスプレイを確認してみるとそこには見知った番号が表示されていた。
「俺のケータイから?」
そこに写っているのは直人のスマートフォンの電話番号だ。
直人は画面をスワイプし、電話に出る。
「もしもし?」
『もしもし』
電話越しの声は聴き慣れた自分の声だった。
「えっと、君は?」
『は……』
「は?」
『早くそこから出てください! わたしの体は見ないで!』
そこでプツリと電話は切れてしまった。
「とりあえず出ますか」
状況は未だ分からないが、直人は言われた通り極力体を見ないようにしながら、ずっと下げっぱなしだったパンツとスカートを上げた。
「はあ、おっぱい触りたかったな……」
そう言いながら直人は個室を出て、女子トイレを後にした。
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