逃避行日誌 7
全力で戦闘回避余裕です。
他人が居ます。
コ、コミュショウジャナイヨ!?
知られる訳にもいかないから隠してるだけだからねっ。
一人だったらサクッと終わりだけど。
せっかく朋友と呼べる男の知り合いが出来て危険に晒すのは避けるだろ。
まあ、後日サクッとイロンの怪我の代償は払わせるし。
マーキングボタンをポチっとしておけば魔力波形が登録済みってね。
まあ、そうして帰ってきたんだ。
シャロにはめっちゃ心配されたんだけど、心配性だなあ。
俺の気配がドンドン遠くなって焦ったらしい。
受付の報告が来て、了承はしたんだそうだが。
俺に対しては納得しなかったらしい。
おかしい、強さは見せた筈だけどなあ。
竜の討伐の報告の件とか一応聞いておくかな。
まあ無事に村にもどってこれました、これも女神様の加護のお陰です。
そろそろ日誌のタイトルを変更しようかと思ってます。
恋愛日誌……なんだか不幸な未来が見えるな。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「で、なんで俺はこの場所にいるのだろう」
「ふ」
「ふ?」
「夫婦なのじゃから当然の事なのじゃ!」
場所はシャロの自宅。
自宅だけど、ギルドの訓練場の横の扉を開けたらお家。
職場から徒歩1秒の場所だった。
ワーカーホリックか?
「心配させた罰として一緒にいるのじゃ」
「いや、そのオークの始末をだな」
「組合で現在調査結果を踏まえて戦力を集めておるのじゃ」
「でも200越えだぞ? 亜竜も居たってのに大丈夫かよ」
「いざと為れば妾がいって始末するのじゃ」
ギルドの判断としては問題ない。
常識からすれば、一人で始末を付けるというジンが異様なだけ。
しかし、危険性を承知しているジンも譲れない。
「じゃあ全滅はさせないからさ、亜竜とオークの集落になりそうなとこに一撃だけ」
「何故その必要がある、妾と一緒に居るのが嫌なのかの」
「違うよ、オークの脅威は知ってるよな」
「勿論じゃ、餌としての危険性じゃ」
「そうなったらこの村もシャロも危険な事があるだろう」
「村は……確かにそうじゃが」
「俺は其れを防ぎたい、勿論目立ちすぎるのは良くないから亜竜をサクッとやってオークの集落に一撃魔法を放り込んで混乱させるだけさ」
「妾の為、妾の為……」
この時点でジンの述べた事が全て『シャロを危険に晒したくない』に変換されていた。
「よく判ったのじゃ、でも決して無茶はしてはいかんのじゃぞ」
これも『妾の為にと言って無茶なんかして怪我したら承知しない』という心の声が聞こえそうである。
その証拠に顔がにやけてしまって少々しまりが無かった。
数刻後、ジンは早速マップに亜種の亜緑地竜を映し出して先制攻撃を仕掛けるべく森を疾走していた。
基本的に出し惜しみと言うものを考えない男であり、一人の時には途轍もなく容赦が無い。
マグロの解体用サイズ以上の大太刀をアイテムボックスから抜き出すと全力で踏み込み、その勢いのまま背後から亜緑地竜の首を切り裂いた。
「よし!」と一言で終わらされたが決して弱くない。
亜緑地竜は爪も牙も鋭く、鱗は竜程ではないにしろ厚く、罷り間違えてもサクッとこのように殺せる相手ではない。
亜種なので普通の固体よりも速さが自慢だった程。
B級では倒せないような相手だ。
それの亜種が「案外美味しいんだよね」と既に食材扱いである。
肉は鴨肉のようであり、皮はいい値段で取引されているし、魔石の質も悪くないとジンからすればお宝の山でしかなかった。
アイテムボックスに詰め込んで移動をする。
次の目標であるオークの集落に到着したジンは、約束で一撃と言ったのを思い出したので、姿を完全に隠す光学迷彩のような魔法を一度だけ発動させた。
「違う違うそうじゃない、一撃じゃろ」と声が聞こえそうだが、
ジンはスニーキングミッションに入った。
次々と首や脳髄を破壊されて死亡していく哀れなオーク。
索敵即刹と始末をつければ、即座にアイテムボックスに放り込まれていく。
人間の食料には流石に出来ないのだが肥料にしたり魔物退治の撒き餌に使える。何事も有効利用がモットーであり、アイテムボックスは優秀だった。
「任務完了、帰還に移行する」もはやジンは完全にその世界に入っていたが見事に集落を作っているオークを半数まで減らしていた。